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『ブラック・ミラー』全23作をランク付けするとどうなるか?(シーズン5は……)

先月 Netflix で配信が始まった『ブラック・ミラー』シーズン5だが、早速ワタシも観た。

はっきりいって、この番組の未来の先取り的な要素ははっきり後退しており、WIRED のように「“現実”に追い越され、もはや「驚き」が見られない」という評も出るだろうなという感じだった。

ワタシの場合、Netflix で最初にシーズン4から観始め、その後シーズン3→2→1と普通と逆の順番で辿っており、やはり Netflix 製作に移ってからはっきり画面がゴージャスになったと感じるが(これはそれまでの話の舞台がイギリスが多いのがアメリカに移ったので、画面の明るさが変わったのも実は大きいだろう)、どのシーズンもそれぞれ好きな回がある。

ここまでエピソードが増えてきたら、(クリスマス・スペシャルや映画版を含め)全23作のランク付けを誰かやってるだろうと調べたら、以下の5つも出てきた。

最後の Collider というサイトは知らなかったが、他はエンタメ系、テック系などそれなりに有名なメディアである。しかし、その評点を見たら、結構ばらけている。

面白かったので、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションという本ブログの現在の趣旨を忘れて、エピソード全23作とそれに各メディアがつけた順位を表にまとめてみた。

エピソード名 Esquire WIRED UK Vulture PCMag Collider
シーズン1
国歌(The National Anthem 2 3 4 11 12
1500万メリット(Fifteen Million Merits 19 12 10 1 9
人生の軌跡のすべて(The Entire History of You 6 10 5 7 2
シーズン2
ずっと側にいて(Be Right Back 1 6 1 3 1
シロクマ(White Bear 11 21 16 5 5
時のクマ、ウォルド―(The Waldo Moment 22 19 19 19 23
クリスマス特番
ホワイト・クリスマスWhite Christmas 21 23 7 2 3
シーズン3
ランク社会(Nosedive 16 4 3 9 8
拡張現実ゲーム(Playtest 23 14 13 12 6
秘密(Shut Up and Dance 8 8 15 13 19
サン・ジュニペロ(San Junipero 3 1 6 4 4
虫けら掃討作戦(Men Against Fire 18 20 20 22 22
殺意の追跡(Hated in the Nation 5 5 9 14 17
シーズン4
宇宙船カリスター号(USS Callister 7 2 2 6 7
アークエンジェルArkangel 13 11 22 17 11
クロコダイル(Crocodile 10 9 12 23 16
HANG THE DJ(Hang the DJ 4 13 14 8 10
メタルヘッドMetalhead 12 15 8 21 21
ブラック・ミュージアムBlack Museum 20 7 17 15 18
インタラクティブ映画
ブラック・ミラー: バンダースナッチBlack Mirror: Bandersnatch 14 17 11 10 14
シーズン5
ストライキング・ヴァイパーズ(Striking Vipers 17 16 23 16 13
待つ男(Smithereens 15 22 21 18 20
アシュリー・トゥー(Rachel, Jack and Ashley Too 9 18 18 20 15

ホワイト・クリスマス」のように最高位近くと最低位近くの両方に入っているものがあったりする。

とはいえ、ほとんどの評者が高い評価をつけているもの、その逆があるもので(そうした意味で、シーズン5は苦しいですな。でも、ワタシはけなされてる「アシュリー・トゥー」嫌いじゃないよ!)、あまり意味があるとは思わないが、高評価トップ5を選ぶなら以下になる。全23作もあると、つまみ食いするにもどれから手をつけてよいか分からないという方は参考にしていただきたい。

  1. ずっと側にいて(S2E1、平均順位2.4)
  2. サン・ジュニペロ(S3E4、平均順位3.6)
  3. 宇宙船カリスター号(S4E1、平均順位4.8)
  4. 人生の軌跡のすべて(S1E3、平均順位6)
  5. 国歌(S1E1、平均順位6.4)

