先週、まさに「突如」という感じでビジネス界の「SF」への熱い視線について書かれた記事を二つ見かけた。
記事を読んでみると、サイエンスフィクションの想像力は昔からビジネス、というかイノベーションに貢献してきたのが分かるのだけど、コロナ禍により注目された作品に SF がいくつもあったこと、また企業が抱える閉塞感の打破の欲求に未来を描く SF 作品からの「逆算」が期待されることで、SF(作家)に期待が高まった流れが伝わる。
そうした意味で、個人的には2020年夏からフジテレビで放送された世界SF作家会議(番組は現在も YouTube の 8.8 channel ですべて見れるはず)の役割は大きかったと思う。
おっちょこちょいなワタシなど(書名に冠した本がいっぱい出た)「デザイン思考」の次は「SF思考」だ! とか軽薄なトレンド分析もどきをしそうになるが、「SFを通じた未来予測から、未来に向けたビジョンを探究し、今後起こる問題への解決法を見つけ出す手法」としての「SFプロトタイピング」という言葉も、またしても軽薄なトレンド分析もどきとして書くなら、2021年の流行語大賞にランク入りするのではと今から勝手に予想しておく。
「SFプロトタイピング」についてもっとも早くから本腰で取り組んでいたところでは、ちょうど一年前に雑誌連動特集『Sci-Fiプロトタイピング』として「SFがプロトタイプする未来」を打ち出し、その後もWIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所を立ち上げた Wired ではないだろうか。
Wired の編集長の松島倫明さんは、大変な才人だとお見受けする。
鈍いワタシもさすがにこれで「SFプロトタイピング」という言葉を知ったのだが、この企画(や世界SF作家会議)に参加している樋口恭介さんを Twitter でフォローしているおかげで、氏のイキり威勢のいいツイート経由でこの話題もなんとか追うことができた。
さて、先週「SF思考/SFプロトタイピング」についての記事がたて続けに出たのは、つまりはこれをテーマとする書籍がこの夏いくつも出るということでもある。
その中に樋口恭介さんの新刊、共著が含まれるのは言うまでもない。
樋口恭介さんの本では、およそ一年前に刊行された『すべて名もなき未来』もかなり面白かったが、「SFマガジン」2021年6月号の異常論文特集の監修といいすごい勢いである。多くの若い人がこの重要人物の仕事に感化され、乱反射してくれると面白いことになると思う。