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高須正和、高口康太編著『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』を恵贈いただいたので感想を書いておく

高須正和さんから『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』を恵贈いただき、夏季休暇中に読み終わった。

高須正和さんの仕事としては、2018年の『世界ハッカースペースガイド』『ハードウェアハッカー』に続く本になる。またもう一人の編著者である高口康太さんの本では、昨年の『幸福な監視国家・中国』が(少なからぬ反発を感じながらも)とても優れた本でしたね。

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)

さて、今回は「プロトタイプシティ」というタイトルが実によくて、「〇〇シティ」のようなネーミングで最初に浮かぶのは「スマートシティ」だけど、かつてスーザン・クロフォードが「スマートシティ」という言葉にポストヒューマニスト的な、過度に単純化され非人間的なイメージがあるため批判的で、「Responsive City(反応が良い都市)」という言葉を書名に掲げたのを思い出す。

本書で語られるのは、とにかくたくさん手早くプロトタイプを(コードすべて書き換えになることも半ば見越したうえで)作ってみてから、その中でうまくいくものを育てていく、「まずは手を動かす」人が集まる文化が根本にある都市深圳についてよく語られており、そこに身を置いてずっとニコ技深圳コミュニティを主導してきた高須正和さんの仕事の集大成になっているように思う。

本書の最初に掲げられる「非連続的価値創造」としてのプロトタイプ駆動の定義は、もしクレイトン・クリステンセンが存命で、新たに『イノベーションのジレンマ』の続編を書くとしたら採用される話に思ったし、6段階に分けて語られるプロトタイプ駆動の流れも分かりやすかった。

また、ウォーターフォールではもちろんないし、しかしアジャイルでもない、拡張性も保守性もほとんど考慮することなくとにかく作って、その後で有望そうなものに集中して作り直すという「アドホックモデル」の解説にも、日本企業はそれできんよなと思わさせれながらも納得させられた。が、それを支える「安全な公園」の話でiモードの話が引き合いに出されるように、日本企業だってチャレンジの余地はあるはずなのだけど。

そうした意味で日本企業に属する人間にとって耳に痛い話が多いのは確かである。「プレモダン」「モダン」「ポストモダン」の文脈をある意味都合よく利用する中国企業の話など、虫のよい理論というかさすがにそこは学べないと思ってしまうところもあるのだけど、それが可能にしているダイナミズムを本書がよく表現しているのは間違いない。

第四章「次のプロトタイプシティ」はニューズウィーク日本版のサイトに転載されていて(前編後編)、自由闊達だったメディアも管理と支配の向かうというティム・ウーの『マスタースイッチ』理論が都市にも当てはまるのか(これは明らかに誤用に近い連想なのだけど)、イノベーティブだった都市がそうでなくなるサイクルというか条件があるのかが気になったので、オンラインイベントで質問させてもらったが、そのあたりの中国人のしたたかさについては第四章以外にもいろいろ記述がある。それはそうと、今年出るらしいマシュー・ハインドマン『インターネットのわな(仮)』の邦訳はなかなか暗そうで楽しみだ。

第五章「プロトタイプシティ時代の戦い方」は、ナオミ・ウーさん(セクシー・サイボーグ)と GOROman さんのインタビューだが、いずれも実践者として新しい仕事を自ら作り出したという自負を感じさせる証言で、この本が若い世代に届いてこれに力づけられるといいなと思った。「日本企業の意思決定の遅さ」の話は定番だが、ナオミ・ウーさんが語るそれとはまったく違った理由で中国企業も意思決定が遅いという話に、そういうものなのかと興味深かった。

上にも書いたように、本書は深圳を面白がりコミットしてきた高須正和さんの集大成と言える本であり、ワタシも一読をお勧めします。

リチャード・ストールマン御大が自由、プライバシー、暗号通貨について語るインタビュー(の暗号通貨に関するところだけピックアップ)

cointelegraph.com
日本語版には翻訳ないみたい。

リチャード・ストールマン御大が暗号通貨、デジタル通貨について語っているのは珍しいと思うので、その方面についての発言をざっとピックアップしておきたい。誤訳があったら指摘してください。

