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出版社のnote活用事例まとめ完全版(2020年9月時点)

yamdas.hatenablog.com

今年のはじめに公開したエントリだが、公開後に早速ここもあそこもあるじゃないと気づいていくつか追加したのだけど、その後になって気づいたところがいくつもあり、またこのエントリは検索サイト経由で訪問する人が多く、こんな不完全なリストを参照させて申し訳ない、と密かに心苦しく思っていた。

その後も note に参入した出版社もあり、2020年9月の現時点での完全版を作っておいたほうがよいのではないかと思った次第である。

今回ももっとも古いエントリの公開日を「開始日」として、それが古い順番に並べてみた。一方で「フォロワー数」はあまり意味がない(数を競うべきものじゃない)数字だと思い直して今回は外した。

これを出版社に入れていいのかと疑問に思うものも入れたが、出版エージェンシーや書店、あと勤務先を明かしていても飽くまで出版社の社員(社長)個人の note は外した。

出版社 note 開始日 関連サイト
ナナロク社 ナナロク社 2014/04/11 ナナロク社
詩想舎 詩想舎 2014/04/28 アイカードブック(iCardbook)詩想舎
文藝春秋 文春note部 2015/12/17 文藝春秋BOOKS
きこ書房 きこ書房 2016/04/11 きこ書房
リトルモア リトルモア 2017/01/16 リトルモア
アタシ社 三崎の夫婦出版社『アタシ社』 2017/02/02 三崎の夫婦出版社アタシ社
堀之内出版 堀之内出版ブログ(公式) 2017/03/05 horinouchi-shuppan
河出書房新社 河出書房新社 2017/04/21 河出書房新社
ライツ社 ライツ社 2017/09/11 @writes_p
DNAパブリッシング 電子書籍専業の出版社:DNAパブリッシング 2017/09/19 DNAパブリッシング株式会社
運動と医学の出版社 運動と医学の出版社 2017/10/31 運動と医学の出版社
学芸出版社 学芸出版社 2017/11/15 学芸出版社
新建築社 新建築社 2018/02/16 新建築.online
英治出版 英治出版オンライン 2018/04/09 英治出版
堀之内出版 雑誌nyx&nyx叢書 2018/05/04 horinouchi-shuppan
カバルファス・ブックス KABαS BOOKS 2018/06/06 高宮聡の雑貨店
早川書房 Hayakawa Books & Magazines(β) 2018/07/05 ハヤカワ・オンライン
髪書房 美容業界誌・髪書房 2018/07/13 株式会社髪書房
ポプラ社 ポプラ社一般書通信 2018/07/17 WEB asta
クラシップ KuLaScip 2018/07/25 KuLaScip|クラシップ
幻冬舎 幻冬舎plus+ 2018/08/02 幻冬舎plus
幻戯書房 幻戯書房編集部 2018/09/10 幻戯書房
PLANETS PLANETS CLUB 2018/09/28 PLANETS
遊泳舎 遊泳舎 2018/12/17 遊泳舎
NTT出版 NTT出版 2019/01/11 NTT出版
左右社 左右社 2018/10/16 左右社
小学館 和樂web編集部 2019/01/25 和樂web
サンクチュアリ出版 サンクチュアリ出版 公式note 2019/02/04 サンクチュアリ出版
黒鳥社 黒鳥社|blkswn publishers Inc. 2019/02/12 blkswn publishers Inc.|黒鳥社
大月書店 大月書店 2019/02/21 株式会社 大月書店
書肆侃侃房 書肆侃侃房 web侃づめ 2019/03/12 書肆侃侃房
建築ジャーナル 月刊誌建築ジャーナル 2019/03/15 建築ジャーナル
博報堂 雑誌『広告』 2019/03/15 雑誌『広告』
志学 志学社 2019/04/24 志学社
KKベストセラーズ KKベストセラーズ 2019/04/28 BEST TiMES(ベストタイムズ)
オルカパブリッシング オルカパブリッシング 2019/05/04 オルカパブリッシング / Twitter
etc.books etc.books 2019/05/15 エトセトラブックス
DU BOOKS DU BOOKS 2019/05/21 DU BOOKS
ディスカヴァー・トゥエンティワン ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019/07/02 ディスカヴァー・トゥエンティワン
実業之日本社 実業之日本社_新企画編集部 2019/07/08 実業之日本社
タバブックス タバブックス 2019/08/01 タバブックス
森北出版 森北出版 2019/09/02 森北出版株式会社
ナンバーナイン ナンバーナイン公式 2019/09/09 No.9
