先月、「積みNetflix披露の会というアイデアはどうだろう?」というエントリを書いたのだが、そこで挙げた作品をまだほとんど消化しきれていないのに、新たにドラマやらドキュメンタリーが話題になって、そちらに目移りする有様である。
ワタシが Netflix と契約したのは2017年10月で、まだ2年足らずなのだが、備忘録の意味も兼ね、ここらでひとつこれまで観てきたドラマをまとめておこうと思う。
飽くまで Netflix で観たというだけで、Netflix オリジナルドラマ以外も含まれているのにご注意を。
ハウス・オブ・カード 野望の階段(公式サイト、Netflix、Wikipedia)
実を言うと、これは Netflix 契約前に DVD レンタルで観ていたので本当は入れちゃいけないのだが、Netflix ドラマの象徴的な存在だし、Netflix への信頼にこの作品の成功が寄与したのは間違いないわけで。
ただ、その契約後に始まったシーズン5は評判が悪かったので、ワタシはシーズン4までしか観ていない。ご存知の通り、その後ケヴィン・スペイシーがセクハラ問題で降板し、シーズン6はミニシリーズみたいな形で終了してしまったので、その判断で結果オーライだった。
ハウス・オブ・カード 野望の階段 SEASON 1 Blu-ray Complete Package (デヴィッド・フィンチャー完全監修パッケージ仕様)
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2014/06/04
- メディア: Blu-ray
マスター・オブ・ゼロ(Netflix、Wikipedia)
Netflix に入ってはじめて観始めたドラマは、これと『ストレンジャー・シングス』だった。
アジズ・アンサリの才気が発揮された素晴らしいドラマで、シーズン2がこの後どう展開できるんだという感じで終わったのに、明らかに行き過ぎた不当なセクハラ告発があり(参考1、参考2)、キャリアにダメージを受けたのは腹立たしい話である。
最新作『アジズ・アンサリの"今"をブッタ斬り!』を観ても彼が受けたダメージが分かるが、『マスター・オブ・ゼロ』のシーズン3始動を期待したい。
ストレンジャー・シングス 未知の世界(Netflix、Wikipedia)
少し前にシーズン3を完走したのだが、良かったねぇ! はっきりいって、シーズン3がこのドラマのベストになる予感すらある。最終話まさかこのドラマでボロ泣きするとは思わなかった(が、冷静に考えると、あの歌の場面って、海外で爆笑されたという『海猿』映画版の携帯電話の場面と大差ない気もするが)。
シーズン3は本当にキラキラした魅力に満ちている。何しろ今シーズンは夏休みの話だから、少年たちグループがオタクというスクールカースト下位という描写すらほぼなく、その輝きをひたすら堪能できる。
特に素晴らしいのはスティーブで、個人的にはシーズン3はスティーブのシーズンだと断言したくなるくらい。スティーブも当初からのキャラクターだが、スクールカースト上位のいけすかないヤツだったのが、こんな感じにイイ役になった役ってアメリカのドラマで他にあるだろうか。
というわけでワタシはとても楽しんだわけだが、今シーズン特にその度合いが増した本作における1980年代のキラキラさ加減、礼賛ムードにはちょっと疑問も感じる。
本作に登場する少年グループは1983年に12歳という設定だったはずで、1971年生まれということになろうか。1973年生まれのワタシとは少しずれるが、基本的には同世代といって問題はなかろう。
当然ながらワタシにとっても1980年代は、その多感な少年時代を過ごした時期だったわけで、ワタシなりに思い入れはある。
しかし、1980年代はスカだった史観という呪詛にワタシがとらわれているところがある。ワタシの場合、洋楽情報のソースだった1990年代のロキノンの影響も大きいだろう。
このドラマのクリエイターであるダファー兄弟って、少年グループと同じく1970年代はじめの生まれ、つまり、ワタシとだいたい同年代かちょっと上くらいかとずっと思い込んでいたのだが、1984年生まれでワタシより10以上年少というのを知ったときにはちょっと驚いたものだ。