まず(中国の)中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)について。

デジタルペイメントシステムは、プライバシーを守るべく設計されないと根本的に危険だ。中国はプライバシーの敵だよ。中国は全体主義の監視がどんなものかを体現している。私にはこの世の地獄に思える。そこの暗号通貨を私が使わない理由の一部にはそれがある。暗号通貨が政府により発行されると、それはまさにクレジットカードや PayPal なんかがやっているように国民を監視することになるし、それはまったく受け入れられない。

暗号通貨を個人で使ったことがあるかを聞かれての答え。

答えはノーだ。私はいかなる種類のデジタルペイメントも使わないが、システムがユーザのプライバシーを尊重しないのがその理由で、ビットコインもそれに含まれる。あらゆるビットコインの取引は公開される。最初は私に紐づくウォレットが気づかれないかもしれないが、私が何度か取引に使えば、それが私のだと見当をつけるのも可能になる。十分に情報を集めれば、それも可能なのだ。私は現金を使う。それが私のものの買い方だ。

ストールマン、現金派宣言。また彼はビットコインの気に入らないところとして、容易に脱税に使えるところもあげている。

それならプライバシーに配慮して設計されたビットコインの修正版もあるけどそれはどうかと問われての答え。

まだ確信できない。いずれにしろ、GNU プロジェクトはもっとよいものを開発していて、それが GNU Taler だ。GNU Taler は暗号通貨ではない。通貨とはまったく違う。何か買うのに匿名で企業に支払いをするよう設計されたペイメントシステムだ。ブラインド署名で支払う人は匿名になる。しかし、受取側はシステムからお金を引き出すために購入のたびにそれを識別しなければならない。つまり、Taler Tokens を入手するために銀行口座を利用でき、トークンを使えるが、受取側はそれが誰か分からないということだ。

ストールマンは電子決済システム GNU Taler に多いに期待しているようだ。

taler.net

Facebook の Libra プロジェクトについて水を向けられると、それについては調べていないが、Facebook につながれば、Facebook は監視を行う。Facebook にはユーザはいない。Facebook が人々を利用してるんだ。だからだまされてはいけない。Facebook に利用されるな、とまぁ、予想通りのお答えである。

暗号通貨について何か最近心変わりしたことあります? という質問についても御大はゆるぎない。

私の暗号通貨批判は何も新しいものではない。はじめて見たときからずっとそう感じてきたことだ。今は、私は暗号通貨に反対はしていない。その撲滅キャンペーンをやってるわけではないが、特に利用したいと思わないだけだ。ビットコインソースコードを調べてみた限りでは、まぁ、研究対象としてかなり面白いプログラムだと思うが、やることがありすぎて、好奇心でプログラムのソースコードを研究する時間が私にはない。

やはり暗号通貨全般について懐疑的なようで、上にも書いたようにストールマンを知る人にとってはだいたい予想通りな受け答えではあるが、実際ソースコードを見てみたというのがストールマン先生らしいですな。

ネタ元は Slashdot

プログラミング・ビットコイン

プログラミング・ビットコイン

  • 作者:Jimmy Song
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

はてなブックマークページから大量のブックマークが消える現象が再現していた(解決済み)

yamdas.hatenablog.com

映画『ボヘミアン・ラプソディ』公開時に書いた文章で、とても評判が良かったエントリである。

で、このエントリのはてなブックマークだが、本文執筆時点で 4users である……って、はぁ?