Rebuild宮川達彦さんが、真っ先にお勧めしていた「サン・ジュニペロ」と、へこむから最初には観ないほうがいいと言っていた「国歌」の両方がランク入りしている(笑)。

ちなみにワタシが好きなエピソードを順位をつけず選ぶなら以下のあたり。

そうそう、『ブラック・ミラー』といえば、『ネットフリックス大解剖』に収録された「ポスト・ヒューマン時代のわたしたちを映し出す漆黒の鏡」が DU BOOKS の note でためし読み公開されているので参考まで。

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

オバマ政権時代の大統領経済諮問委員会委員長も務めたアメリカを代表する経済学者の遺作『ロック経済学』

大原ケイさんからアラン・クルーガーの Rockonomics という本を教えていただいた。

ROCKONOMICS

ROCKONOMICS

正直に書くと、最初「へ?」という感じだった。

アラン・クルーガーというと、プリンストン大学教授にしてバラク・オバマ政権時には大統領経済諮問委員会の委員長を務めており、クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞など数々の賞を受賞しているアメリカを代表する経済学者である。

そして、その彼は今年2019年3月に自殺によりこの世を去っている。

で、この Rockonomics なる本は、2019年6月、著者の死後に刊行されている。つまり、「ロック経済学」を意味するタイトルを持つこの新刊は、高名な経済学者の遺作なのである。なんでこんな面白そうな本を書いておきながら、自らこの世を去ってしまうのか……。

思えば、彼の死去時にはバラク・オバマ追悼文を書いているが、「ロックンロールの経済学を理解することでがどのようにして彼の最も深い関心事の一つ,すなわち変貌する世界において中間層を再構築するということの解決をもたらしうるかについてロックの殿堂で行ったノリに乗ったスピーチ」という、最初読んだときなんじゃそりゃ? となった個所の合点がいった(そのスピーチは見てないが)。

副題を読めば分かるように、この本は「音楽産業が経済や生活について我々に教えてくれること」を扱ったものであり、ミュージシャンやレコード会社の重役や興行関係者など音楽業界の人間に取材して書かれたもので、元々は著者がブルース・スプリングスティーンのファンで、彼のバンド(E Street Band)のドラマーであるマックス・ワインバーグと食事したことが執筆の契機になっているという。

かくしてクインシー・ジョーンズリチャード・セイラーが推薦の言葉を寄せるという稀有な本ができたわけだが、音楽産業の中心がロックではなくヒップホップでなくなって大分経つのに、タイトルに「ロック」を当然のように入れてしまうところに年代を感じてしまうのだが、70年代ロックをもっとも得意とするワタシ的には文句ない。

調べてみると、アラン・クルーガーの本は『テロの経済学』(asin:4492313915)しか邦訳が出ていないのだけど、この本は翻訳されてほしいところである。

Uberの性差別的企業文化を暴いたスーザン・ファウラーの回想録が刊行される(ただし来年3月)

既に TechCrunch で告知されていたが、Uber で受けたセクシャルハラスメントを告発し、シリコンバレーに蔓延するセクハラと差別を明らかにしてシリコンバレーに激震をもたらしたスーザン・ファウラーの回想録が刊行される。

Whistleblower: My Journey to Silicon Valley and Fight for Justice at Uber

Whistleblower: My Journey to Silicon Valley and Fight for Justice at Uber

しかし、その刊行は2020年3月なんだよね……日本のあたふたした出版事情を考えると、うらやましい話とも言えるが。

このブログでも紹介してきた、エレン・パオの『Reset』シリコンバレーの「男性ユートピア」ぶりを暴く『Brotopia』邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)で紹介したサラ・レイシー(思えば彼女も Uber を敵に回したジャーナリストだ)の本の系列に連なるものである。しかし……これらの本は未だどれも邦訳が出ていない。スーザン・ファウラーのこの本もそうなのだろうか?