サウダージ・ブックス サウダージ・ブックス 2019/09/22 サウダージ・ブックス Saudade Books
集英社 集英社文庫編集部 2019/10/10 web 集英社文庫
太田出版 雑誌『ケトル』編集部 2019/10/29 太田出版ケトルニュース
柏書房 かしわもち 柏書房のwebマガジン 2019/10/30 柏書房
PLANETS PLANETS 2019/10/30 PLANETS
集英社 集英社文芸・公式 2019/10/31 集英社 WEB文芸 RENZABURO
文藝春秋 文藝春秋digital 2019/11/07 文藝春秋ホームページ
共和国 Digging Deep|共和国のウェブマガジン 2019/11/12 共和国 editorial republica
金子書房 「こころ」のための専門メディア 金子書房 2019/11/17 株式会社 金子書房
ダイヤモンド社 ダイヤモンド社書籍編集局 2019/11/26 ダイヤモンド・オンライン
光文社 光文社新書 2019/12/17 光文社
新潮社 考える人|新潮社 2019/12/26 考える人
かんき出版 かんき出版 2019/12/26 かんき出版
ワン・パブリッシング ムーPLUS 2020/01/08 株式会社ワン・パブリッシング
NHK出版 本がひらく 2020/01/15 NHK出版
翔泳社 翔泳社の福祉の本 2020/01/17 翔泳社の本
致知出版社 致知出版社note編集部 2020/01/21 致知出版社
世界文化社 世界文化社 公式note 2020/02/03 世界文化社
幻冬舎 幻冬舎 電子書籍 2020/02/08 株式会社 幻冬舎
マガジンハウス マガジンハウス書籍部 2020/02/19 マガジンワールド
竹書房 Takeshobo Books 2020/02/19 竹書房 -TAKESHOBO-
インプレス impress QuickBooks編集部 2020/02/20 impress QuickBooks(クイックブックス)
晶文社 晶文社 2020/02/21 晶文社
アルテスパブリッシング 小学館文化事業室 2020/02/21 アルテスパブリッシング – ページをめくれば、音楽。
国書刊行会 国書刊行会 2020/03/19 国書刊行会
スタンド・ブックス スタンド・ブックス 2020/03/19 STAND! BOOKS
未知谷 未知谷 a letter from unknown valley 2020/03/24 Publisher Michitani 未知谷のホームページ
文響社 文響社 2020/04/01 文響社
里山 里山社 2020/04/08 里山社
有斐閣 有斐閣書籍編集第2部 2020/04/14 有斐閣
KADOKAWA KADOKAWA デジタルマーケティング室 2020/04/16 KADOKAWAオフィシャルサイト
明日香出版社 明日香出版社(公式) 2020/04/23 明日香出版社
白揚社 白揚社 2019/04/24 白揚社 -Hakuyosha-
東京ニュース通信社 TV Bros. ( テレビブロス ) 2020/05/03 東京ニュース通信社
港の人 港の人 2020/05/07 出版社 港の人・MinatoNoHito
文藝春秋 本の話 2020/05/14 文藝春秋BOOKS
KADOKAWA KADOKAWAブックラブ 2020/06/01 KADOKAWAオフィシャルサイト
小学館 「100年ドラえもん」公式 2020/06/10 100年ドラえもん 小学館
工作舎 工作舎 2020/07/06 工作舎の本
ポプラ社 ポプラ社図書館部 学びの編集室 2020/07/16 WEB asta
ポプラ社 ポプラ社 こどもの本編集部(準備中) 2020/07/16 WEB asta
べレ出版 べレ出版語学編集部 2020/08/07 ベレ出版
小学館 アルテスパブリッシング 2020/09/07 小学館
スモール出版 スモール出版 2020/09/29 スモール出版

総数80を超えてしまった……ワタシも何か独自の情報源があるわけでもないので、抜けに気づいた方は(ブックマーク)コメントなりで指摘していただければ、今月中であれば追加します。

ケンブリッジ・アナリティカ告発本の真打クリストファー・ワイリー『マインドハッキング』と「監視資本主義」の行方

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)」で紹介した本で最初に邦訳が出るのはステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』である……と思ったら、10月刊行に延期されていた。それより先に今週クリストファー・ワイリー『マインドハッキング―あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア―』が出るのを知り、これが最初なのかと驚いた。

