当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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ウィキペディアに「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」がまとめられている

boingboing.net

Wikipedia 英語版の「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」をまとめたページを取り上げている。しかし、よくこんな項目作ったものだ。日本語版に対応するページは、さすがにまだない。

そういえば昨日、「ロシア実業家、遺体で発見 今年9人目の不審死や自殺」という記事を見たばかりだが、このウィキペディアのページには本文執筆時点で13人の名前が挙がっている……って、件の記事が伝えるイバン・ペチョーリン氏の後にも Vladimir Nikolayevich Sungorkin 氏が亡くなっているのな!

記事にもあるように、ロシア国営エネルギー大手のガスプロムや、ロシアの民間石油・ガス最大手のルクオイル関係者が多いのは、果たして何を意味するのだろうか。

それにしても不審な死を遂げすぎだろう……公式発表の死因が本当のケースもあるのだろうが、もしそうでない場合、この人の死因は実はこうだった、といった真相は何年後くらいに明らかになるものなんでしょうな。

アンソニー・ボーディンが説く初めて行く都市でレストランを探す方法「ネットでオタクを怒らせる」

www.esquire.com

この2013年公開の記事は Boing Boing 経由で知ったが、この記事で世界的なセレブ料理人、フードジャーナリストだったアンソニー・ボーディンが説く、初めて行く都市で食べる店を探す方法が面白い。

アンソニー・ボーディン自身は、初めてある都市に行く場合、早朝にその街の中央市場に出向き、そこの人が買い、食べるものを観察し、その街では何がおいしいか見極めるようにしているそうだが、続けて違うやり方も紹介している。

初めて行く都市で行く店を見極めるもう一つのやり方に、ネットでオタクを怒らせるというのがある。掲示板のあるグルメの集まるウェブサイトにアクセスする。例えば、クアラルンプールに行くとしよう――マレーシアの掲示板に、最近マレーシアに行って世界最高のルンダンを食べたと言って、ある店の名前を出せば、うっとおしいグルメたちが大挙して怒りのリプライをよこし、その店はクソで、行くべきお店を教えてくれるというわけだ。

つまり、「クアラルンプールでおいしいルンダンを食べたいんですが、どこがおすすめですか?」みたいな普通の質問は興味をひかないが、間違った意見を使ってより良いお店の情報が釣れるということですね。

Boing Boing のマーク・フラウエンフェルダーは、この手法が「インターネットで正しい答えを得る最良の方法は、質問をすることではない。そうでなく間違った答えを投稿することだ」という「カニンガムの法則」に近いと書いている。

ただし、Wiki の父であるウォード・カニンガム自身は、「私は間違った答えを投稿して答えを得ることなんて勧めてないからな!」と「カニンガムの法則」を否定しているのでご注意あれ。

アンソニー・ボーディンが悲劇的な死を遂げたのが2018年で、昨年彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画 Roadrunner: A Film About Anthony Bourdain が作られ、コロナ禍で大ヒットとなったという話は聞いたが、日本公開はかなわなかったのか。

ウィキペディアの「長期にわたり荒らし行為を行っている利用者リスト」が面白い

boingboing.net

この記事を読んで、Wikipedia長期にわたり荒らし行為を行っている利用者リストを管理しているのを初めて知った。

これを見ると、音楽に関するページに架空の情報を執拗に追加しようとする人や、軍用機に関して出典なしに好き勝手書こうとするなどいろんな人がいるんだな、そしてそれをよくここまでリスト化したものだと呆れてしまう。Boing Boing の記事タイトルにある「哀れなスーパーヴィランの名簿」というたとえに苦笑い。

……と思ったら、このページ日本語版もあるな。はてなブックマークを見ると、ワタシが知らなかっただけで、10年以上前から一部では有名なページらしい。

日本語版は逆時系列かつアルファベット順のため、(本文執筆時点で)リストの一番上に名前が載っている人が「自称「禁煙ファシズムと戦う会代表」の小谷野敦」で、思わず「うっ」と声をあげてしまったよ……まさかこんなところで著名な方の名前にでくわすとは。