なお、スーザン・ファウラーはマイクロサービスのエキスパートでそちらの著書の邦訳が出ているが、昨年テック系の論説委員として New York Times に雇用されている。

プロダクションレディマイクロサービス ―運用に強い本番対応システムの実装と標準化

プロダクションレディマイクロサービス ―運用に強い本番対応システムの実装と標準化

『山形浩生書評集─経済・ビジネス編』が出る、ということはそれに続く「編」も出るということなのか?

TOWER RECORDS ONLINE芽瑠璃堂に「山形浩生書評集─経済・ビジネス編(仮)」なる本の情報があがっている。

版元は ele-king books とのことだが、まだ情報があがってない。ele-king books はよい本を多く出しているところなのでこういうことは書きたくないのだけど、こういうところがダメなところじゃない?

この本の場合、まだ Amazon にはページができていない。しかし、なんで本来なら情報の大本を握っているはずの版元のウェブサイトに新刊情報のページが真っ先にできないのだろう。

さて、それより気になるのは、「経済・ビジネス編」と銘打つということは、山形浩生書評集のそれ以外の「編」が ele-king books から出ると考えてよいということだろうか。今後の新刊情報に期待である。

そうそう、山形浩生というと、来月には上下巻あわせて一万円を超える『ナチス 破壊の経済――1928-1945』の共訳書が出る。いやはや、すごいねぇ。

ナチス 破壊の経済――1928-1945 (上)

ナチス 破壊の経済――1928-1945 (上)

ナチス 破壊の経済――1928-1945 (下)

ナチス 破壊の経済――1928-1945 (下)

積みNetflix披露の会というアイデアはどうだろう?

Yugui さんがツイッターで辛い心情を吐露していた。

これあるよね。「積読」ならぬ「積みNetflix」という言葉がどこまで人口に膾炙しているかは分からないが、Netflix については、以前映画のラインナップが貧弱なことを書いたことがあるが、それでも観てない映画はいくらでもあり、それよりなによりドラマ、ドキュメンタリー、ライブ(音楽、コメディ)など気が付くとどんどん見たい番組が溜まっていくんだよねぇ。

そこで、である。それぞれ Netflix で見たいと思いながら見れていない番組を公表する「積みNetflix披露の会」などあるとよいのではないかと思ったりした。

ワタシの場合、ざっと思いつくだけでも以下のあたりになる。

ドラマ

ライブ(音楽、コメディ)

これは割と新作だけから選んだもので、定番もののドラマを外してこれだけ残っている。大した量じゃないと言われそうだが、ワタシの場合 Netflix は家のテレビで観ると家訓で決められており、またそれができる時間が結構限られているため、これだけ消化するのでもどれだけかかるやら。

しかし、Twitter のタイムラインを見ていると、Netflix でやってるドラマやコメディライブのおすすめが流れてきたりして、これも見たいな! となるのである。何かドラマでもドキュメンタリーでも何かおすすめがあったら、(ブックマーク)コメントなどで教えていただきたい(そうやって「積みNetflix」が増えていく)。

NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

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『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その23

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、今なおこの電子書籍が(わずかながら)新たな読者を獲得しているのを知るのは嬉しいことである。

実は先日、事情があって『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』紙版を旅先に持参して読み直したのだが、やはり分量あるんだなと今さら実感してしまった。すべて自分が書いた文章だから、読み直すのもすぐできると思ったら、そうはいかなかったのだ。

さて、Toshiyasu Oba さんが感想を書いてくださっている。

様々な事件があった後だけに、なおさら切実な話題が多い。現在顕在化している問題の多くが、2010年代前半から半ばにかけて、その姿を現しつつあり、それに関する、根源的な議論も既に行われていたことがよく分かる。むしろ、今こそ読まれるべき時期がきたと言えるだろう(積ん読正当化ともいう)。

yomoyomo『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて: 続・情報共有の未来』達人出版会, 2017: 読書日記