そんなわけはない。今週のはてなブログランキング〔2018年12月第1週〕にランキング入りもしているくらいで、その時点のブックマーク数は 294users である。

さらに Wayback Machine を調べてみると、2019年9月5日時点で、ブックマーク数が 303users なのが分かる。

いったいどうなってんだ? 落ち目の定評があるはてなだから、ユーザ数の減少もあるだろう。意識的にブックマークを外したユーザもいるかもしれない。しかし、10や20じゃなく、およそ300減るなんてべらぼうな話だ。

本件についてははてなに通知済で、6月15日にただいま調査中の報告を受けているが、いまだ回復していない。

そして、先日もっとすごい事例を見つけた。

yamdas.hatenablog.com

これはワタシのブログで最大のはてなブックマーク数を誇るエントリである。いや、「である」でなく「だった」と過去形にすべきだろう。なぜなら、本文執筆時点のはてなブックマーク数は 3users なのだから。

これは壮絶である。このエントリははてなブログランキング 2月17日版で1位に輝いたエントリで、その時点でブックマーク数は 938users だった。それが今は 3users(笑)。

こちらも Wayback Machine を調べると、2019年4月10日時点で 951users である。見る影もないとはこのことである。

このエントリは前述の通り、ワタシのブログの中で最大のはてなブックマース数だったから気づいたが、同じように数百単位でブックマークが消える現象が他のエントリについても起こっているかもしれない。もちろんワタシ以外のユーザの皆さんにも。

はてなブックマーク数が多かろうが少なかろうがどうでもいいともいえる。数が多かったらワタシにお金が入るわけでもないし、逆にそれが激減したからといって、それに応じて読者の数が激減するわけでもないだろう。

しかし、(ワタシは利用していないが)ブログのサイドバーにそのブログにおけるはてなブックマークの人気エントリを表示させているユーザがいる。そのブログにとって代表作といえるエントリがそこにあるべきなのになかったら、はてなはユーザに損害を与えていると言えないか。

少し前にもはてなブログからのはてなダイアリーへのリンクの飛び先がおかしい現象はてなブログで asin 記法が正しく機能していないところがある話を報告させてもらったが、不具合でははてなブックマークも負けていないのかもしれない。

今のはてなの技術陣にこの問題の解決は期待できないが、現象の再現を見つけたので良い機会としてブログでとりあげさせてもらう。

さて、以上とは関係ないが、はてなの創業者のことをボロクソに書いた文章を含む電子書籍『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も絶賛発売中ですのでよろしくお願いします。

[2020年08月18日追記]:本エントリのブックマークページを見ると明らかに間違ったことを書いている人がいるので念のため。本ブログがはてなダイアリーからはてなブログに移行したのは2019年1月のことで、その時点から HTTPS 対応にしていたと記憶する。上で例に出した2つのエントリとも、2019年秋の時点で(HTTPSの)はてなブログの URL にちゃんとブックマークが付いており、それ以降のいずれかの時点ではてなブックマークが消えて(正確にははてなダイアリーのほうに戻って)いる。ダイアリー→ブログの移行、HTTPS 化の対応のいずれも本現象には関係ない(関係しているなら、この現象が他の2018年以前のエントリにも軒並み発生しているはずである)。

[2020年08月20日追記]はてなサポートより修正対応を行った旨のメールをいただいた。本エントリにおいて例として出した二つともブックマーク数は元に戻っている。

ルー・リードが(なぜか少し上機嫌に)ジャーナリストを「最底辺の生き物」と断言する恐怖のインタビュー動画

faroutmagazine.co.uk

この Far Out Magazine は、ファンがいるのかルー・リードのちょっと面白い話や過去映像をよく引っ張り出してくるのだが、これはケッサクだった。

彼のジャーナリストに対する当たりの強さは有名で、血祭りにされた人も数多い。

ルーの「おい、ちゃんと注意して聞けよ!」という威圧に満ちた第一声で始まる2000年に行われたこのテレビインタビューも、最高度のホラーインタビューである。が、このインタビューが面白いのは、ルー自身が機嫌を害することなく状況を楽しんでいるところである。