ジミー・ウェールズが立ち上げた広告モデルに依存しないSNSが苦境にあるようだ

tech.slashdot.org

Wikipedia の共同創始者であるジミー・ウェールズが立ち上げた WT.Social(WikiTribune Social)は広告モデルに依存しない SNS を掲げているが、資金が大幅に不足しているとユーザに寄付を求めている。

ふーん、そんなのやってたんだ……と念のため、自分のブログを検索したら、2019年の立ち上げ時にワタシも取り上げてましたね。

yamdas.hatenablog.com

まだ3年も経たないのに忘れるとはひどい話だが、その後、ほとんどネットで話題にもなってないみたいだし、それもむべなるかなというのが正直なところ。

立ち上げ当初は、「当然、私が望んでいるのは5万人でも50万人でもなく、5000万人、5億人だ」とジミー・ウェールズも強気にぶちあげていたが、現在のユーザ数は50万人足らずで、全然足りてない。

www.wired.co.uk

SNS をスイッチするのは国境をこえるのよりも難しい、という問題がここでも大きな壁になっているわけだ。

だからこそ、上場以降も大して利益をあげてない Twitterイーロン・マスクが買収すると言っただけで大騒ぎになる。現実は、さんざんかき回した挙句、イーロン・マスクTwitter に買収合意打ち切りを通告したが、マスクのテスラ株売却の隠れ蓑にされただけという話がおそらくは当たっているのではないか。Twitterリストラを断行したりスパムアカウント削除に努めたのに残念でした。

それはともかく WT.Social は飽くまでジミー・ウェールズのプロジェクトであり、ウィキメディア財団が手がけるプロジェクトには含まれないが、それらのプロジェクトを支える広告フリーで寄付に頼るモデルは、SNS に適用するにはまだ難しすぎるのだろうな。

ウィキメディア財団が手がける13のプロジェクトをすべて言えますか?

wikimediafoundation.org

この記事自体は、ウィキペディアの技術をもっと公平なものにしようという取り組みの話で、この関係ではワタシもウィキペディアのバイアスの問題についての文章を訳したり、黒人や多様な歴史に光を当てるプロジェクトについて既に取り上げている。

が、ここでワタシが注目したのは、本筋から離れたところ。

In my early years at the Foundation as a Technical Program Manager, I became familiar with the breadth of 13 Wikimedia projects spanning 300 languages, edited by hundreds of thousands of volunteers from all over the world.

The journey to make Wikipedia’s technology more equitable – Wikimedia Foundation

ここでリンクされている「13のウィキメディア(財団)のプロジェクト」を、リンク先に飛ぶ前に挙げてみようと思ったわけである。Wikipedia をはじめ、Wikimedia CommonsWikibooksWikinewsWikiquote、あと MediaWiki の開発もそうだよな……と挙げていったが、13個全部は言えなかった。

具体的には Wikispecies の存在自体知らなかった。あと、Wikivoyage のことは開始当時ブログで取り上げていたのに忘れてしまっていた、など。

皆さんはどうだろう?

Wiki Workshopというイベントが開催されているのを知る

wikiworkshop.org

調べものをしていて、Wiki Workshop 2022 なるイベントの開催が、先月末告知されているのを知った。実際のオンライン開催は今年12月の予定。

Wiki を名前に冠した国際的なカンファレンスの類というと、昔は WikiSym があったが、2014年から OpenSym という名前に変わり、昨年の OpenSym 2021 まで続いている模様。

もうひとつウィキメディア財団主催の Wikimania があり、Wikimania 2022 は今年8月に開催予定である。

この二つは知っていたが、2016年以来、Wiki Workshop も毎年開催されていたんですね。主な対象は Wikimania と同じく Wikipedia みたいだけど、今どき Wiki を名前に冠した研究発表会、カンファレンスというだけで何か嬉しくなる。

Wiki Workshop 2022 では、ローレンス・レッシグコリイ・ドクトロウといった、このブログでもおなじみな人が講演を行う予定である。

そういえばローレンス・レッシグ先生の『They Don't Represent Us: Reclaiming Our Democracy』は、そろそろ邦訳が出てもいい頃じゃないかな?