電子積ん読の山(?)の中から取り上げ、読んでいただけるだけでワタシとしてはありがたく思う。

他にも、中央集権的プラットフォームによるウェブのクローズド化、アルゴリズムブラックボックス化の危険性、IoTを通じたデータ収集と監視社会などなど、提示される論点どれもが現在の動向と結びついていて、読むべき人が読めばもっと興味深い議論を展開できるのだろうと思いつつ、本書と関係があるようなないような、思いついたことを2点、忘れないうちに書き残しておこうと思う。

yomoyomo『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて: 続・情報共有の未来』達人出版会, 2017: 読書日記

この後、「うーん、yomoyomoさんの本とほぼ関係なくなってるな」と書かれているのだが、それでよいのである。ワタシの本が触媒となり、読み手の内にある問題意識(Toshiyasu Oba さんの場合はデジタルアーカイブが果たすべき役割)に対する思索が活発化してくれれば、それで十分ワタシの文章は人の役に立っているのだから。

広告によるマネタイズと、個人の活動から得られるデータの持つ価値の囲い込みという、ウェブを覆う経済システムとその勝者による中央集権化に対して、どのような規制を持ち込むことで自由を確保できるのか、また、より当初のウェブの理想に親和的な経済システムを導入することができるのか、というのは、引き続き考えていかなければならないことなのではないかな、と思ったりした。とりあえず、思っただけだけど。

yomoyomo『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて: 続・情報共有の未来』達人出版会, 2017: 読書日記

同じく『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』が(電子)積ん読になっている人も、今からでも読んで感想を書いてくださってもよろしくってよ?

プロのライターの原稿執筆環境、秀丸エディタ、GitHub、そしてHagexさん

発端は安田理央さん(id:rioysd)のツイートだった。

ワタシもまったく安田理央さんと同じように思い込んでいるテキストファイル納品派だったので、「そうだったのかぁー!」と驚いたし、自分が既に老害扱いされている(?)ことに慄いてしまった。

このツイートに対する反応については、安田理央さんが Togetter にまとめているのでそちらを読まれるのがよいが、Google ドキュメントで書き手と編集者が共有するという声もいくつか聞き、そうなのかーと思う次第である。

ワタシが使用しているエディタは20年以上秀丸エディタなのだが、以前は文章書きだけでなく、Visual Studio など IDE が指定される場合を除いてコーディングすら秀丸で押し通していたくらいである(現在は、PythonVisual Studio Code で書いてます)。

さて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションという本ブログの現在の趣旨に無理やりこじつける形で、この電子書籍の執筆・編集環境について書いておきたい。

元々の WirelessWire News 連載秀丸エディアでリンクや引用など HTML タグを入れたテキストファイルで納品していた。『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のための編集作業も当方はすべて秀丸エディアで行ったのだが、ファイル形式は達人出版会の高橋さんが用意した Markdown 記法のテキストファイルを編集する形となった。

ファイルの管理は、やはり高橋さんが用意した GitHub のプライベートレポジトリ上であり、エンジニアを名乗る人間として信じられない話だが、これがワタシの最初の本格的な GitHub 利用となった。

ところで、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションに関係して、来月以降に告知できる話があるのだが、某氏にその原稿について「ゲラは Word で出します」と言われ、そのときはそうなんだと思っただけだが、今回の話題を辿ってはじめて、そうか Word の校正機能が肝だったのか! と今さら気づいたりした。

いわゆる Office ドキュメントについては、この15年ほど OpenOffice.orgLibreOffice で対応してきたのだが、それは飽くまで閲覧が主で、ややこしい編集作業の機会はほとんどない。問題の校正機能について LibreOffice で問題なく対応できるのか、Office365 を試用したほうがいいのか不安になってきた……。

