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児島由紀子に「生涯一ゴスの貞節を守り抜くことをここに誓う」と言わしめたシスターズ・オブ・マーシーのインタビュー

インサイター「シスターズ・オブ・マーシーが新譜を制作中?」を読み、現時点で彼らのラストアルバムである『Vision Thing』発表時のインタビューを思い出した。

ワタシは特別 The Sister of Mercy のファンではないのだが、とにかくアンドリュー・エルドリッジの発言がひたすら楽しいし、インタビュワーの児島由紀子も「やはりゴスは正しい。私は、生涯一ゴスの貞節を守り抜くことをここに誓う」と感極まっているのに気圧されて破いてもってきていた。

それではロッキング・オン1991年2月号から引用させてもらう。インタビューはバンドの人事異動の話題から始まる。

●最初にパトリシア・モリスンの件について、お聞きしたいんですが、彼女の脱退の理由は何だったんですか。

「訳の解んない事ばかり言い始めたんだ。ミュージシャンってのは大体あまり知的でない連中が多いんだよ。だからそれ相応の扱いをしてやったんだ。俺は世間で誰ともつき合っていけない極悪非道人みたく言われているけど本当はただバカな連中が耐えられない性格なだけで、愚鈍な連中を見るとイライラしてくるんだ」

のっけからかつての同僚を容赦なく罵倒ですよ。一方で自分のパブリックイメージに対して冷静にコメントするあたりは、さすが元オックスフォード大生にして四ヶ国語を自由に操る秀才である。

●……えー、新メンバーもかなり問題ものの顔ぶれが揃いましたね。元ジグジグ・スパトニックのトニー・ジェイムスとは。貴方に負けないくらいエゴ・マニアックで独裁的なタイプだと聞いているんですが、円満にやっていけるものなんでしょうか。

「勿論さ。だって俺のほうがもっとエゴ・マニアックで、もっと独裁的だから。奴は俺に牙をむいたって所詮ブチのめされるだけだってのをよおく承知しているからね。賢い男だよ。勝てない勝負は最初からしないんだ」

ふと思ったのだが、今こういうキャラのブロガーとかどうでしょうか。ワタシにはムリですが。

しかし、80年代の徒花ジグ・ジグ・スパトニックの名前をこんなところで見るとは(笑)。近年なぜかロマンポルシェと共演してますね。

●そうですか。それに元オール・アバウト・イヴのティム・ブリチェノがギター。彼は確かミッションに加入する筈だったんじゃないですか。それを横取りしたりして、またウェイン・ハッセイに憎まれますよ。

「あんなのが何を言おうが野垂れ死にしようが知ったこっちゃない。奴は俺の悪口を言えば言うほど自分の首を締めているのにも気付かないほどのバカなんだから。(中略)しかしアイツ昔から少々足りないと思ってたけど、未だに救いようのない白痴だな」

当時からゴスな人なら知らない人はいないが、シスターズ・オブ・マーシーの初期のメンバーだったウェイン・ハッセイらは、脱退後ミッションを結成した。しかし、その前後アンドリューとバンド名や楽曲の利用でかなり揉めて訴訟沙汰になり、ウェイン・ハッセイはアンドリューに対して恨み骨髄に達したとな。

ミッションの初来日公演のとき、最前列でアンドリューの写真を掲げる女性客にウェイン・ハッセイが激怒したという話を何かで読んだときは、「ゴスって怖い…」と慄いたものである。

さて、アンドリューの罵倒はインタビュワーにも及ぶ。

●何て事を……。ところで新作にはびっくりしました。ちょっと聴いた分には「へヴィ・メタじゃないか」と言われそうな音なんですけど。

「へヴィ・メタ!! これが君にはへヴィ・メタに聴こえるのかい? ひょっとして聴覚テスト受けたほうがいいんじゃないの? 職業にさしつかえるぜ」

●そんな事ありませんって。ひょっとして共同プロデューサーのジム・スタインマンに操られたんじゃ?

「プロデューサーに操られるなんてのはよっぽどバカなバンドで自分達の作品を他人に操作させる隙や油断を与える連中だけであって。利用されちゃダメなんだよ他人に。他人ってのは利用する為にあるものなんだから」

「他人ってのは利用する為にあるもの」って良いフレーズだな。オイラもこういう言葉を堂々と言えるような人間になれたらよい……のかな?

しかし、「ミート・ローフからバリー・マニロウまで」がキャッチフレーズのジム・スタインマンとはこれまた80年代濃度の高い人選だ。

さて、児島由紀子もただアンドリューの毒舌にヤラれっぱなしではない。

●……はあ。そんな訳で今作はいやらしいくらい音に厚みが出てきてレコードを聴いただけじゃ誰もこのバンドのドラマーが機械だとは気付かないと思うんですが。この際、思いきって生身の人間を入れたらどうですか。どうせへヴィ・メタになっちゃったんですから。

「よけいなお世話だ。大体、生身のドラマーほど無能なものはないんだよ。本来ドラマーなんてのは常にバンド内で最も役立たずな人間がやる仕事って相場が決まってるんだ。リズム感のみ発達した能無しさ。だから機械で充分」

●昔は自分だってドラマーだったくせに。

「げっ知ってたのか。くそっ! 覚えてろよ。実は俺は、ヘタクソなドラマーだったんだあ」

●ほほほほほ。(以下略)

えーっと……これってゴス流のボケツッコミなんでしょうか(笑)。このバンドの機械のドラマーは Doktor Avalanche という名前を与えられており、こんなのにまで項目がある Wikipedia には呆れるね!

ここからアンドリューが「人生で唯一心を許せる愛人」と語る音楽との出会いなどについて語る良い話が続くのだが、ワタシも性格が悪いのでそういうのはばっさりスルーさせてもらう。

しかし、インサイターの真実一郎さんにとって、人生を狂わされた一枚が彼らのファーストアルバム『First and Last and Always』だったんですな。ワタシの場合、キング・クリムゾンの『太陽と戦慄』がそれにあたるだろう。「プログレなんか聴くと性格が暗くなるぞ。まともな社会人になれなくなるぞ」と警告する兄を振り切り、フリップ真理教に入信した高二の夏。兄は正しかった……

ところで、『First and Last and Always』が日本で再発される場合、邦題はやはりマーシーの合言葉』のままなのだろうか。

First Last & Always

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