黒人や多様な歴史に光を当てるウィキメディア財団のコラボプロジェクトWiki Unseen

wikimediafoundation.org

ウィキメディア財団Wiki Unseen というプロジェクトを立ち上げている。

これは2月が黒人歴史月間なのを受けたもので、Wikipedia をはじめとする Wikimedia 財団が手がけるプロジェクトにおける BIPOC(黒人、先住民、有色人種)の(ヴィジュアル)コンテンツを拡大し、知識の公平性のギャップを埋めることを目的としている。

手始めに AfroCrowd.org とのコラボレーションで、アフリカ系の著名アーティストに依頼して、Wikimedia Commons にコンテンツがない偉人の肖像画を制作するという。

要は、黒人など BIPOC な人達の(ヴィジュアル)コンテンツが、白人と比べて少なく Unseen になっているという反省を踏まえ、「世界中の人たちがあらゆる人類の知識の総和を共有できるようにする」とウィキペディアのヴィジョンの実現を目指して、そちらの拡充を意識的に目指すものですね。

www.yamdas.org

これは昨年ワタシが訳した文章だが、これも知識の公平性の面で「ウィキペディアにはバイアスの問題がある」という問題意識に基づくという意味で、今回の取り組みにつながるものである。

この文章でも、「ウィキペディアは、圧倒的に西洋のシスジェンダーの男性の主張、意見、そしてバイアスを具現化した」過去があり、「出版された資料から得られる知識は偏っている。資料に出てくる人や知識も、主に白人の男性である」と主張されている。

ただ訳しておいてなんだが、Jackie Koerner の意見には正直賛同できないところがあり、上記のバイアスは確かにあるだろうが、百科事典が百科事典である根本を支える「信頼できる情報源の方針」を「出版された資料から得られる知識は偏っている。資料に出てくる人や知識も、主に白人の男性である」と斥けかねないところに危うさを感じた。

そうした意味で、今回の Wiki Unseen の取り組みは、明らかに現状足らないものを補うものであり、良い取り組みだと思う。

ウィキペディアの項目を時系列で並べるゲームが面白い(が難しい)

wikitrivia.tomjwatson.com

kottke.org で知った Wikitrivia というサイトだが、要は Wikipedia の項目を古い順に並べるゲームですね(人や団体の場合、それが生まれた年)。

英語版の項目名とその概要しか表示されないので、日本人には何気にハードルが高いのが難点か。世界史の知識があったほうがよいに違いなく、それがはっきり足りないワタシの場合、何も参照しないと10くらいがせいぜいである。

既に並べたカードをクリックすると正解の年と Wikipedia の項目へのリンクが表示される仕掛け。

Wordle に飽きた人はこちらを試してみてはいかがでしょう(笑)。

yamdas.hatenablog.com

Wikipedia を使ったゲームはウィキレーシングなど過去にもあったが、Wikipedia を素材に面白いゲームを作ろうという試みはもっとあってよい。

もっとも Wikipedia の編集に関わること自体をロールプレイングゲームとみる人もいる(笑)。

「ウィキ」がペディアに乗っ取られたように「クリプト」はデジタル資産に乗っ取られるのか

www.wikiart.org

Scripting News 経由で WikiArt.org を今更知る。

はてなブックマークを見ると、2012年には既に話題になっているので、今まで知らなかったのが恥ずかしいレベルかもしれない。

たまたまエドワード・ホッパーの画が引用されていたので、ワタシも彼の作品でもっとも有名な Nighthawks のページなどを見たが、まだパブリックドメイン入りしていない彼の作品も Fair Use の掲示の元に公開されている。

「Visual Art Encyclopedia」を謳っており、要はアート分野におけるウィキペディアを目指したもので、確かに絵画ごとにそのスタイル、現物が収蔵されている場所など各種情報などの情報がしっかりしている。

しかし……このサイトは編集可能な Wiki ではないのだから、サイト名称は WikiArt ではなく Artpedia でよかったのではないだろうか?

