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ホドロフスキーのDUNE

ホドロフスキーのDUNE [Blu-ray]

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アレハンドロ・ホドロフスキーの映画をロクに観ていないワタシが行ってもいいものかと思うところもあったが、ワタシが住む街での上映最終日に滑り込みで行ってきた。

とにかくホドロフスキーが元気である。本作の撮影時点で80代半ばのはずだが、とてもそう見えない血色の良さで生気に満ちている。

その彼が語りまくる実現しなかった『DUNE』の映画化の話がとにかく面白い。結局、芸術家肌の映画監督が妄想したものの映画会社にそっぽを向かれて頓挫したどこにでもあるプロジェクトの話でしょ――まぁ、基本的にはホドロフスキーの DUNE もそう見えるのかもしれないが、それがどう違うかは是非本作を観ていただきたいところである。

ホドロフスキーが DUNE の映画化で目指したものは、人間の心の在り方を変える映画であり、芸術と映画の神の降臨である。これだけ書くと誇大妄想に思えるが、ホドロフスキーの情熱と強い意思が、クリス・フォス、メビウスダン・オバノン、そして H・R・ギーガーという超一流の作画スタッフ、ピンク・フロイドやマグマといった音楽家、そしてデビッド・キャラダインサルバドール・ダリミック・ジャガーオーソン・ウェルズというとんでもないメンツを引き込んでいく。

ホドロフスキーが「魂の戦士」と呼ぶ人たちを巻き込んでいく話は、一種の聖杯物語でありしかもたまらなく可笑しくて、当時のホドロフスキーには、ダン・オバノンが語るような人をトリップさせる魅力があったのだろうな。あと、今年惜しくも亡くなった H・R・ギーガーの映像を初めて観たが、本当にギーガーギーガーという感じで喋る人だったんだな!

まぁ、残念ながらこの映画の結末は分かっていて、ホドロフスキーの DUNE は撮影にかかれなかったわけだが、彼の挑戦は無駄ではなかった。彼とメビウスらが分厚い本にまとめた『DUNE』は(本作はその中の見せ方もよかったね)、上に名前が挙がる人間が複数参加した『エイリアン』をはじめ、後の数々の SF 映画の萌芽となり、非公式的に影響を与えたのである。それが、原作とは異なるホドロフスキーの『DUNE』のラストに重なるのが感動的なのだ!

80年代に入り、デヴィッド・リンチが手がけた映画版を観に行ったときの話など爆笑ものだったが、観ていてとても可笑しいだけでなく勇気がわく映画だった。

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