そういえば、ワタシが愛してやまない秀丸エディタについては、『執筆を効率化したい人のための秀丸エディタ実践入門』という電子書籍が出ているのを少し前に知った。

300円の電子書籍なんてと最初思ったのだが、紙の本にしておよそ500ページの分量らしく、かなり本格的な本のようだ。

久しぶりにこういう本を読んで、ひとかわむけた執筆作業を実現したいところだが、エディタで原稿を納品するライターは老害と言われてしまうと……。

思えば、同じく秀丸エディタ―を愛用していた Hagex さんお亡くなりになってちょうど一年になる(参考:福岡IT講師殺害事件)。

「Hagexを偲ぶ会」には残念ながら参加できなかったが、Hagex さんが生きていたら『執筆を効率化したい人のための秀丸エディタ実践入門』を買って読んでたんじゃないかな。

書籍の題名が長くなりつつあるのは世界的傾向なのか?

これはアメリカでの話だが、本の副題の長さがどんどん長くなっているとのこと。記事ではいろいろと実例が挙げられているが、確かに本の題名自体はシャープなのに、その後にその本の主張を説明するかのごとく長い副題がつくパターンが多い印象がある。具体的にはノンフィクション分野の本ですね。

この記事によると、Amazon は副題を含むタイトルに許容する文字数は199であり、これが歯止めになるみたい。この記事のネタ元である Slashdot も指摘しているが、説明的で長い副題は一種の SEO なのだろう。

日本の出版業界にもこの話が成り立つかは分からないが、ライトノベルでタイトルがとにかく説明的というか長いことは知られており、今年のはじめに「ラノベのタイトルが長くなったのはいつ頃か? タイトル文字数の長さを年別分布にした図表が興味深い」という記事がねとらばに掲載されている。

ラノベ分野ではもはや長いタイトルにもはや新鮮味は残っていないが、ジャンルが変わればまだ異化作用が期待できるのかもしれない。

ワタシの念頭にあるのは『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』なのだけど、この長い書名を意識した仲俣暁生さんによる取材記事「無名の新人が書いた地味な分野の本に、ありえないほど長いタイトルをつけて売ろうとした人文書出版社の話」も面白かったね。

ウィリアム・バロウズとロックアイコンたちの邂逅をテーマとする本が出ていた

ウィリアム・バロウズというと没後20年以上になるが、ロック界の偉人たちの関わりに焦点を当てた本が出たそうな。

William S. Burroughs and the Cult of Rock 'n' Roll

William S. Burroughs and the Cult of Rock 'n' Roll

William S. Burroughs and the Cult of Rock 'n' Roll (English Edition)

William S. Burroughs and the Cult of Rock 'n' Roll (English Edition)

確かに60年代以降はバロウズ自身一種のアイコン、サブカルチャーの重要人物だったわけで、アングラ、メジャー問わず、ロック界とも親交がいろいろあった。

具体的には、表紙にバロウズとともに写っているデヴィッド・ボウイの『ダイアモンド・ドッグス』に影響を与えた話は知られているし、それこそ60年代のビートルズボブ・ディランルー・リード、70年代のイギー・ポップパティ・スミスといったところから、90年代のカート・コベイン、レディオヘッドあたりまで交友関係の名前が挙がる。そういえばこのブログでも以前、1975年のウィリアム・バロウズとジミー・ペイジの2ショット写真を取り上げたっけ。

Boing Boing で引用されているところを読むと、ディランと会ったバロウズが、ディランの才気に非常に感銘を受け、「たとえ彼の専門が数学とか私がまったく門外漢のことだったとしても、同じように才気を感じただろう」と述べたとのこと。

そういえばバロウズは、70年代にディランのローリング・サンダー・レヴューへの参加を打診されたが断ったそうで、結果ツアーにはアレン・ギンズバーグが参加しているが、マーティン・スコセッシが監督したローリング・サンダー・レヴューについてのドキュメンタリー映画Netflix で公開されているので観ないといかんな。

