当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その38

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、Amazon 版にまた新しいカスタマレビューが追加されていた。

今回も5つ星でありがたいのだが、Amazon Customer という名前で自作自演を疑われそう(笑)。さすがのワタシもそれをやるまでは落ちぶれてませんので、誤解なきよう。

[追記]:このカスタマレビューの執筆者が名乗り出てくださった。あなただったか!

2020年の今から見れば、2013年というのはインターネットの時間感覚で言えば大昔ということになりますが、内容にほとんど違和感はありません。むしろテクノロジーによる格差拡大、プライバシー、人工知能アルゴリズムに選択を委ねること、巨大企業のインターネット支配と、それらに対する政治や法整備の遅れなど、本書で問題視されている多くのことが今日ますます顕在化していると言えます。今よりもテクノロジーにずっと楽観的であった当時において、こうした諸問題を一早く取り上げた本書の切れ味はとても鋭いのですが、現実にはyomoyomoさんの懸念以上に世の中は悪くなっているのではないか、とさえ思います。

インターネットに対する暗い予言と明るいヒント

悲観的な厭世家のワタシの懸念以上に悪くなった世界……。まぁ、2020年はそういいたくなる年だったわな。

もちろん本書は来たるべき(あるいはそのあと実際に来てしまった)テクノロジーの暗い未来を嘆くだけではなく、個人による情報発信、特にブログに対しては、巨大プラットフォームを打ち破ることはできなくても……という前置きはありつつ、前向きなメッセージが繰り返されます。本書をインターネットにおけるプラットフォーム対個人の物語として読み解くのは単純化が過ぎるかもしれませんが、開かれたウェブを絶滅させないためのヒントはまだあると信じたいです。

インターネットに対する暗い予言と明るいヒント

こう書いていただけて嬉しい。「特にブログに対しては」って、こないだ書いた「ますます「暗い森」になりつつあるインターネットの中で個人ブログを書くことの意味」をどうしても思い出してしまう。

それではまだまだ感想をお待ちしております。今更と言わず、Twitter でつぶやくだけでも結構ですので。

お前も技術的負債にしてやろうか! もしくは技術的負債と和田卓人さんをめぐるシンクロニシティ

みんな大好き、技術的負債の話題である。

t-wada.hatenablog.jp

まずはエチケットペーパーというか議論の前提として、和田卓人さんのブログエントリをはっておく。

技術的負債という概念の生みの親であるウォード・カニンガムの説明を読み直すと、「技術的負債」という言葉の一般的にイメージとは結構違うという話だが、ワタシ自身、技術的負債といえば、和田さんが書くように「リリース優先で雑なコードを書いたものの、結局はきれいに書き直されていないコード」や「古くなってしまった技術基盤(言語やインフラやフレームワーク)」のことだと思い込んでいた。これには蒙を開かされた。

ieeexplore.ieee.org

偶然だろうが、和田さんの文章が公開されたのと同じ今年の6月、IEEE Software に技術的負債についての文章が掲載されている。これを書いたのは、『Just Enough Software Architecture: A Risk-Driven Approach』(asin:0984618104)の著書もあるジョージ・フェアバンクス(George Fairbanks)である。

「近頃では、みんな技術的負債という言葉を使う。あまりに一般的になったので、tech debt とか単に TD とか短縮して使うくらいだ。技術的負債という言葉の指す範囲が年月とともに拡大しており、そのせいでウォード・カニンガムが1992年にその言葉を発明したときに語っていた興味深い現象を多くの人が見失ってしまっている」と、まさに和田さんの文章と重なる内容が書かれている。こういうシンクロニシティは面白い。