ケンブリッジ・アナリティカ告発本となると、既にブリタニー・カイザーの『告発』が昨年出ていたので、クリストファー・ワイリーの邦訳は正直難しいかと思っていた。邦題は少しだけマイルドになっているが、これは仕方ないですな(笑)。

ケンブリッジ・アナリティカ告発本が批判しているのは、まさに監視資本主義なのだけど、ショシャナ・ズボフの本の邦訳が一向に出ない間に Netflix ではズバリ『監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影』というドキュメンタリーまで今月公開されちゃった。

原題はちょっと違うのだけど、予告編にもある通りショシャナ・ズボフも登場するわけで、この邦題は正解だろう。

いや、でもさ、ショシャナ・ズボフ『監視資本主義の時代』邦訳、いったいいつになったら出るの?

シヴァ・ヴァイディアナサンの反Facebook本『アンチソーシャルメディア』も出る

いや、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」で紹介した本の邦訳が今年出るとはね。

『グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容』の邦訳もあるシヴァ・ヴァイディアナサンの反ソーシャルメディア(アンチFacebook)本の邦訳である。

前著がアンチ Google で、今度がアンチ Facebook という分かりやすい流れだが、かくしてクリストファー・ワイリー『マインドハッキング』に続いて、Facebook に対する告発の本の刊行が続くことになるわけですね。

Google社内で行われた講演会の動画でもっとも視聴されたトップ20に近藤麻理恵さんが入っていた

旧聞に属するが、ここでもたまさか取り上げる、Google が社内で行われた講演会の動画を公開する Talks at Google において、もっとも視聴数の多いトップ20をまとめた動画が公開されていた。

そのトップ20については上の動画にリストがあるが、タイトルにも出てくるレディ・ガガライアン・レイノルズといった音楽や映画、テレビ関係のセレブの動画は半分以上を占めている。

そういうのを改めてここで紹介しても仕方ないのでそれ以外に目を向けると、ユヴァル・ノア・ハラリケリー・マクゴニガルのように著書の邦訳のある日本でも知られた人もいる一方で、恥ずかしながらワタシも名前すら知らなかった人の講演もあって、自分のアンテナの低さを感じたりした。

ここでやはり目をひくのは、こんまりこと近藤麻理恵さんの動画がリスト入りしていること。

彼女も「KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~」というテレビ番組を持つ人になったわけだが、この講演は2015年、くだんの番組制作の前。講演を英語でやりきるのはさすがに辛そうだ……と思ったあたりで日本語に切り替わるのだけど、英語への通訳は飯田まりえさんではない。

Netflix 番組の2ndシーズンの収録はもう済んでいるはずだが、余剰というか生活物資のバッファの重要性が見直されたコロナ禍を受け、彼女の受容が変わるかは気になるところである。

人生がときめく片づけの魔法 改訂版

人生がときめく片づけの魔法 改訂版

今週共著の新刊が出るが、家の片づけに留まらず、働き方に話を広げていて、そのあたりを踏まえた方向転換なのかもしれない。

黒人音楽の歴史について文献をまとめたBlack Music History Libraryがすごい

ワタシは kottke.org で知ったのだが、18世紀から現在にいたる黒人音楽の歴史についての文献をまとめた Black Music History Library というデジタル図書館サイトがすごい。

blackmusiclibrary.com

これを見ていただければ分かるが、多様なジャンルごとに分類されていて、それぞれについて関係する書籍、記事、ドキュメンタリー、ポッドキャストの情報源がまとめられている。

ざざっと見ただけだが、このブログでも紹介したナイル・ロジャースの回顧録クエストラブによる『ソウル・トレイン』ヒストリー本なども入っている。

これのキュレーションを行ったのは音楽評論家の Jenzia Burgos という人なのだけど、これは立派な仕事だ。

こういった黒人音楽についての本の書き手となると、まず浮かぶのはネルソン・ジョージで、当然ながら彼の本はこのサイトのリストにすべて入っているが、邦訳で新品が手に入るのは今では『ヒップホップ・アメリカ』くらいなんだね。

ヒップホップ・アメリカ

ヒップホップ・アメリカ

高須正和、高口康太編著『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』を恵贈いただいたので感想を書いておく