yamdas.hatenablog.com

Wikipediawikiって略すな」の戦いは既に敗北が決定しており、例えば Twitter で「ウィキ(Wiki)」という単語を見かけたら、それはたいていウィキペディアを指している。

この問題の副次的な影響として、WikiArt のように百科事典的サイトの名称に Wiki が冠せられる場合があることかもしれない。この話は、10年以上前にも書いているが。

text.baldanders.info

少し前から気になっていたが、「Crypto」という言葉が暗号通貨などデジタル資産関係のサービス方面の名称に多用されている現状に暗号技術関係者が不満を表明しているとのこと。

ワタシが「ウィキ&ペディア」という文章を書いたのも今や昔、「クリプト&カレンシー」というか、デジタル資産方面の用語に「クリプト」が多用される現状は、百科事典的サイトの名称に Wiki が冠せられる現象に似たものなのかもしれない。

ウィキメディア財団が企業向けにウィキペディアのコンテンツの再利用のためのAPIを手がけるWikimedia Enterpriseを立ちあげ

wikimediafoundation.org

なぜかまったく話題になっていないので取り上げておきたい。ウィキメディア財団が企業や団体向けにウィキペディアウィキメディアのプロジェクトのコンテンツを容易に再利用できるようにする製品を手がける Wikimedia Enterprise を立ち上げている。

enterprise.wikimedia.com

さて、その「製品」とは何かということなのだけど、それこのサイトにもあるように要は Modern REST APIs で、これは急に出てきた話ではなく、今年の3月に報じられている。

gigazine.net

それからおよそ半年で本格始動とのことだろう。企業によるウィキペディアなどウィキメディア財団が管理するコンテンツの有料利用が進み、この事業が軌道に乗れば、ウィキペディア利用者への寄付依頼のスペースが少しは小さくなるかもしれないので、是非これは成功してほしいところだ。

データプラットフォームとしてのウィキペディアというとワタシも何か書いていたような……と記憶を辿ったら10年前(!)に「Wikipediaがプラットフォームになるのを妨げているもの」という文章を書いていた。

これぞWikiに適した映画館情報集積サイト「消えた映画館の記憶」

hekikaicinema.memo.wiki

確か Twitter のタイムラインに流れてきて知ったサイトだと思うが、「閉館した映画館を中心とする、日本の映画館の総合データベース」というのは、Wiki に適したコンテンツだと思う。

どうしてもワタシなど、自分が生まれ育った街ということで長崎市の映画館に目が行く。

長崎駅前映劇」について以下の記述がある。

所在地 : 長崎県長崎市大黒町9-26(1985年)、長崎県長崎市大黒町14-5(1988年)※1988年の所在地は正しくない可能性あり

長崎市の映画館 - 消えた映画館の記憶

ここはまだ小学生低学年の頃、『E.T.』を2回観に行った思い出の映画館だったりする。地元民としての情報を書いておくと、管理人の方の推測通り、長崎駅前映劇の住所は長崎県長崎市大黒町9-26が正しく、長崎県長崎市大黒町14-5は間違いだと思う(し、後年移転した記憶はないのだが、これについては単にワタシが知らなかっただけの可能性もある)。

こうしてみると、長崎市中心地の映画館は21世紀に入るとともにバタバタ閉館しているが、これはやはりシネコンへの集約が原因で、今ではユナイテッド・シネマ長崎と TOHO シネマズ長崎の2つのシネコン以外では、長崎セントラル劇場というアートシアター系の古い映画館が唯一だったりする。ここは何か理由をつけて定価の1800円を劇場側が値切ろうとする謎な経営方針を持つ映画館なのだが、どうかコロナ禍を生きのびてくれと願わずにはいられない。

個人的には「新世界」の名前が懐かしい。ここで『帝国の逆襲』を観たのがもっとも古い映画館の記憶だが、これは捏造された記憶の可能性もある。「吉田修一さんの「国宝」長崎の登場場所めぐりしてきた」というページに少し記述があるが、「新世界」は吉田修一『国宝』の中でも登場する。