ジョージ・フェアバンクスが強調するのは、病気によって必要な薬が異なり、いろんな病気を一括りにしてしまうと薬の選択が難しくなるように、いろんな問題を「技術的負債」の傘の下に一括りにしてしまうと対応を間違ってしまうので、言葉の厳密な定義を持っておくべきだということ。現在広まってしまった「技術的負債」の広い定義が強力すぎて変えられないのなら、(ウォード・カニンガムが意図した)元々の「技術的負債」を指す場合は ur- をつけて、ur-technical debt と言ったらどうかと提唱している。

その上で、ur-technical debt は基本的に静的解析によっては検出されないにも関わらず、コードが「技術的負債」かどうか判定できるかのように謳うツールがたくさんあることに苦言を呈している。

さて、ワタシがこのジョージ・フェアバンクスの文章を知ったのは、11月20日Four short links だが、これも偶然だろうがその少し前にオライリーのブログにやはり技術的負債をテーマにした文章が公開されている。

www.oreilly.com

これを書いているのは『プログラマが知るべき97のこと』の原著者である Kevlin Henney で、この本の監修を手がけているのが和田卓人さんなんですな。これまたシンクロニシティ

文章のタイトルは「技術的負債の正確性について」で、やはり彼なりにこの言葉の定義をとらえなおすものである。

彼が書いているのは、ソフトウェアにとっての悪夢を指すのにメタファーとして生まれた言葉の話で、1970年代には、階層化されていない制御フローのもつれを指す「スパゲッティコード」、その後には時間経過による劣化の感覚を指す「コードの劣化(code decay)」や「ソフトウェアの腐敗(software rot)」という言葉が生まれている。

「技術的負債」もこれらの言葉の系譜に連なるものと見なされており、しかも、「技術的負債」の場合、金融の負債のメタファーが強力で、いろんな人にとってとてもなじみがあるものだったため、品質の低いコードを指すようになったり、定義を拡大されて広まったということでしょうな。

メタファーを文字通り解することで、我々はその価値を奪ってきた。いくらそれが言いえて妙であっても、メタファーを適用範囲を超えて使ってしまうと、メタファーのせん断(metaphor shear)につながってしまう。それは飽くまでメタファーであって、その正体(identity)ではないのだ、と Kevlin Henney はしめくくっている。

プログラマが知るべき97のこと

プログラマが知るべき97のこと

  • 発売日: 2010/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち

Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち

  • 発売日: 2020/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

[2020年12月18日追記]:本エントリに和田卓人さんから反応をいただけた。いろんなところにシンクロニシティが!

はやくも「AI倫理」の問題が争点となってきた(し、それをテーマとする本も刊行される)

wired.jp

www.itmedia.co.jp

はやくも「AI倫理」がホットな問題、というかコンフリクトの争点になってきた……という書き方は少し勇み足で、管理職から見て扱いずらかった AI 研究者を機を見てお引き取りいただいた、というのが実態に近いのかもしれない。たとえそうでも Google 側の説明にはどうしても無理を感じるので、Google 内外で本件の余波がありそう。

さて、少し前に「ロボット・AI時代にその危険性と人間の専門技能の擁護を説くフランク・パスクアーレ『New Laws of Robotics』」を書いた際にフランク・パスクアーレのことを調べていて、彼が Oxford Handbook of Ethics of AI という本に関わっているのを知った。

The Oxford Handbook of Ethics of AI (Oxford Handbooks)

The Oxford Handbook of Ethics of AI (Oxford Handbooks)

  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: ハードカバー

Ethics of AI、つまり「AI倫理」については、少し前にも MIT Tech Review で、『AI社会の歩き方―人工知能とどう付き合うか』(asin:4759816801)の著書もある江間有沙氏の「なぜ今「AI倫理」の議論が必要なのか」という記事を読んでいたのだが、必然的にこの議論が表舞台に出てきた感じである。

しかし、上記の本、とても気軽に買える値段ではない。残念……と思っていると、The MIT Press から AI Ethics というそのものズバリな本が出ているのを知った。

こっちを買ったものかねと思いながらもう少し調べてみると、なんと年末に『AIの倫理学』として邦訳が出るじゃない!