この動画、実際のルー・リードのインタビュー映像と、スウェーデン人インタビュアーの回想が交互に入るのだが、インタビュアーがひきつった顔でまず言うのが「このインタビュー映像を見直せるまで何年もかかりました」というのに苦笑い。もはや PTSD の域だ。

ぼくは極度に緊張していました。脚が震えていました。吐きそうでした。

実はこのインタビュー、インタビュアーがルー・リードのことを何も知らない22歳の若造だったのだ。

有名人にホテルの部屋でインタビューするのは、このときが初めてだったんです。

ルーも、当時関わっていたロバート・ウィルソンのミュージカル「タイムロッカー」の話をして、「ロバート・ウィルソン知ってるよな?」と問いかけ、「いえ、知りません」の即答に少し「えっ?」という顔になってるのがおかしい。

最悪でした。彼の質問への答えはとても短くて、15個くらい質問を用意していったんですが、すぐに尽きちゃったんです。彼の質問への答え方はまるで感嘆符でした。

ルー・リードお得意の、質問に対して鉄槌をくだすような答え方が炸裂してたわけだ。

たぶん彼も、よくいる音楽ジャーナリストが来ると予想してたと思うんですよ。ルー・リードのことならなんでも知ってるみたいな。しかし、現実は彼のことを何も知らない22歳の男が、目の前で恐怖に震えているわけです。

当然ながらインタビューは終始かみあわないのだが、この日はルー親父の機嫌がよかったのか、彼なりの辛辣なユーモアをまじえながら(でも、インタビュアーにはほとんど通じていない)その状況を楽しんでいる気配がある。

突然、彼の方がぼくに質問を始めたんです! ぼくの英語はあまり達者じゃありませんし、こっちは用意していった質問で手一杯でした。でも、彼は気ままに話し出すんです!

インタビュアーを見切ると彼の方から質問を繰り出す、というのも彼らしい血祭りの流儀である。そして、目の前の恐怖に震える若造が本当にジャーナリストとして未経験なのを聞き出すのである。

ぼくがその時願ったのは……このインタビューが終わってくれということでした。ジャーナリストなら、ルー・リードに半時間でもインタビューしたいと思うものでしょうが、あの時のぼくには実に時間が長く、何時間にも感じました。まるで時が止まってしまったかのような。

インタビューのクライマックスで、ルー・リードはインタビュアーの目をじーっと見据えたまま、「俺はジャーナリストが好きじゃない。軽蔑してるよ。とてもむかつく存在だ。キミは例外だが。キミは、例外だ。主にイギリス人。あいつらは豚だ」と言葉のハンマーを振り下ろす。そして、その後のやり取りの中で、この動画のタイトルにもなっている「最底辺の生き物」とジャーナリストを呼んでいる。ルー・リード、ここにあり。

15分くらいして、彼はぼくのことを好きになり始めたんじゃないかと思います。でも、その頃にはぼくは完全にズタボロ状態で、それに反応できなくなってました。

早くインタビューを終わらせたくて、もう質問はありませんと言うと、ルー・リードは呆れた感じで笑い出している。前に引用した言葉でも「キミは例外だ」と言っているように(もちろん皮肉込みだろうが)、インタビューとしてのひどさにもかかわらず、この若者のことを結構気に入っていたようだ。

しまいには、インタビューを終わらせたくて、ぼくはただ「はい、はい」と言い続けました。とにかくその場を立ち去りたかったんです。

このインタビュアーの方、回想しながらも表情がとにかく辛そうで、失礼ながらそれもまたいとおかし。

ルー・リードというと『New York』のデラックスエディションが来月出る。ワタシの人生航路にすら影響を与えたアルバムなので、思わず買おうかと前のめりになったが、LP は再生環境を持たないため、場所の無駄だよなと思い直した。CD+DVD だけだったら買っただろうな。

New York

New York

  • アーティスト:Lou Reed
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: CD

NEW YORK (デラックス・エディション)

