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J・エドガー

J・エドガー Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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評価的には賛否両論というか、否のほうが多いというのを聞いていたので正直少し不安だったのだが、個人的にはすごく良かったぞ。

本作は、半世紀近くにわたり FBI の長官を務め、大きな影響力を持ち続けたジョン・エドガー・フーヴァーを主人公とする映画である。フーヴァーは現代史における代表的な「悪役」の一人であり、その彼をどう描くのか興味があったが、飽くまで一人の人間としてのフーヴァーをよく描いていたと思う。実に立派な動機に基づく要求が恐ろしい力をもたらしてしまうところは当然ながら押さえているが、一方で彼の存在自体がいつの間にか持つようになった不気味さまでは迫れてなかったかもしれない。ただ懸案だった同性愛描写もあれくらいが適切だったと思う(ハンカチが効果的に使われてたね)。

本作についてはメークアップがお粗末という評価があるようだが、ワタシはそんなに気にならならなかった。レオナルド・ディカプリオは評判通りの熱演だったが、晩年も声が元気すぎるのを見ると、晩年のほうはフィリップ・シーモア・ホフマンがやってたほうが良かったのではないか思ったりした(この二人は全然似てないだろ! と言われそうだが、老けメイクのディカプリオを見ると意外に近いのである)。

話の展開としては晩年のフーヴァーが口述する自伝の内容にあわせてその過去が挿入される形になるが、必要以上にその両者を行き来するし、口述の再現を踏み越えた描写も多く、観る側にかなり混乱をもたらす。これは信頼できない語り手としてのフーヴァーを反映したものだと解釈している。

本作がクリント・イーストウッドのキャリアの中でどのように位置づけられるのかは分からないが、前述の混乱を含め一筋縄にいかない、でも力作としかいいようがないパワーのある映画を作り続けているのはさすがである。ディカプリオはフーヴァー役を得た時点で、これでオスカーがいけると思ったのではないか(実在の人物を演じて主演賞を得た事例が多いので)。確かに彼はよくやったのに、本作はそうした思惑ともずれた映画になっている。ディカプリオにはご愁傷様といいたいが、ワタシは満足である。

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