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シェイプ・オブ・ウォーター

以下、登場人物やストーリーに触れているので、ネタバレを気にする人は注意ください。

ギレルモ・デル・トロの新作、しかも『ハッピー・ゴー・ラッキー』で知って以来好きなサリー・ホーキンスがヒロインを演じ、他にも『扉をたたく人』などで知られる、地味に出演作の格調を高める名優リチャード・ジェンキンスも出ていると知って、かなり期待値が高まっていた

で、その期待を裏切らない愛おしい映画だった。本当に半漁人とヒロインの剛速球なラブストーリーなのに少したじろいだけど。ダークファンタジーとしてあるべき理不尽さという意味で、映画としては『パンズ・ラビリンス』のほうが上なのかもしれない。しかし、好きなのは、圧倒的に本作のほうだ。

この映画は、観客がヒロインの心情に寄り添えるかが鍵になる。ワタシが思い出したのは、フェリーニの『道』。あの映画のヒロインは美人ではないし少し頭も弱いのだけど、冒頭でジュリエッタ・マシーナが帽子を手にし、それを頭にひょいとのっけてポーズをとるだけで、もうどうにもチャーミングなのである。本作も、主人公がタップのステップをちょっと踏む冒頭のところでもう彼女に魅せられてしまう。サリー・ホーキンスは素晴らしい。

声が出せないヒロインに、ゲイや黒人の友人たち、そしてロシア人の科学者といった、それぞれ(主に性的な)抑圧を抱えているマイノリティたちの切実さ、一方で悪役となる、常に成功者としての「男」に囚われ、自己啓発書を読みながら、好物の飴を手放せない警備責任者のマッチョいずむの描き方の対比がギレルモ・デル・トロらしいといえるだろう。ストーリー的にはかなり無茶なのだけど、本作の愛おしさの前では、それも許せてしまう。

サリー・ホーキンスリチャード・ジェンキンスを必死に押し留める場面でワタシの涙腺は決壊したが、ギレルモ・デル・トロは本当に『美女と野獣』が嫌いなんだな、と思わせるミュージカル場面で涙が止まった。しかし、これは逆に言えば、このような状況でこの人が歌いださざるをえないからこそのミュージカルなんだよ! という監督の強い想いが伝わる。

さて、今週アカデミー賞が発表になる。個人的には、作品賞は『スリー・ビルボード』にとってほしい。でも、監督賞は是非ともギレルモ・デル・トロの名前が呼ばれてほしい。

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