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レッド・ツェッペリン『祭典の日(奇跡のライヴ)』

映画館でやる話は知っていたが、具体的にいつというのを忘れていて、木曜の朝に唐川真さんのブログでそれを知り、成り行きで仕事をぶっちぎって劇場に出向いた。もっとも、その後上映は一週間延長されたのだが、とにかく映画館の大画面大音量でライブを体感したかった。

上映10分前に余裕をもって着いたつもりが、既にほぼ満席と言われ呆然となった。おかげで前から三列目の一番端で思い切り首を傾けながらの鑑賞となったが、福岡にツェッペリンのファンがそんなにいたとは! もっとも30代以下はワタシ以外に何人いたんだろう……。

本作は2007年12月にロンドンのO2アリーナで行われたアーメット・アーティガン(アトランティック・レコード創始者)追悼ライヴを収録したもので、このときの出来が良かったのは知っていたので不安はなかったが、本当に素晴らしいライブだった。

ワタシにとってレッド・ツェッペリンは別格的な存在で、言うまでもなく70年代ロックの代表的グループだが、特異なバンドグルーヴとメンバー間のケミストリーに支えられており、だからこそ80年代以降ジミー・ペイジはそれを再現できず苦心してきた。ワタシはこれまで何かにつけジミー・ペイジのことを「残骸」などと悪し様に書いてきたが、それは要求水準の高さゆえで、最後の最後に本領を発揮してレッド・ツェッペリンを見せてくれたことに心から感謝したい。

1985年のライブエイド、1988年のアトランティックレコード40周年という過去の再結成は悲惨としかいいようのない出来だったが、メンバーも一生懸命やってるしといった言い訳抜きで「レッド・ツェッペリン」の水準を見事に満たしたライブが観れて満足である。

ジミーやロバート・プラントがアップになると、人間にとっての加齢の恐怖に思いを馳せてしまうが、演奏的には見事な集中力で、ジョン・ボーナムの息子ジェイソンを加えた4人による演奏を堪能できた。

余計な人間は一切介在せず、全体の手綱を握るのはもちろんジミーだが、想像するにジェイソンの貢献が大きかったのではないか。このライブのために入念にリハをやったらしいが、聞くところによるとそこでジェイソンは「それ違うよ」とジミーにビシバシ駄目出ししたらしい。ジミーのギターとボンゾの太鼓のどつきあいにより生まれるリフというツェッペリンの音楽が未だに生き残る最大の美点を、確かに息子世代なのに一人ハゲなジェイソンのパワフルなドラムに感じることができた。またジョン・ポール・ジョーンズの鍵盤の力を再確認できたのも嬉しかった。

「幻惑されて」で弓弾きを披露したのは驚いたが、基本的に代表曲は大体演奏しており、そういう客の期待から逃げず正面から引き受けている。個人的にはこの四人による「アキレス最後の戦い」を見たかったが、あの曲はエネルギーを保つのが他の曲の数倍難しいし、やったら多分途中でジミーは灰になってしまっただろう。その代わり、同じ『Presense』からライブでやるのが珍しい(とパーシーが言っていた)"For Your Life" をやっていて、これも「メンバー全員が違う方向に向かって演奏した結果が一つのハンマーのような音の塊になって叩きつけられる」という後期ツェッペリンの特徴がよく出た曲をやってたのでよかったと思う。

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