AIの倫理学

AIの倫理学

これは実にタイミングが良い。原書刊行からほとんど時間が経っていないことを考えると、版元も相当期待しているのではないか。

太陽光発電の価格がこの10年で9割近く下落しているのに驚く

ourworldindata.org

再生エネルギーによる発電に期待しない人は多いに違いない。化石燃料でなく再生エネルギーで電気をまかなえるようになればよいのだが、再生エネルギーは石油や原子力に比べて発電にコストがかかるので、現状では化石燃料への依存は不可避――というのが大方の見方ではないだろうか。

なので、「なぜ再生エネルギーは急速に安くなったのか? グリーンエネルギーの成長がもたらすこのグローバルな機会を利用して我々には何ができるだろう?」と題した記事を見て、その先入観が完全に間違っているのを知って驚いた。

とりあえずこの記事の上から3つ目のグラフを見てほしい。2009年、つまりおよそ10年前の時点でも、太陽光発電の価格は MWh あたり359ドルで、石炭、地熱、原子力天然ガス、風力などと比べてもダントツで高価だった。ワタシもそうだが、この認識で止まっている人がとても多いのではないだろうか?

そして、それが2019年にはその価格は40ドルと89%も下落しているのだ。この10年で天然ガス風力発電の価格も下落しているが(原子力などあがったものもある)、それらと比較しても現在もっともコストが低い発電方式ということになる……って、これホント?

こういうことこそマスメディアで報道してほしいよな、と自分の認識不足を棚に上げて思ってしまう。もちろん、それが実現した要因の分析も併せてね。こういう進歩に関する知識がちゃんと広まってないと見誤るものが多いと思うのよ。

ネタ元は kottke.org

2020年に観たNetflix映画の感想まとめ(主に『Mank/マンク』)

毎年20本以上の新作映画を映画館(や機内放送)で観てきたのだが、ご存知の通りの事情で2020年に映画館で観た映画は8本だけとなる(はず)。実に寂しい話である。

その代わりと言ってはなんだが、今年は Netflix で何本か新作映画を観たので、その感想をまとめて書いておく。今年はじめに書いた「年末年始に観た映画についてざっと書いておく」より後に観た映画ということですね。

ジャックは一体何をした?(Netflix

まぁ……これも映画ですからね、一応。

8年前にラフォーレ原宿で開催されたデヴィッド・リンチ展で観たフィルムを思い出させる、やはりリンチとしか言いようがないヘンテコだけど微妙に笑える短編としか言いようがない。

とりあえず Netflix で制作するらしい新作ドラマに期待しましょう。

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから(Netflix

両手いっぱい広げてこの映画を抱きしめたくなるほど良かった。Twitter で何度も書いているが、心を震わせる素晴らしい映画なので、Netflix に入っている人は絶対観ましょう。

三角関係を構成する主人公はじめ三人がいずれもよいのだけど、一見脳筋のバカが割り当てられそうなアメフト選手のポールがすごくいい奴、というのが本作のうまさですね。

カズオ・イシグロの『日の名残り』、ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』、サルトルの『出口なし』といった作品の使い方にもそれぞれちゃんと意味があって良かった。

しかし、15年ぶりにアリス・ウーに監督をさせた Netflix は偉い。


ザ・ファイブ・ブラッズ(Netflix

スパイク・リーが好調を維持していることが伝わる作品で、狙ったわけではないはずだが Black Lives Matter ムーブメントに見事にリンクしてしまったところにマジックを感じるし、カリスマ性に満ちたノーマン役を演じたチャドウィック・ボーズマンが8月に亡くなってしまったため、そうした意味でも特別な作品になってしまった。

本作は言うまでもなく『地獄の黙示録』が準拠枠になっているが、現地のベトナム人が「アメリカ戦争」というところをはじめとして皮肉が効いている。

しかしなぁ、やはりベトナム帰還兵のベトナム戦争当時の回想シーンを爺さんたち本人がやり、その中に一人チャドウィック・ボーズマンが入るという画がどうしてもヘンにしか思えなかった。やはり当時のシーンは若い俳優をあてるべきだったのではないか。


