この記事にも書かれるように、『エクソシスト』の原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティは、映画版の内容、特にエンディングが「悪魔の勝利」と見られることに不満があることを表明してきた。
2000年にディレクターズカット版が出たが、これは原作にあってウィリアム・フリードキンが却下したスパイダーウォークや前述のエンディングなど、むしろウィリアム・ピーター・ブラッティの意向を反映したものである(コメンタリーで二人がしつこく言い争いしてるのが笑える)。
こないだバーで一人で飲んでいて、マスターと女性客に『エクソシスト』がいかに男泣きの名画かを延々力説するという迷惑行為をしてしまったのだが、特にラストの階段落ちの場面。撮影ではカラス神父の死を看取るダイアー神父の演技がなかなか決まらなかった。そもそもダイアー神父役は本物の神父をキャスティングしており、何度カメラを回してもウィリアム・フリードキンが満足するレベルに達しない。
とうとうダイアー神父役のウィリアム・オマリー神父が、これ以上は無理だとフリードキンに泣きを入れた。本職の役者じゃないんだから無理もない。それを聞いたフリードキンはどうしたか。オマリー神父にビンタをかまして撮影を続行した。そして、あの手を震わせる男泣きの名演が引き出されたのである。フリードキンは鬼畜である。
ウィリアム・ピーター・ブラッティは不満かもしれないが、ワタシのように悪魔の実在を信じる人間からすれば、人間ごときが悪魔に勝とうなんておこがましいとすら思う。そうした意味で、ダイアー神父が一人歩き去る冷え冷えとしたオリジナルのエンディングこそがあの映画に似つかわしい。冒頭のイラクの場面を含め、ホラー映画の枠をこえたクラシックとしての風格をもつ、そして何度も書くが男泣きの名画である。
TVドラマ化するのは勝手だが、フリードキンは参加しないほうがいいと思う。
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