NEW YORK (デラックス・エディション)

映画『2001年宇宙の旅』のラストを自宅で再現した『2020年隔離の旅』が面白い

ニューヨークのデザイナー Lydia Cambron が、映画『2001年宇宙の旅』のラストを自宅で(!)再現した 2020: an isolation odyssey が良かった。

まぁ、見てくださいな。12分の動画だが、実質8分である。

これはお見事。これもコロナ時代ならではの試みだけど、個人的には Zoom 演劇なんかよりこういうののほうが楽しい。

ネタ元は kottke.org

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その34

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、著者としては Kindle 版へのリアクションが多かったのを意外に感じた。

達人出版会高橋征義さんから Kindle 版を準備していることを最初聞いたときは、それが意味することに密かにおののいたものだが、それは別として正直意味あるの? と思ったところもある。

だって、達人出版会のゆるい DRM電子書籍さえあれば十分だと思っていたから。それに達人出版会で購入した電子書籍Kindle にもっていって読むも可能なんだから。

しかし、ワタシは間違っていた。Kindle 版公開をアナウンスすると、Kindle だから買ったという声をいくつか目にした。ワンクリックで決済と電子書籍のダウンロードが完了するのはそれだけ大きなことなのだろう。Amazon は強し、の思いを強くした。

これを機にもう少しこの本についての感想や書評を読めればいいのだけど。

やはり著者としては長く楽しんでいただけるように、分量を多く詰め込みたいとどうしても思ってしまうのだけど、それも良し悪しということだろうか。

収録章を少し絞り込んだ特別版もありますよ!(そういう話じゃない)

そうそう、そういえば特別版といえば、これについて Google ブックスにページができていた。Kindle 版とは違った意味で、紙版も重要ということだろう。

ホワイトボードでのコーディング面接を行わない企業リスト

www.theregister.com

「コーディングの自動化とプログラミングの未来について」でもちょこっと触れた話だけど、テック企業の入社面接で行われるホワイトボードを使ったコーディング面接は、候補者の技術スキルを測るのに失敗しており、特に女性の候補者に心理的ストレスを与えているという論文を取り上げた記事である。

こういう記事が出るということは、逆に言うとホワイトボード面接がそれだけ広く行われていることの裏返しだろう。そういう面接で解かされた問題を集めた LeetCode という有名サイトもあるくらいである。

github.com

そういう LeetCode をホワイトボードに書かせたり、CS 分野のトリビアやなぞなぞみたいな質問をしない企業のリストが Hacker News で話題になっていた(が、最初にリストが立ち上げられたのは2017年)。

これを作ったのは Lauren Tan という現在 Facebook でソフトウェアエンジニアをやっている方で、これを彼女が立ち上げようと思ったのも、ホワイトボード面接は女性の候補者に心理的ストレスを与えているという上で取り上げた話を実地で感じていたからだろうか。

一時期やはりテック企業の面接でもてはやされた「シカゴに何人のピアノ調律師がいるか?」みたいなクイズみたいな質問は(フェルミ推定ができるか問うてたらしい)、『ビル・ゲイツの面接試験』(asin:4791760468)によって日本にも輸入されたが、今では少なくとも海外では「意味ない」という評価でやられていないと何かで読んだ覚えがある。

一方でホワイトボードのコーディング面接は、そう簡単にはなくならないと思うが、候補者の技術スキルを測るより良い方法も研究されているはずである。

マーティン・フォードがAI分野の重要人物へのインタビューをまとめた『人工知能のアーキテクトたち ―AIを築き上げた人々が語るその真実』が出る

makezine.jp

2018年末に紹介した『テクノロジーが雇用の75%を奪う』や『ロボットの脅威』で知られるマーティン・フォードがAI分野の重要人物へのインタビューをまとめた本だが、『人工知能のアーキテクトたち AIを築き上げた人々が語るその真実』として邦訳が出るのを知る。