この本、邦訳出るといいのだが。

クリストファー・ノーランがお薦めする映画30本

2020年公開予定の新作についての情報もぼちぼちニュースになっているクリストファー・ノーランだが、その彼が映画ファンにお薦めする映画30本のリストが記事になっている。

似たようなリストを以前どこかで見たような覚えもあるが、なにせクリストファー・ノーランといえば当代最高の映像作家の一人だから気になるところ。個々の映画に具体的にどのように推薦の言葉を述べているかは原文をあたってくだされ。

たまたまリストの上に有名作が並んでいたので、観たことある映画ばかりかなと思いきや、ワタシの場合観ていたのは30作の半分に満たなかった。お恥ずかしい限りである。

リドリー・スコットスティーヴン・スピルバーグデヴィッド・リーンフリッツ・ラングテレンス・マリックの映画が複数チョイスされており、日本映画では『戦メリ』だけですな。しかし、アルフレッド・ヒッチコックオーソン・ウェルズはそれを選ぶかと思ってしまう(特に後者は、ウェルズの映画で唯一日本でディスク化されていない作品)。

このリストを見ると、『ダンケルク』をはじめとして、ノーランが映画を作る際にどういう作品を参考にしたのか分かる気がしますね。

ネタ元は kottke.org

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』が国会図書館に納本された

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、以前矢吹太朗さんに国会図書館への納本を勧められ、ワタシもその旨を書いたのだが、例によってワタシが病的にものぐさなため、実行できてなかった(申し訳なし)。

それに業を煮やして、というわけではないようだが、達人出版会高橋征義さんが国会図書館に納本くださった。ありがたい!

いずれ、国立国会図書館オンラインで検索したら、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の情報も出てくるようになるはずだ。

ところで高橋征義さんというと、技術系同人誌即売会技術書典について語る講演動画が日本電子出版協会のサイトにおいて、プレゼン資料とあわせて公開されているので紹介しておく。

この講演動画を見ながら、ふと高橋征義さんについて思ったことを書いておく。

これは確か昔小林よしのりが書いていたが、漫画家はヒットを2作飛ばして初めて本物と認められ、3作ヒットを出せれば大家と認められる(手元に出典がないのでうろおぼえ)。

ここで「ヒット」を「インパクトのある仕事」に置き換えて考えるとして、それを高橋征義さんに当てはめた場合、日本Rubyの会会長としての Ruby コミュニティに関する仕事全般が大きな「ヒット」だろう。そして、それに付随する形ではあるが、高橋メソッドという個人の「ヒット」も高橋さんは飛ばしている。

そして、(『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の版元である電子書籍専門出版社の)達人出版会も……と書きたいのだが、現状「ヒット」とまでは言えないだろう。例えば、ワタシの電子書籍が100万部売れていたら言えるかもしれないが、それは著者の力不足などあり現実になっていない。

しかし、技術書典はもうこれは「ヒット」と言って差し支えあるまい。つまりは、技術書典の成功をもって、高橋征義さんはこの世界における「大家」の域に達したのではないか。

だからどうしたというのではないし、ワタシの高橋さんへの対応が変わるわけではないのだが、そうした人と仕事ができることを素晴らしい幸運だと思っている。

さて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』については、もう少し後に、ワタシ自身もそれはまずないと思い込んでいたことをアナウンスできるかもしれない。それまでしばしのお待ちを。

Maker Mediaの操業停止とメイカームーブメントのこれから

週末、Maker Faire勧進元であり、雑誌 Make の版元である Maker Madia が22名の全従業員を解雇し、すべての業務を停止したニュースがかけめぐった。

ベイエリアMaker Faire が資金面の問題で今年が最後になるらしいという話は高須正和さんの Medium で読んでいたが、正直、へー、苦しいんだと思ったくらいで、Maker Madia 自体が業務停止するなんてまったく考えもしなかった。

