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日本人拉致関係まとめ

今週も本サイトの更新はありません……ってもういいですかね?

政治ネタはあまり書かないのだが、たまにはすぐに陳腐化するような文章を書くのもいいだろう。この部分はいずれ削除するかもしれないのであしからず。

当方はそもそも米英によるイラク攻撃は不正なものであるという立場であり、現在までその考えに変わりはない。HotWired 原稿にしろ、『ウェブログ・ハンドブック』の訳者あとがきにしろ、ワタシはそのあたりに触れる際、「イラク戦争」と書かず、「米英によるイラク侵攻」と書いてきた。

当人としては、(編集者を含め)これについて指摘する人がいないのが不思議だったのだが、まあそういうところに注意して読む人はいないということだろうか。

だから、自衛隊イラク派遣についてもワタシは明確に反対であった。イラク復興のための国際的な枠組みが整っていないのに、大義なき戦争の尻拭いをさせられるのはおかしな話である。百歩譲って日本政府の主張する日本の立場、派遣に関して掲げる理念を受け入れるにしても、仲間であるはずの西欧諸国にしてこっちの事情をちっとも理解してもらえていないのだから、外交戦略としてハナから失敗であるし、それははじめから読めていた話だろう。

しかし、派遣と決まればその決定を尊重してサポートすべきだし、自衛隊には与えられた条件の中でベストの仕事をしてもらうべく変な足かせを課してはならないと思う。そうでなくてもワタシは、自衛隊にはもっとちゃんとした立場を与え、「自衛」のためのしっかりした仕事をしてもらえるよう(憲法改正を含む)法整備を考えるべきという立場なのだが、そのあたりの話はここでは省略。

で、イラクの荒廃した現状、なわけだが、上で受け入れた日本政府の主張するお題目からしてとっくに裏切られている。それなら撤退に向けて手を打っていかないといかないっしょ……と考えていたところで、今回の日本人拉致が起きたという案配である。

一通りネットで情報を漁った後の当方の中で一番強い感情としてあったのは、「プロ市民」的行動についての強い嫌悪感であった。拉致された三人の家族の一方的な訴えを聞くにつけ、その嫌悪感は強まった。

しかし、である。ワタシは自身が感じた嫌悪感を肯定するつもりはない。変な表現になるが、今回拉致された三人よりももっとしょーもないプロ市民的迷惑行動をした人間は他にいたはずである(人間の盾方面とか)。人間の命は、地球と比べられるわけもないくらい軽い。しかし、家族は何にも換えがたいもので、それをなりふりかまわず、はたから見れば不愉快なまでにごり押しするのはおかしなことじゃないだろう(楳図かずおの『漂流教室』を読み、主人公の母親のわが子のための無茶苦茶な行動に戦慄と感動を覚えなかったか?)。

今回の事件を安易に自作自演だと決め付けそうになった自身の心性を鑑み、ものの見方にバイアスがかかってしまっているなと自覚する次第である。その可能性(何かしらの共闘関係を含む)がないとは正直思わないが、今の時点で我々が断定的なことを言えるわけはないじゃないか。

さて、このようにどうしても苦々しい記述になってしまう。前述の通り、当方は自衛隊イラクから撤退すべきという考えだが、今回の事件がそれに良い影響を与えないのが自明だからだ。それは「テロに屈する/屈しない」というお決まりのタームとは関係ない話である。例えば「圏外からのひとこと」の「倫理+戦略=誠意」は、今読むとかなり無茶を書いていると思うが、少なくとも同じ苦々しさを共有しているように思うし、そういう無茶を書いてしまう背景も分かる(気はする)。

一方で人質解放の報を受け、いきなりうかれポンチな文章(「今回の事件が炙り出したのは、」以降)を書いてしまえる人もいるわけだが、こっちはまったく理解できない。「うかれポンチな文章」というのはワタシなりにかなり抑えた表現であり、それは後で追記された文章を読んで思い留まったところもあるが、前者の文章と後者の論理とではいくらなんでも距離がありすぎですぜ。そもそも、何でそもそもいきなり盛り上がれるのだろう。ワタシのように何より苦さ、徒労感を感じてしまう方が少数派なのだろうか。

ただ一方で、今回の事件を巡る自身の「目が釣りあがった感じ」を自覚したところもあった。その釣りあがり方が「自己責任」という言葉の強さと呼応しているように思うにつけ、それを言い合う社会は、とても住みにくそうと思うのも確かである。当たり前だが冷静にならないといけない。

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