版元はオライリー・ジャパンだし、日本におけるこの分野の第一人者である松尾豊教授が監訳なのだから、これは安心して読めますね。

誰がインタビューイーとして登場するかは渡辺遼遠さんの書評に詳しい。少し前に「AIの差別をめぐり“AIのゴッドファーザー”が炎上し、ツイッターをやめる」と報じられた「AIのゴッドファーザー」ヤン・ルカンも当然入っている。

『ガイジン・クックブック』という異色の日本料理本

Talks at GoogleThe Gaijin Cookbook なる講演を知り、これは面白そうだと思った。

この講演を行っている Chris Ying は「料理界のアカデミー賞」ジェームズ・ビアード財団賞の最優秀刊行物賞も受賞したことがある料理本の書き手であり、上の講演では料理の実演もやっている。

その彼が、日本にも店舗があった「アイバンラーメン(Ivan Ramen)」の創業者であり、『アイバンのラーメン』(asin:4898152481)の邦訳もあるアイバン・オーキンと組んで執筆したのが講演名と同名の新刊というわけ。

和食については「日本食警察」みたいなテレビ番組を前にみてゲンナリしたことがあったが、海外に出るにあたって当地で受けるようにアレンジが加わるのは当然のことだ。「ガイジン・クックブック」を受け入れる度量は当然あってよいとワタシは思いますね。

スケートボードフリースタイル世界チャンピオンの山本勇がすごい

kottke.org

恥ずかしながら、プロスケーターの山本勇さんのことをこのエントリで初めて知った。

ワタシはスケボーとまったく縁のない人生を送ってきて、これからもそうだろうが、それでも山本勇さんの動画を見て、これはすごい、と素直に感動してしまう。

これの後半にも出てくるが、こういう動画を撮影するのも大変よね。

彼のキャリアについては、バンタンデザイン研究所高等部の在校生インタビューに詳しいが、こんなに若いのに世界で活躍なんて素晴らしい話じゃない。

しかし、Wikipedia を調べたら、英語版にページはあるが、日本語版にはない。ダメだなぁ。

山本勇さんはスケートボード界、特に特にフリースタイルスケートの神様的存在であるロドニー・ミューレンからも賛辞を得ているが、いつか彼のように本が出るといいね。

ザ・マット

ザ・マット

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』最新版公開&Kindle版公開!&特別版(紙版)セール

達人出版会において『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のバージョン1.1.2が公開。サポートページにも反映。

そして驚くことに、Kindle 版、つまり Amazon での販売を開始した!

達人出版会オリジナルの電子書籍で、Kindle 版も販売するのは、当然ながら本書が初である。価格は達人出版会で購入するのと同じ770円、ということは……(以下略)

そして、そして、2018年の「技術書典5」において販売した特別版(紙版)も、今回の公開にあわせて30%値引きの700円に値引きしたセールを行っている。

ただしこのセール期間は7月27日までだったと思うし、残り部数は少ないので、売切れたらセールも終了なのを了解いただきたい。

昨年のバージョン1.1.1公開時に(おそらく)最終版と書いたが、なぜかこの期に及んで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて』祭状態である。ただし、今回の更新内容は文中のリンク切れへの対応だけである。のだが、結構その数が多くてバカにならない(悲しいことだ)。

かくして、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』は、達人出版会本家版、技術書典5特別版に加えて Kindle 版まで発売されたわけである。これにはワタシ自身が驚いている。

ただ実はこの3つのバージョンは微妙に内容が異なる。具体的には、収録章数、そしてある人を泣かせ、ある人を呆然とさせたボーナスのエッセイ「グッドバイ・ルック」の収録などだが、せっかくなので現時点での表を作ってみた。

バージョン 収録章数 ボーナストラック 価格(税込)
達人出版会本家版 50 770円
Kindle 50 × 770円
技術書典5特別版 42 × 700円

(ただし、技術書典5特別版の価格はセール中のみ、送料などは各サイト参照)