高須正和さんから『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』を恵贈いただき、夏季休暇中に読み終わった。

高須正和さんの仕事としては、2018年の『世界ハッカースペースガイド』『ハードウェアハッカー』に続く本になる。またもう一人の編著者である高口康太さんの本では、昨年の『幸福な監視国家・中国』が(少なからぬ反発を感じながらも)とても優れた本でしたね。

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

さて、今回は「プロトタイプシティ」というタイトルが実によくて、「〇〇シティ」のようなネーミングで最初に浮かぶのは「スマートシティ」だけど、かつてスーザン・クロフォードが「スマートシティ」という言葉にポストヒューマニスト的な、過度に単純化され非人間的なイメージがあるため批判的で、「Responsive City(反応が良い都市)」という言葉を書名に掲げたのを思い出す。

本書で語られるのは、とにかくたくさん手早くプロトタイプを(コードすべて書き換えになることも半ば見越したうえで)作ってみてから、その中でうまくいくものを育てていく、「まずは手を動かす」人が集まる文化が根本にある都市深圳についてよく語られており、そこに身を置いてずっとニコ技深圳コミュニティを主導してきた高須正和さんの仕事の集大成になっているように思う。

本書の最初に掲げられる「非連続的価値創造」としてのプロトタイプ駆動の定義は、もしクレイトン・クリステンセンが存命で、新たに『イノベーションのジレンマ』の続編を書くとしたら採用される話に思ったし、6段階に分けて語られるプロトタイプ駆動の流れも分かりやすかった。

また、ウォーターフォールではもちろんないし、しかしアジャイルでもない、拡張性も保守性もほとんど考慮することなくとにかく作って、その後で有望そうなものに集中して作り直すという「アドホックモデル」の解説にも、日本企業はそれできんよなと思わさせれながらも納得させられた。が、それを支える「安全な公園」の話でiモードの話が引き合いに出されるように、日本企業だってチャレンジの余地はあるはずなのだけど。

そうした意味で日本企業に属する人間にとって耳に痛い話が多いのは確かである。「プレモダン」「モダン」「ポストモダン」の文脈をある意味都合よく利用する中国企業の話など、虫のよい理論というかさすがにそこは学べないと思ってしまうところもあるのだけど、それが可能にしているダイナミズムを本書がよく表現しているのは間違いない。

第四章「次のプロトタイプシティ」はニューズウィーク日本版のサイトに転載されていて(前編後編)、自由闊達だったメディアも管理と支配の向かうというティム・ウーの『マスタースイッチ』理論が都市にも当てはまるのか(これは明らかに誤用に近い連想なのだけど)、イノベーティブだった都市がそうでなくなるサイクルというか条件があるのかが気になったので、オンラインイベントで質問させてもらったが、そのあたりの中国人のしたたかさについては第四章以外にもいろいろ記述がある。それはそうと、今年出るらしいマシュー・ハインドマン『インターネットのわな(仮)』の邦訳はなかなか暗そうで楽しみだ。

第五章「プロトタイプシティ時代の戦い方」は、ナオミ・ウーさん(セクシー・サイボーグ)と GOROman さんのインタビューだが、いずれも実践者として新しい仕事を自ら作り出したという自負を感じさせる証言で、この本が若い世代に届いてこれに力づけられるといいなと思った。「日本企業の意思決定の遅さ」の話は定番だが、ナオミ・ウーさんが語るそれとはまったく違った理由で中国企業も意思決定が遅いという話に、そういうものなのかと興味深かった。

上にも書いたように、本書は深圳を面白がりコミットしてきた高須正和さんの集大成と言える本であり、ワタシも一読をお勧めします。

リチャード・ストールマン御大が自由、プライバシー、暗号通貨について語るインタビュー(の暗号通貨に関するところだけピックアップ)

cointelegraph.com
日本語版には翻訳ないみたい。

リチャード・ストールマン御大が暗号通貨、デジタル通貨について語っているのは珍しいと思うので、その方面についての発言をざっとピックアップしておきたい。誤訳があったら指摘してください。

まず(中国の)中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)について。

デジタルペイメントシステムは、プライバシーを守るべく設計されないと根本的に危険だ。中国はプライバシーの敵だよ。中国は全体主義の監視がどんなものかを体現している。私にはこの世の地獄に思える。そこの暗号通貨を私が使わない理由の一部にはそれがある。暗号通貨が政府により発行されると、それはまさにクレジットカードや PayPal なんかがやっているように国民を監視することになるし、それはまったく受け入れられない。

