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カイロの紫のバラ

『マッチポイント』発表時、ウディ・アレンは自分が作った良い作品として『マッチポイント』、『夫たち、妻たち』、そして本作の三つの映画を挙げている。当時の新作を入れているのはリップサービスとして、残りがミア・ファロー時代のものであるのに当方は唸った。

本作は一言でいえば映画のための映画である。スクリーンの向こう側の登場人物が現実世界のさえないヒロインの前にあらわれるという筋書きは多くの映画ファンが夢見るものであり、同趣向の映画は他にもある。が、そこはウディ・アレン、映画のキャラクターとは別にその俳優本人が登場し、彼もまたヒロインに好意を持つところが変わっている。

ありがちな設定にして必然的な苦い結末と言えるだろうが、この映画で一番美しいのは劇中のスクリーンの中であるところにウディ・アレンならではの映画への愛情が伝わる。しかし、それだからそのままこの映画が優れている、とならないところが惜しいところ。ちょっと薄味に感じた。

ところで彼の映画で感心するのは、一部を除けばどれも90分±10分の尺にきっちり編集されていることで、テレビで放映するのにぴったりだと思うのだが、実際には日本のテレビで彼の作品が放映されることは少ない。残念なことだ。

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