ややこしいことになってしまったが、達人出版会で購入できるものが正典であり、すべてを含んでおり最新である。ワタシとしては、これまで通り達人出版会での購入をお勧めするが、読者の事情に応じてプラットフォームを選択いただければと思う。

そうですね、Kindle版や紙版を購入された方で、ボーナスのエッセイ「グッドバイ・ルック」を読みたい方は、購入されたものの写真かキャプチャ画像をメールでワタシに送ってくれたらファイルを送付しますよ。

もっともパワフルで拡張性のあるオープンソースWikiソフトウェアを謳うWiki.js

wiki.js.org

Hacker NewsFour short links で話題になっているので Wiki.js を知り、すわ Wiki の新星か! と思ったら、ワタシが知らないだけで2017年には公開されていたんだね(逆に言うと、なんで今頃海外で話題になったんだろう?)。

Node.js 製で、以前は MongoDB がある環境が求められていたようだが、今公式サイトを見ると Install anywhere をうたっており、ざっと日本語で書かれたウェブページを見ると、Docker 環境で Markdown 記法のファイルをまとめるのに使われているのが多いみたい。

インストールも最初にプラットフォームを選択すると、それごとの導入手順がかっちり書かれたページに飛ぶしかけで、このあたり今どきなんでしょうね。そのデモ兼ドキュメントサイトが充実している。

しかし、およそ半年前に Outline を紹介したときも思ったが、Wiki ソフトウェアが単独で話題になるのは今どき珍しい。

ライセンスはGNUアフェロ一般公衆ライセンス(v3)とな。

トランプ再選阻止を目指し、アメリカで注目を集める「リンカーン・プロジェクト」の動画

lincolnproject.us

Boing BoingScripting News といった書き手がリベラルのブログで Lincoln Project(の動画)が取り上げられるのを何度も目にし、これなんだろうと調べたが、日本のネットメディアでこれを取り上げているのは海野素央明治大学教授の文章くらいだった。

wedge.ismedia.jp

wedge.ismedia.jp

面白いのは、この「リンカーン・プロジェクト」をやっているのが反トランプな共和党員なことで、リンカーンの名前を持ち出すのも、リンカーン共和党の大統領やでという自負からである。

 リンカーン・プロジェクトは2019年12月に発足し、20年第1四半期(1~3月)に250万ドル(約2億6900万円)の献金を得ました。民主党系のスーパーPAC「プライオリティーズUSAアクション」と比較すると小規模ですが、注目度はかなり高いです。というのは、同プロジェクトはミッションに、「選挙でトランプ大統領とトランプ主義を破ること」と明記したからです。

 リンカーン・プロジェクトは南北戦争による分断の危機を乗り越えたエブラハム・リンカーン元大統領を理想の大統領として位置づけています。これに対して、トランプ大統領リンカーン元大統領とは対照的で、分断を促進する大統領であると捉えています。

ついに身内から、しかも得意技で〝攻撃〟を受け始めたトランプ WEDGE Infinity(ウェッジ)

リンカーン・プロジェクトがよいのは、YouTube チャンネルでほぼ毎日新作が公開される動画がなかなかに巧みなことで、ありがたいことにどれも1分前後、長くても2分程度なので、字幕をつければ日本人でもだいぶついていける。

もちろん動画の主張はどれも強烈な反トランプなので、それが我慢ならない人にはお勧めできない。

最近もっとも激烈だったのは、トランプが言う「法と秩序(Law and Order)」をタイトルに掲げながら、いかにトランプ陣営の人間が重罪人だらけかを訴える動画かな。

その虚言癖やら大統領選で敗けてもホワイトハウスに居座ることを示唆して多くの人を呆れさせた(でもその感覚をちゃんと伝える日本のメディアがやはりない)、こないだの FOX ニュースのクリス・ウォレスとのインタビューもすかさず「となりのサインフェルド」風の動画にされている。