暗号通貨を個人で使ったことがあるかを聞かれての答え。

答えはノーだ。私はいかなる種類のデジタルペイメントも使わないが、システムがユーザのプライバシーを尊重しないのがその理由で、ビットコインもそれに含まれる。あらゆるビットコインの取引は公開される。最初は私に紐づくウォレットが気づかれないかもしれないが、私が何度か取引に使えば、それが私のだと見当をつけるのも可能になる。十分に情報を集めれば、それも可能なのだ。私は現金を使う。それが私のものの買い方だ。

ストールマン、現金派宣言。また彼はビットコインの気に入らないところとして、容易に脱税に使えるところもあげている。

それならプライバシーに配慮して設計されたビットコインの修正版もあるけどそれはどうかと問われての答え。

まだ確信できない。いずれにしろ、GNU プロジェクトはもっとよいものを開発していて、それが GNU Taler だ。GNU Taler は暗号通貨ではない。通貨とはまったく違う。何か買うのに匿名で企業に支払いをするよう設計されたペイメントシステムだ。ブラインド署名で支払う人は匿名になる。しかし、受取側はシステムからお金を引き出すために購入のたびにそれを識別しなければならない。つまり、Taler Tokens を入手するために銀行口座を利用でき、トークンを使えるが、受取側はそれが誰か分からないということだ。

ストールマンは電子決済システム GNU Taler に多いに期待しているようだ。

taler.net

Facebook の Libra プロジェクトについて水を向けられると、それについては調べていないが、Facebook につながれば、Facebook は監視を行う。Facebook にはユーザはいない。Facebook が人々を利用してるんだ。だからだまされてはいけない。Facebook に利用されるな、とまぁ、予想通りのお答えである。

暗号通貨について何か最近心変わりしたことあります? という質問についても御大はゆるぎない。

私の暗号通貨批判は何も新しいものではない。はじめて見たときからずっとそう感じてきたことだ。今は、私は暗号通貨に反対はしていない。その撲滅キャンペーンをやってるわけではないが、特に利用したいと思わないだけだ。ビットコインソースコードを調べてみた限りでは、まぁ、研究対象としてかなり面白いプログラムだと思うが、やることがありすぎて、好奇心でプログラムのソースコードを研究する時間が私にはない。

やはり暗号通貨全般について懐疑的なようで、上にも書いたようにストールマンを知る人にとってはだいたい予想通りな受け答えではあるが、実際ソースコードを見てみたというのがストールマン先生らしいですな。

ネタ元は Slashdot

プログラミング・ビットコイン

プログラミング・ビットコイン

  • 作者:Jimmy Song
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

はてなブックマークページから大量のブックマークが消える現象が再現していた(解決済み)

yamdas.hatenablog.com

映画『ボヘミアン・ラプソディ』公開時に書いた文章で、とても評判が良かったエントリである。

で、このエントリのはてなブックマークだが、本文執筆時点で 4users である……って、はぁ?

そんなわけはない。今週のはてなブログランキング〔2018年12月第1週〕にランキング入りもしているくらいで、その時点のブックマーク数は 294users である。

さらに Wayback Machine を調べてみると、2019年9月5日時点で、ブックマーク数が 303users なのが分かる。

いったいどうなってんだ? 落ち目の定評があるはてなだから、ユーザ数の減少もあるだろう。意識的にブックマークを外したユーザもいるかもしれない。しかし、10や20じゃなく、およそ300減るなんてべらぼうな話だ。

本件についてははてなに通知済で、6月15日にただいま調査中の報告を受けているが、いまだ回復していない。

そして、先日もっとすごい事例を見つけた。

yamdas.hatenablog.com

これはワタシのブログで最大のはてなブックマーク数を誇るエントリである。いや、「である」でなく「だった」と過去形にすべきだろう。なぜなら、本文執筆時点のはてなブックマーク数は 3users なのだから。

これは壮絶である。このエントリははてなブログランキング 2月17日版で1位に輝いたエントリで、その時点でブックマーク数は 938users だった。それが今は 3users(笑)。