80年代リバイバル、という言葉もそれこそ90年代からあったはずで、「ストレンジャー・シングス」がその何周目かもはや分からないのだが、そのあたりを網羅的に論じる知識はワタシにはないので、この話はここで終わる。
13の理由(Netflix、Wikipedia)
このドラマは間違いなく衝撃作で、そうした意味でシーズン1で終わってくれたほうがよかったかもしれない。
批評家がけなすほどシーズン2は悪くはなかったが、その最終回でこれはもうここで止めてよいかなと思った。
よって、もうすぐシーズン3が配信開始だが、多分観ないと思う。シーズン1からハンナの自殺シーンが削除されるというニュースもその気持ちを強めた。
ベター・コール・ソウル(Netflix、Wikipedia)
『ブレイキング・バッド』はワタシにとっても特別なドラマだったので、そのスピンオフってどうよという懐疑的な気持ちがあったのだが、これはこれで『ブレイキング・バッド』とはまた違った意味で自分の中で大きな作品になっている。
というか、あの史上最高のドラマと言われた『ブレイキング・バッド』よりもこちらのほうが好きかもしれないくらい。
あとはどれくらいしっかりした完結を見せてくれるかでしょうね。
ベター・コール・ソウル シーズン1 COMPLETE BOX(初回限定版) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2015/12/02
- メディア: Blu-ray
アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件(Netflix、Wikipedia)
ワタシが観たのはシーズン1のO・J・シンプソン事件のみである。正直、『O.J.: Made in America』が Netflix になかったので、その代替として観た。こちらもさすがに見ごたえがあった。
マーシャ・クラーク演じるサラ・ポールソン、あとスターリング・K・ブラウンが『THIS IS US』とも共通する役をやっててよかったですね。
マインド・ハンター(Netflix、Wikipedia)
今まさにシーズン2を観ているところである。
当代最高の映画監督の一人であるデヴィッド・フィンチャーが主力となって作る作品だから、これは観ないわけにはいかない。
登場人物たちの演技、フィンチャーらしい暗い色調で統一された強力なカラーコーディネート、70年代後半の再現、いずれも見事で満足なのだが、個人的にはシーズン1からもっとエグい殺人描写がみられると思っていたので、その点は少し肩透かしだったかもしれない。
The OA(Netflix、Wikipedia)
ブリット・マーリングというと『アナザー プラネット』が大好きなので、彼女が手がけるドラマならと軽い気持ちで観始めたのだが……文句なしにヘンテコなドラマだった。
本当になんなんだこれはな回が続いた後で、文字通り呆然となるシーズン1の終わり方はもはや伝説だが、シーズン2は自分が観ているのはいったいなんなんだ感がさらに増していて、とんでもなかった。シーズン2も例によって終わり方に呆然となった。
先日、シーズン2での打ち切りが発表されてしまったが、ワタシのようなファンでもまぁ仕方ないかなと思ってしまうところがある。ブリット・マーリング(とザル・バトマングリのチーム)は、また違った形で『The OA』の続きを見せてくれるんじゃないかな。
オザークへようこそ(Netflix、Wikipedia)
ジェイソン・ベイトマンが好きなのと評判が良かったので観始めたのだが、あまりにダークでストレスフルな展開にシーズン1のエピソード1だけで脱落してしまった。
いや、間違いなく面白いんだと思う。ダークでストレスフルなドラマも好きである。それこそ『ブレイキング・バッド』がそうだったように。
でも、ああいうのはワタシはもういいのだ。それなら『ブレイキング・バッド』をもう一回観るから。
アトランタ: Atlanta(Netflix、Wikipedia)
今をときめくドナルド・グローヴァーが手がけるドラマということでシーズン1を観た。
ドナルド・グローヴァーがラッパーではなく、そのうだつのあがらないマネージャーを演じているのが面白い。
正直ワタシが好きなタイプのドラマではないのだが、だからこそリアルさ独特のシュールさのバランスが新鮮だった。
ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス(Netflix、Wikipedia)
近年もっとも衝撃を受けたドラマかもしれない。
とにかく怖いし、映像表現が秀逸である。長回しに見えるカメラワークが効果的に多用されていて、屋敷のある部屋の中央でぐるりとカメラが回転する中で、現在と過去、生者と幽霊が同じ画面に普通に同居する離れ業を実現している。というか、それが普通に感じるまで視聴者は教育されてしまう。
あるエピソードのショック描写の意味が後のエピソードで分かるという手法をこのドラマも使っているが、それを一つのエピソードに凝縮した、ある登場人物の人生につきまとう首折れ女の正体が最後に分かるエピソード5は白眉。
このドラマのクリエイターであり、すべてのエピソードを監督するマイク・フラナガンは、スティーヴン・キング原作で『シャイニング』の続編である『ドクター・スリープ』の監督をやってるんですね。彼が監督した映画も Netflix に揃っているのを知ったので、『ドクター・スリープ』公開前にそちらも観ておこう。
After Life/アフター・ライフ(Netflix、Wikipedia)
リッキー・ジャーヴェイスといえば何と言っても『The Office』だし、『エキストラ Extras』も好きだが、彼が手がけた映画はまったく評価していないし、Netflix にある『リッキー・ジャーヴェイスの人間嫌い』も期待を超えるものではなく、正直彼に対する期待値は下がっていた。
調べてはいないが、このドラマ、あまり評判はよくないんじゃないだろうか。今どきなんで無料の(しかも経営ガバガバっぽい)地方新聞が続いているんだとか、金銭的なシビアさがない主人公の暮らしぶりとか本国の人のほうが突っ込みどころはあるだろう。
それでもワタシは泣いた。最後の2話はボロボロ泣きながら観た。ジャーヴェイスには、『The Office』のクリスマススペシャルでも泣かされた。でも、これはそれとはまったく違う。
ジャーヴェイスもようやくモキュメンタリー形式に頼らなくても優れたドラマが作れるところまで来た(ワタシは『Derek』は未見だけど)。あとこのドラマは女性の主要キャストがそれぞれいいですね。
ラブ、デス&ロボット(Netflix、Wikipedia)
Netlix で観たアニメは今のところこれだけかな。1話完結で、しかもどれも20分未満なので、サクサクすっきり観ることができる。
やはり性描写、暴力描写を遠慮する必要がないという環境はありがたいですね。18エピソードあって、作り手によって画のタッチもまったく異なるのだけど、しかし邪悪なクリーチャーの侵略が描かれるエピソードが複数あったりして、そういうところに限界を感じたりした。
今思い出せるのでは、「目撃者」、「グッド・ハンティング」、「シェイプ・シフター」、「氷河時代」あたりが面白かったな。
シーズン2も観るだろう。
ピーキー・ブラインダーズ(Netflix、Wikipedia)
デヴィッド・ボウイが大ファンだったドラマということでまだシーズン1を観ている途中なのだが、正直辛い……このドラマの舞台となる第一次世界大戦後のイギリスについて基礎知識が足らなさすぎるからかも。
とりあえずシーズン1は完走するだろうけど、その先はその時点での積み具合によるだろう。
全裸監督(Netflix、Wikipedia)
今話題のドラマだが、まだシーズン1を完走していない。
よくできているし、村西とおる役の山田孝之、黒木香役の森田望智とも外見は違うのに見事に憑依した演技をしているが、本作はNetflix オリジナルのドラマの中で傑出したものではない。逆に本作がこれだけ話題になり、その制作体制が「黒船」扱いされることに、いかに今の日本におけるテレビドラマの制作現場がいろんな意味で貧しくなってしまったが逆説的に分かるように思う。
とにかく話題になっているので本作についての記事もウェブで多く読めるが、もっとも納得感があったのは松谷創一郎さんの文章だろうか。
シーズン1配信から間もなくシーズン2製作が発表された。90年代が舞台になるならば、必然的にその展開はシーズン1よりもよりダークに、そしてバイオレントになるのは避けられないはずで、正直それが怖くもあるが、ドラマとして成功してほしい。