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ミラーズ・クロッシング スペシャルエディション

DVDジャケット

当代最高の映像作家であるコーエン兄弟の作品の中で、一番好きな作品である。以前、この映画の唯一の欠点は面白すぎること、と書いたことがあるが、それぐらいひたすら面白い映画である。期間限定で2000円で買えるとなれば、買わない手はない。

コーエン兄弟の作品は思想性が欠落しており、そうでなくても個人的にはひっかかりが少なくピンとこない部類に入るはずなのだが、それでもワタシが彼らの映画を大体好きなのは、彼らがユーモアの表現がうまいところによっているのだろう。『ビッグ・リボウスキ』のようなそれを前面に押し出した映画に限らず、『ファーゴ』『バートン・フィンク』といった作品にもそれは言えることである。

ミラーズ・クロッシング』の美点の一つに、DVD のジャケットを見ても分かる通り、映像の絵画性がある。冒頭の風で帽子が飛ばされる場面など、本作は(主に帽子を中心として)絵が決まりまくるところがいくつもある。

そしてそれ以上に重要なのが、その「絵」がちゃんと動きを持ち、「映画」になっているところ。映画は単なる絵画でもなければ単なる動画でもない。黒澤明が言うように、「映画になる」瞬間があってこその映画なんだ。本作ではその瞬間まで決めまくってくれる。やはり、撮影監督のバリー・ソネンフェルドの貢献は大きいのだろうな。本 DVD には彼のインタビューも収録されているが、彼の監督作を見るにつけ、撮影監督に専念した方がいいんじゃないかと思うのだが。

本題に戻ると、もう一つ重要なのが、上で書いたユーモア感覚。DVD の特典インタビューで主演のガブリエル・バーンが、はじめ脚本を読んでコメディかと思ったと言っているが、重要なのはそこである。この映画の脚本は、演出次第でコメディにもできる作りになっている。

「この映画はダシール・ハメットのオマージュである典型的な…」などと薀蓄垂れる自称映画通さんらはそこらへん分かっているのかな。言うまでもなく、コーエン兄弟ノワールっぽい演出はお手のもので、実際本作もそういう作りになっているが、ワタシが彼らの映画の中で一番本作を好きなのも、それがコメディの枠組で撮られているという面白みがあるからだ。第一、かっこいい主人公があんなに一方的にぼこられるノワールはなかなかありゃしませんぜ。

その主人公を演じたガブリエル・バーンが渋くてかっこいいのを始めとして、ジョン・タトゥーロスティーヴ・ブシェミの怪演など役者陣の見所も多く、素晴らしい映像×音楽×演技の映画に仕上がっている。

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