しかしなぁ、ジョー・バイデンもなんとも頼りなくて、いつヘマをやらかさないか知ったものではなく、大統領選挙のゆくえが読めないんだよな(そもそも選挙自体が成立するのかというところから)。

さて、ドナルド・トランプというと姪メアリーによる暴露本も各所で話題だが(参考:洋書ファンクラブJapan In-depth)、邦訳はいつ出るんでしょうな。

本当に巨大テック企業は哲学者を雇っていたのか

ix-careercompass.jp

昨年ワタシは「テック企業が哲学者を雇うべき理由 あるいは(バイトテロの無知がもたらす予期せぬ教育的効果)」というエントリを書いているが、GoogleAppleFacebook といった巨大テック企業は本当に哲学者を雇っていたんだね。

世界的には「哲学コンサルティング」の導入が急速に広がっています。哲学コンサルティングとは、哲学的な知見や思考法、態度や対話をなんらかの仕方でビジネスや組織運営に応用することを指します。

グーグル、アップル、フェイスブック・・・ 世界的企業がこぞって「哲学者」を雇う理由 | iXキャリアコンパス

欧米と日本の「哲学コンサルティング」の利用の違いはなんか分かる気がする。

欧米の哲学コンサルティングには企業・経営理念の構築や根拠づけ、倫理規定・コンプライアンス策定といった経営レベルのものが多いのに対して、日本の場合はコンセプトメイキングやマーケティングリサーチ、アイデアワーク、人材育成・社員研修など、もう少し実用レベル、プロジェクトレベルの依頼を受けることが多いです。

グーグル、アップル、フェイスブック・・・ 世界的企業がこぞって「哲学者」を雇う理由 | iXキャリアコンパス

今はとにかく実学重視が世の趨勢だが、「哲学」はそうした価値観で軽視されがちな人文系の最たるものだろう。それが実は企業において重視される時代になるというのは、今の「実学重視」なんてものの底の浅さがわかるようで、ワタシ自身は哲学に関して大した知見があるわけではないのに面白く思ったりする。

「ネタばれ禁止」を本編でお願いする映画はいくつあるのか?

少し前になるが、NHK BSプレミアムで録画しておいたビリー・ワイルダーの『情婦』を観た。

恥ずかしながら、ワタシはビリー・ワイルダーの名作でも観てないものが多いのだけど、BSプレミアムで放送されたものを地道に録画しておくことで、昨年から『アパートの鍵貸します』や『深夜の告白』を観ることができた。いずれも良かったですねぇ。

さて、『情婦』だが、これもまぎれもなく傑作だった。が、邦題サイアクだよな。どう考えても原作の通り『検察側の証人』でよかったろうに。

ただ書きたいのはその話ではない。『情婦』の本編が終わったところで、「お願いがあります。この映画をまだ見られていない方のために、映画の結末は話さないでください」といったナレーションが入る。

観た方ならご存知のように、確かに『情婦』はそういう驚きのある映画なのだけど、もしかするとこの映画は「ネタばれ禁止」を(宣伝でなく)本編でお願いした初の作品になるだろうか?

「ネタばれ禁止」を本編でお願いする映画、ワタシの世代なら真っ先に思い出すのは、1999年M・ナイト・シャマランシックス・センス』における、「この映画にはある秘密があります。まだ映画を見ていない人には、決して話さないで下さい」というブルース・ウィリスからの冒頭のお願いだろう。

でも……そういう映画他にあるんだよね? 『パラサイト 半地下の家族』にもそれに近いお願いがあったと記憶するが、あれは映画本編ではなかった。

まさか映画史上で『情婦』と『シックス・センス』の二作だけというわけはなく、映画初心者のワタシが知らないだけだろうが、「ネタばれ禁止」を本編でお願いする他に映画をご存知の方は教えていただけないだろうか?

情婦 [DVD]

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  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: DVD

シックス・センス Blu-ray

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