こちらも Wayback Machine を調べると、2019年4月10日時点で 951users である。見る影もないとはこのことである。

このエントリは前述の通り、ワタシのブログの中で最大のはてなブックマース数だったから気づいたが、同じように数百単位でブックマークが消える現象が他のエントリについても起こっているかもしれない。もちろんワタシ以外のユーザの皆さんにも。

はてなブックマーク数が多かろうが少なかろうがどうでもいいともいえる。数が多かったらワタシにお金が入るわけでもないし、逆にそれが激減したからといって、それに応じて読者の数が激減するわけでもないだろう。

しかし、(ワタシは利用していないが)ブログのサイドバーにそのブログにおけるはてなブックマークの人気エントリを表示させているユーザがいる。そのブログにとって代表作といえるエントリがそこにあるべきなのになかったら、はてなはユーザに損害を与えていると言えないか。

少し前にもはてなブログからのはてなダイアリーへのリンクの飛び先がおかしい現象はてなブログで asin 記法が正しく機能していないところがある話を報告させてもらったが、不具合でははてなブックマークも負けていないのかもしれない。

今のはてなの技術陣にこの問題の解決は期待できないが、現象の再現を見つけたので良い機会としてブログでとりあげさせてもらう。

さて、以上とは関係ないが、はてなの創業者のことをボロクソに書いた文章を含む電子書籍『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も絶賛発売中ですのでよろしくお願いします。

[2020年08月18日追記]:本エントリのブックマークページを見ると明らかに間違ったことを書いている人がいるので念のため。本ブログがはてなダイアリーからはてなブログに移行したのは2019年1月のことで、その時点から HTTPS 対応にしていたと記憶する。上で例に出した2つのエントリとも、2019年秋の時点で(HTTPSの)はてなブログの URL にちゃんとブックマークが付いており、それ以降のいずれかの時点ではてなブックマークが消えて(正確にははてなダイアリーのほうに戻って)いる。ダイアリー→ブログの移行、HTTPS 化の対応のいずれも本現象には関係ない(関係しているなら、この現象が他の2018年以前のエントリにも軒並み発生しているはずである)。

[2020年08月20日追記]はてなサポートより修正対応を行った旨のメールをいただいた。本エントリにおいて例として出した二つともブックマーク数は元に戻っている。

ルー・リードが(なぜか少し上機嫌に)ジャーナリストを「最底辺の生き物」と断言する恐怖のインタビュー動画

faroutmagazine.co.uk

この Far Out Magazine は、ファンがいるのかルー・リードのちょっと面白い話や過去映像をよく引っ張り出してくるのだが、これはケッサクだった。

彼のジャーナリストに対する当たりの強さは有名で、血祭りにされた人も数多い。

ルーの「おい、ちゃんと注意して聞けよ!」という威圧に満ちた第一声で始まる2000年に行われたこのテレビインタビューも、最高度のホラーインタビューである。が、このインタビューが面白いのは、ルー自身が機嫌を害することなく状況を楽しんでいるところである。

この動画、実際のルー・リードのインタビュー映像と、スウェーデン人インタビュアーの回想が交互に入るのだが、インタビュアーがひきつった顔でまず言うのが「このインタビュー映像を見直せるまで何年もかかりました」というのに苦笑い。もはや PTSD の域だ。

ぼくは極度に緊張していました。脚が震えていました。吐きそうでした。

実はこのインタビュー、インタビュアーがルー・リードのことを何も知らない22歳の若造だったのだ。

有名人にホテルの部屋でインタビューするのは、このときが初めてだったんです。

ルーも、当時関わっていたロバート・ウィルソンのミュージカル「タイムロッカー」の話をして、「ロバート・ウィルソン知ってるよな?」と問いかけ、「いえ、知りません」の即答に少し「えっ?」という顔になってるのがおかしい。

最悪でした。彼の質問への答えはとても短くて、15個くらい質問を用意していったんですが、すぐに尽きちゃったんです。彼の質問への答え方はまるで感嘆符でした。

ルー・リードお得意の、質問に対して鉄槌をくだすような答え方が炸裂してたわけだ。

たぶん彼も、よくいる音楽ジャーナリストが来ると予想してたと思うんですよ。ルー・リードのことならなんでも知ってるみたいな。しかし、現実は彼のことを何も知らない22歳の男が、目の前で恐怖に震えているわけです。

当然ながらインタビューは終始かみあわないのだが、この日はルー親父の機嫌がよかったのか、彼なりの辛辣なユーモアをまじえながら(でも、インタビュアーにはほとんど通じていない)その状況を楽しんでいる気配がある。

突然、彼の方がぼくに質問を始めたんです! ぼくの英語はあまり達者じゃありませんし、こっちは用意していった質問で手一杯でした。でも、彼は気ままに話し出すんです!