創業者であり CEO の Dale Dougherty は、何らかの形での復活を諦めていないとのことだが、少なくとも雑誌は終わりだろうし、8月の Maker Faire Tokyo 2019 には影響はないと願いたいが、今後の各地での Maker Faire 開催にも当然ながら影響が出てくるだろう。おいおい Make: Japan などにおいて、そのあたりに関するアナウンスも出ると思う。

ワタシ自身はメイカーではないが、『Make: Technology on Your Time』日本版には翻訳者としてずっと携わり、先月の Maker Faire Kyoto 2019 が実はかなり久しぶりではあったが、日本の Maker イベントにもこれまで何度も足を運んできた。そうした人間として、やはり残念に思うのは間違いない。

ワタシが「メイカームーブメントの幼年期の終わり」と書いたのは3年前だが、まだメイカームーブメントにはのびしろがあると思っている。

上にも書いたようにワタシ自身はメイカーではなく、「インサイダー」ではないので詳しい事情は分からない。だから、何か知ったようなことは書けない。かつて雑誌 Make の Editorial Director だった Gareth Branwyn が寄稿している文章から少しだけ訳して、とりあえず気持ちの整理をつけたい。

Make:』や Maker Faire で関わったほとんど全員を代表して、これまでやった仕事の中で、あれがもっとも創造的で、満足のいく、やりがいのある仕事だったと確信をもっていえる。あれは仕事だった。大変な仕事だった。時に、とてつもなく大変な仕事だった。それでもあれを「現実の」仕事みたいに感じたことはほとんどない。いつだって、世界に素晴らしいシュートを放つような感じだったんだ。

今明らかな問題は、「社内報」とコミュニティの年次集会を失って、メイカームーブメントはどうなる? ということだ。メイカーの友人である John Graziano と私はこの問題について昨夜メッセージを交わしたのだが、メイカーはハッカーであり、問題解決屋(problem-solvers)なのだと彼は指摘した。メイカーのコミュニティは長寿と繁栄を続けるに違いないと彼は語った。私も彼が正しいと願っている。なぜなら、今ほどイノベーション、魔法、斬新性、古き良きマッドマックスのサバイバルスキルが重要な時はおそらくないのだから。

Make: Tips and Tales from the Workshop: A Handy Reference for Makers (Make: Technology on Your Time)

Make: Tips and Tales from the Workshop: A Handy Reference for Makers (Make: Technology on Your Time)

Make: Technology on Your Time Volume 01

Make: Technology on Your Time Volume 01

[2019年6月10日追記]:Make: Japan | Maker Media社の現状とMaker Faire Tokyo 2019について

[2019年6月11日追記]:Makeの親会社がスタッフ22人全員レイオフ、運営停止の悲劇 | TechCrunch Japan

近年あまり名前を聞かなくなったエリック・レイモンドについての話題

エリック・レイモンドといえば、言わずと知れた「伽藍とバザール」三部作に代表されるオープンソース運動の顔だった人だが、近年はあまり話題にならないというか、フォローしたくない話題でしか話題にならない印象があるのだが、たまたま短いスパンで Slashdot で2回名前を見かけた。

エリック・レイモンドが SaaS は独占ソフトウェアよりもずっと危険だと吠えた話だが、Saleforce が顧客に軍隊仕様のライフルを販売することを禁じる発表をしたことに対する非難である。彼は強硬な銃所持擁護派だからね。

今は2019年であり、こんな分かり切ったことをまた言いたくないんだけど、自分のビジネスをしっかりコントロールしたいなら、頼るべきソフトウェアはオープンソースであるべきである。それがすべてだ。しかも、たとえそのソフトウェア自体が普通のオープンソースであっても、サービス提供者に拘束されてはいけない。