あと若者期から中年期にいたる20年を過ごした福岡市の映画館も懐かしい。ワタシの生活圏だった1990年代後半以降、シネ・リーブル博多、シネサロンパヴェリア、シネテリエ天神といったアートシアター系の映画館が消えたっけ。

そうそう、シネテリエ天神が成人向け映画専門映画館になるというニュースに落胆して愚痴ったところ、柳下毅一郎さんから「それはいいニュース!」と返されたのを懐かしく思い出す。

シネテリエ天神の Wikipedia ページを見ると、残念ながら成人向け映画専門としても続かなかったようだ。

ウィキペディアでもっとも編集された記事についてのニュースレターWeeklypedia

boingboing.net

このエントリで Weeklypedia というニュースレターが紹介されている。これは毎週、Wikipedia でもっとも編集された項目トップ20、もっとも活発に編集されている新規作成項目トップ10、もっとも活発に議論されている項目を集めたニュースレターで、こういう定点観測が Zeitgeist時代精神)を理解するのに役立つのではないでしょうか。

ニュースレターの隆盛については昨年も書いているが、その後もいろんな人の参入を見た。が、これは確か2014年から続いており、老舗と言える。こういうテーマこそ定期刊行(週刊)に合ったものだと思う。

あとこの Weeklypedia ニュースレターを作成するコードが、当たり前のように GitHub で公開されているのも今どきですね。

これを出しているのは Hatnote で……って、ワタシここを以前取り上げてるじゃん!

yamdas.hatenablog.com

ウィキペディアの編集をリアルタイムに「聞ける」」って何? と思われるかもしれないが、これは Hatnote のサイトに行けば分かります。なんというか「球体が奏でる音楽」という言葉を思い出す、少し神妙な気持ちにすらなりますな。

「新たなウィキリークス」としてのデータリークサイトDDoSecrets

newrepublic.com

DDoSecrets の略称で知られる Distributed Denial of Secrets 自体について取り上げる記事は初めて読んだかも。

記事タイトルが「新たなウィキリークス」で、サブタイトルが「透明性の共同体 DDoSecrets はいかにしてジュリアン・アサンジを凌駕したか」なのに明らかだが、DDoSecrets は WikiLeaks の後継と見られているわけですね。

実際 DDoSecrets は、Wikileaksジュリアン・アサンジのエゴ(と彼のトラブル)のために残念な感じになり、データ公開を実質止めた2018年12月に、それと入れ替わるように立ち上がり、以降透明性の追求を担ってきた。

japan.zdnet.com

ワタシが DDoSecrets の名前を意識したのは、アメリカの警察や法執行機関の270GBもの機密文書が大量に漏洩した BlueLeaks 事件が最初だったと思う。

gigazine.net

今年に入り、1月にアメリ連邦議会議事堂の占拠事件の後、極右に人気の Gab の漏洩データを公開して注目を集めた。

wired.jp

そして今年夏のアメリカのインフラ企業に大きな被害をもたらしたランサムウェア攻撃に関しても、「公衆の精査を受けるに値すると考えられるデータを暴露するというミッションの一環として」「潜在的にセンシティヴな可能性のあるソフトウェアデータとコードについては、慎重に編集を加え」た上で流出データを公開している。

BLM 運動や議会議事堂襲撃事件へのシンクロなど、リークするデータもタイムリーだが、Wikileaks がダメになっても、その意志を継ぐ動きが出てくるところが面白い。

If the work of DDoSecrets has the whiff of the illicit, it’s because official secrecy, mass surveillance, threats of prosecution, and big tech’s cooperation with censorious authorities have impeded the ability of journalists and publishers of leaked data alike to operate.