インタビュアーを見切ると彼の方から質問を繰り出す、というのも彼らしい血祭りの流儀である。そして、目の前の恐怖に震える若造が本当にジャーナリストとして未経験なのを聞き出すのである。

ぼくがその時願ったのは……このインタビューが終わってくれということでした。ジャーナリストなら、ルー・リードに半時間でもインタビューしたいと思うものでしょうが、あの時のぼくには実に時間が長く、何時間にも感じました。まるで時が止まってしまったかのような。

インタビューのクライマックスで、ルー・リードはインタビュアーの目をじーっと見据えたまま、「俺はジャーナリストが好きじゃない。軽蔑してるよ。とてもむかつく存在だ。キミは例外だが。キミは、例外だ。主にイギリス人。あいつらは豚だ」と言葉のハンマーを振り下ろす。そして、その後のやり取りの中で、この動画のタイトルにもなっている「最底辺の生き物」とジャーナリストを呼んでいる。ルー・リード、ここにあり。

15分くらいして、彼はぼくのことを好きになり始めたんじゃないかと思います。でも、その頃にはぼくは完全にズタボロ状態で、それに反応できなくなってました。

早くインタビューを終わらせたくて、もう質問はありませんと言うと、ルー・リードは呆れた感じで笑い出している。前に引用した言葉でも「キミは例外だ」と言っているように(もちろん皮肉込みだろうが)、インタビューとしてのひどさにもかかわらず、この若者のことを結構気に入っていたようだ。

しまいには、インタビューを終わらせたくて、ぼくはただ「はい、はい」と言い続けました。とにかくその場を立ち去りたかったんです。

このインタビュアーの方、回想しながらも表情がとにかく辛そうで、失礼ながらそれもまたいとおかし。

ルー・リードというと『New York』のデラックスエディションが来月出る。ワタシの人生航路にすら影響を与えたアルバムなので、思わず買おうかと前のめりになったが、LP は再生環境を持たないため、場所の無駄だよなと思い直した。CD+DVD だけだったら買っただろうな。

New York

New York

  • アーティスト:Lou Reed
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: CD

NEW YORK (デラックス・エディション)

NEW YORK (デラックス・エディション)

映画『2001年宇宙の旅』のラストを自宅で再現した『2020年隔離の旅』が面白い

ニューヨークのデザイナー Lydia Cambron が、映画『2001年宇宙の旅』のラストを自宅で(!)再現した 2020: an isolation odyssey が良かった。

まぁ、見てくださいな。12分の動画だが、実質8分である。

これはお見事。これもコロナ時代ならではの試みだけど、個人的には Zoom 演劇なんかよりこういうののほうが楽しい。

ネタ元は kottke.org

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その34

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、著者としては Kindle 版へのリアクションが多かったのを意外に感じた。

達人出版会高橋征義さんから Kindle 版を準備していることを最初聞いたときは、それが意味することに密かにおののいたものだが、それは別として正直意味あるの? と思ったところもある。

だって、達人出版会のゆるい DRM電子書籍さえあれば十分だと思っていたから。それに達人出版会で購入した電子書籍Kindle にもっていって読むも可能なんだから。

しかし、ワタシは間違っていた。Kindle 版公開をアナウンスすると、Kindle だから買ったという声をいくつか目にした。ワンクリックで決済と電子書籍のダウンロードが完了するのはそれだけ大きなことなのだろう。Amazon は強し、の思いを強くした。

これを機にもう少しこの本についての感想や書評を読めればいいのだけど。

やはり著者としては長く楽しんでいただけるように、分量を多く詰め込みたいとどうしても思ってしまうのだけど、それも良し悪しということだろうか。

収録章を少し絞り込んだ特別版もありますよ!(そういう話じゃない)