まぁ、それはそうなんだけど、今さら SaaS の危険性とか言いますかーという感じもするんだよね。


今日、私は妻の車から家まで――文字通り――這わなければならなかった。歩けなかったからだ。人生というものは、何か予定があるときに他のことが起きるものだ。

とのことで、健康的な問題も話題になっている。きっかけは半年前にカンフーのクラスでくるぶしを痛めたことに端を発するようだが、そういえば彼は空手もやってたんだよね。

某氏は esr のことを「どう見ても通信教育で学んだとしか思えない空手で徒手空拳リバタリアンの夢を追う男」と書いていたが、やはり還暦過ぎるといろいろ身体にガタが出だすんだろうな。彼の世代のハッカーもそういう年頃なのを再確認したりした。

ワタシは esr の政治性には賛同できないが、それでもできるだけ達者に過ごしてほしいとは思う。

The Art of UNIX Programming

The Art of UNIX Programming

パティ・スミスの『ジャスト・キッズ』に続く回顧録が出るのだが……

2010年度の全米図書賞も受賞したパティ・スミス『ジャスト・キッズ』に続く回顧録が今年の秋に出るとのこと。

Year of the Monkey

Year of the Monkey

Year of the Monkey (English Edition)

Year of the Monkey (English Edition)

『ジャスト・キッズ』は、彼女とルームメイトだったロバート・メイプルソープとの関係を中心に据えた、彼女のキャリア初期について書いたものであり、それに続く本となれば、彼女がニューヨークパンクシーンのスターとなり、その後フレッド・スミスとの結婚の後引退状態となり、そして――という話になると思ったのだが、新作で書かれるのは、2016年という特定の年にフォーカスするものらしい。

うーん、ファンが期待しているものとは違う気がするが、出来がよければ邦訳が出るでしょう。

そういえば、彼女は Soundwalk Collective とのアートっぽいコラボアルバムを発表したばかりで、未だ現役で活動しているのはすごいことである。

The Peyote Dance

The Peyote Dance

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

『GODZILLA ゴジラ』は5年前になるのか。この前作が良かったので、本作もはじめから観に行くつもりだったが、よかったですねー。以下、映画の内容に触れるので、ネタバレが気になる人はご注意ください。

正直登場人物たちの行動は、お前なんでそんな無防備に怪獣に対峙できるんだと呆れるレベルに始まり、ワタシが好きな役者が何やってんだよお前はと言いたくなる行動をとったりして、ガバガバとしか言いようがない……けど、この映画にそれを言っても仕方ないか。マイケル・ドハティという明らかに波長がおかしい、しかし、ゴジラがなんたるか分かったオタクが監督してくれてよかった。

本作では、ゴジラ古代文明の関わりというか、巨神としてのゴジラなど怪獣たちが描かれ、こういう方向性からきたかと思った。ゴジラキングギドラが暴れる怪獣祭りであり(ラドンモスラはさほどでも……)、戦闘は夜や風雨の暗い場面が多いという『パシフィック・リム』のパターンだが、本作の場合ストーリーとして違和感はあまりなかったのでよしとする。

前作に続き、渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士が登場し、まさかの男泣きな展開を迎える。オリジナルの『ゴジラ』で芹沢博士がオキシジェン・デストロイヤーでゴジラを殺すために自らを犠牲にしたのに対し、本作の芹沢博士は初めて人間がゴジラに「触れ」、オキシジェン・デストロイヤーで一度死んだゴジラを生き返らせるために核兵器を使い自らが犠牲になる。これは、広島の原爆で父親を亡くし、その形見である8時15分で止まった時計を持ち続ける芹沢博士の一種の献身と赦しの物語である。

その上で、人間と怪獣たちの共存、共生がそんな人間に都合のよいものでないこともちゃんと描いている。ワタシは『 キングコング: 髑髏島の巨神』は観てないし、モンスターバースシリーズとしての今後はどうなるかは知らないが、本作が芹沢博士をその一種の狂信性を含めしっかり描いてくれたことに感謝したい気持ちになる。

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