DDoSecrets Is the New WikiLeaks | The New Republic

DDoSecrets の活動に不正の匂いがするなら、それは公務上の機密、大量監視、訴追の脅威、そして検閲当局に協力するビッグテックが、ジャーナリストや漏洩データの発信者の力を妨げているからだ、ということか。

この記事の最後にあるように、「世界はもはや、ハクティビストやリークティビスト(leaktivists)を排除できない。人々がそれを望む限りは」ということであり、DDoSecrets もいずれは Wikileaks みたいに失速する可能性も高いのだけど、それに代わる存在はこれからも生まれるということだろう。

ネタ元は Slashdot

元祖ウィキペディア構想? H.G.ウェルズの埋もれた作品『World Brain(世界の頭脳)』の新装版が出る

調べものをしていて、『タイム・マシン』、『宇宙戦争』、『透明人間』、『モロー博士の島』など近年まで何度も映画化されている SF の古典の作者で、「SFの父」とも呼ばれるハーバート・ジョージ・ウェルズH.G.ウェルズ)の『World Brain(世界の頭脳)』が来月再発されるのを知る。

World Brain

World Brain

Amazon

H.G.ウェルズというと、今年は没後75年で、そういえば英国の2021年記念硬貨にH.G.ウェルズ記念デザインが入り……おい、ちょっとおかしいぞ! というのが少し話題になったが、それだけで上に挙げた SF の古典に比べれば知名度が低い『世界の頭脳』の新装版が出るのか不思議になる。

これは、サイバーパンクの代表的存在であり、またハッカー文化サイバースペースにも造詣の深いブルース・スターリング(ワタシも『Make: Technology on Your Time』日本版で彼の文章をいくつも訳しました!)が「まえがき」、『Good Faith Collaboration: The Culture of Wikipedia(善意にもとづく共同作業:ウィキペディアの文化)』の著者であり、『Wikipedia @ 20: Stories of an Incomplete Revolution』の共編者であるジョゼフ・リーグルが「序論」を寄稿しているのがポイントなのだろう。

Of course, as Bruce Sterling points out in the foreword to this edition of Wells's work, the World Brain didn't happen; the internet did. And yet, Wells anticipated aspects of the internet, envisioning the World Brain as a technical system of networked knowledge (in Sterling's words, a “hypothetical super-gadget”). Wells's optimism about the power of information might strike readers today as naïvely utopian, but possibly also inspirational.

World Brain | The MIT Press

つまり、H.G.ウェルズの『世界の頭脳』で書かれる「世界百科事典」の構想は、ウィキペディア(というかインターネットそのもの?)の元祖とも言えるもの、という視座からの再評価なのだろう。もちろん今の目で読めば、ウェルズの構想がユートピアすぎるという見方はあるだろうが。

当然『世界の頭脳』にも既存の邦訳はあるが、1980年代に出たものでとっくに絶版なので(Amazon マーケットプレイスですごい値段がついている)、今回の新装版の邦訳は意味あると思うのだが難しいですかねぇ。

南極の昭和基地では、料理の情報共有にWikiが使われていた

80c.jp

ワタシは南極には行ったことはないし、おそらくはこれからの人生で行くこともないだろう。つまり、自分とは縁のない土地なのだけど、一方で南極の話というだけで未だ何か心惹かれるものがあるのも確かである。

この記事は、第61次南極越冬隊の調理担当だった、南極炒飯こと依田隆宏さんのインタビューだけど、南極料理人ならではの工夫の話をはじめとして、全編とにかく面白く、読ませる。

個人的には、ちょっと他の人と異なるポイントで盛り上がってしまった。

―食べたい料理のリクエストもありましたか?

たまにありました。僕は基本的に1週間単位で献立を考えていて、最初は昭和基地にある『昭和Wiki』と呼ばれる情報共有システムにメニューをアップしていました。仕込み中に変えることもありましたけどね。

南極で炒飯を!昭和基地で中華を作る|依田隆宏さんインタビュー | 80C - Part 2

昭和Wiki昭和基地の情報共有には Wiki が使われているのか!

依田隆宏さんは「最初は」と言っているので、今は違っている可能性も高いが、それでも「昭和基地Wiki が使われているか!」と色めき立ってしまった。

冷静に考えてみれば、情報共有に Wiki が使われているからって当たり前の話で、南極だったら何が違うんだという話なのだが、Wiki エンジンは何が使われているのだろうか、PukiWiki だろうか? とか、記事の本筋から離れたところで想像を膨らませたりした。

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