そうそう、そういえば特別版といえば、これについて Google ブックスにページができていた。Kindle 版とは違った意味で、紙版も重要ということだろう。

ホワイトボードでのコーディング面接を行わない企業リスト

www.theregister.com

「コーディングの自動化とプログラミングの未来について」でもちょこっと触れた話だけど、テック企業の入社面接で行われるホワイトボードを使ったコーディング面接は、候補者の技術スキルを測るのに失敗しており、特に女性の候補者に心理的ストレスを与えているという論文を取り上げた記事である。

こういう記事が出るということは、逆に言うとホワイトボード面接がそれだけ広く行われていることの裏返しだろう。そういう面接で解かされた問題を集めた LeetCode という有名サイトもあるくらいである。

github.com

そういう LeetCode をホワイトボードに書かせたり、CS 分野のトリビアやなぞなぞみたいな質問をしない企業のリストが Hacker News で話題になっていた(が、最初にリストが立ち上げられたのは2017年)。

これを作ったのは Lauren Tan という現在 Facebook でソフトウェアエンジニアをやっている方で、これを彼女が立ち上げようと思ったのも、ホワイトボード面接は女性の候補者に心理的ストレスを与えているという上で取り上げた話を実地で感じていたからだろうか。

一時期やはりテック企業の面接でもてはやされた「シカゴに何人のピアノ調律師がいるか?」みたいなクイズみたいな質問は(フェルミ推定ができるか問うてたらしい)、『ビル・ゲイツの面接試験』(asin:4791760468)によって日本にも輸入されたが、今では少なくとも海外では「意味ない」という評価でやられていないと何かで読んだ覚えがある。

一方でホワイトボードのコーディング面接は、そう簡単にはなくならないと思うが、候補者の技術スキルを測るより良い方法も研究されているはずである。

マーティン・フォードがAI分野の重要人物へのインタビューをまとめた『人工知能のアーキテクトたち ―AIを築き上げた人々が語るその真実』が出る

makezine.jp

2018年末に紹介した『テクノロジーが雇用の75%を奪う』や『ロボットの脅威』で知られるマーティン・フォードがAI分野の重要人物へのインタビューをまとめた本だが、『人工知能のアーキテクトたち AIを築き上げた人々が語るその真実』として邦訳が出るのを知る。

版元はオライリー・ジャパンだし、日本におけるこの分野の第一人者である松尾豊教授が監訳なのだから、これは安心して読めますね。

誰がインタビューイーとして登場するかは渡辺遼遠さんの書評に詳しい。少し前に「AIの差別をめぐり“AIのゴッドファーザー”が炎上し、ツイッターをやめる」と報じられた「AIのゴッドファーザー」ヤン・ルカンも当然入っている。

『ガイジン・クックブック』という異色の日本料理本

Talks at GoogleThe Gaijin Cookbook なる講演を知り、これは面白そうだと思った。

この講演を行っている Chris Ying は「料理界のアカデミー賞」ジェームズ・ビアード財団賞の最優秀刊行物賞も受賞したことがある料理本の書き手であり、上の講演では料理の実演もやっている。

その彼が、日本にも店舗があった「アイバンラーメン(Ivan Ramen)」の創業者であり、『アイバンのラーメン』(asin:4898152481)の邦訳もあるアイバン・オーキンと組んで執筆したのが講演名と同名の新刊というわけ。

和食については「日本食警察」みたいなテレビ番組を前にみてゲンナリしたことがあったが、海外に出るにあたって当地で受けるようにアレンジが加わるのは当然のことだ。「ガイジン・クックブック」を受け入れる度量は当然あってよいとワタシは思いますね。

スケートボードフリースタイル世界チャンピオンの山本勇がすごい

kottke.org

恥ずかしながら、プロスケーターの山本勇さんのことをこのエントリで初めて知った。

ワタシはスケボーとまったく縁のない人生を送ってきて、これからもそうだろうが、それでも山本勇さんの動画を見て、これはすごい、と素直に感動してしまう。

これの後半にも出てくるが、こういう動画を撮影するのも大変よね。

彼のキャリアについては、バンタンデザイン研究所高等部の在校生インタビューに詳しいが、こんなに若いのに世界で活躍なんて素晴らしい話じゃない。

しかし、Wikipedia を調べたら、英語版にページはあるが、日本語版にはない。ダメだなぁ。

山本勇さんはスケートボード界、特に特にフリースタイルスケートの神様的存在であるロドニー・ミューレンからも賛辞を得ているが、いつか彼のように本が出るといいね。

ザ・マット

ザ・マット

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