もう終わりにしよう。(Netflix

チャーリー・カウフマンの監督作は『脳内ニューヨーク』が大好きなのだけど、『アノマリサ』は未だ観れていない。

かなり期待して本作を観たのだけど、ダメだった。『オクラホマ!』を知らないと演出の意図が分からないという話をあとで読んで、そりゃワタシはダメだと安堵したくらい。原作を先に読んでおくべきだったか。

鑑賞後にネットでネタバレ考察を読み、「えっ、あれってそういう映画だったの?」と驚いたほどで、本作のラストが『ビューティフル・マインド』のパロディであるのはワタシにも分かるが、だからなんなんだ? それの何が面白い? と言いたくなるというか、とにかくワタシには手に負えない映画でした。


監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影

yamdas.hatenablog.com

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エノーラ・ホームズの事件簿(Netflix

SHERLOCK/シャーロック』など少ない例外を除き、ワタシはシャーロック・ホームズの翻案ものはあまり好きではなく、シャーロック・ホームズの妹がいるという設定の本作にも興味が湧かなかったのだが、面白いという評判を小耳に挟んだので観てみた。

ストレンジャー・シングス 未知の世界』でおなじみミリー・ボビー・ブラウンが主演だが、これが『ザ・ファイブ・ブラッズ』とは違った意味でまさに今どきな映画になっている。本作におけるシャーロック・ホームズのキャラクター造形は気に入らないが、彼が政治に無頓着なのは脅かされない特権があるからだと妹から突き上げられるのは面白かった。

主人公もテュークスベリー子爵を演じるルイス・パートリッジもキュートだし、とてもいまどきな作品なのは書いた通りだが、いまどき過ぎて展開が読めてしまうところが弱かった。


シカゴ7裁判(公式サイトNetflix

とてもアーロン・ソーキンらしい作品で、こうしてみると Netflix は本当にタイムリーな映画を今年たて続けに公開したんだなと思う(本作の製作は Netflix ではないけど)。

面白かったのだけど、少し評価は難しいところがある。「シカゴ7」がタイトルになっているが、その中に入れてもらえないボビー・シールの境遇の不愉快さが印象的だった。

サシャ・バロン・コーエンのことは『ヒューゴの不思議な発明』のときも感心した覚えがあり、今アビー・ホフマンをやるなら彼しかいないと思った通りだった。フランク・ランジェラマーク・ライランスマイケル・キートンジョン・キャロル・リンチといったベテランたちが芸達者ぶりを見せている。


Mank/マンク(公式サイトNetflix

今年の Netflix 映画のベストは『ハーフ・オブ・イット』以外ありえないと思っていたが、最後にこれが来た。以下、内容に触れるので、未見の方はご注意ください。

本作は実は映画館で観れたはずで、『ROMA/ローマ』『アイリッシュマン』の経験からもそうすべきだという確信があったのだが、あいにくタイミングが合わなかった。コロナ禍では映画館ひとつ行くのも大変だ。

当代最高の映画監督の一人であるデヴィッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』以来に撮る映画である。その間にもやはり Netflix の『マインドハンター』で楽しませてくれたが、やはり映画は特別だ。

さて、かつてデニス・ホッパーはこう言っている。

アメリカン・フィルム・インスティテュートによると、『地獄の黙示録』は"偉大な映画トップ100"に入る作品だそうだよ。『ジャイアンツ』と『理由なき反抗』、それに『イージーライダー』も入ってるんだ。だから、おれは偉大な映画100本中4本に出演したってわけだ。ちなみに、1位は『市民ケーン』だそうだ。それに関しちゃ、なんの文句もないね。(CUT 1999年8月号)

市民ケーン』は、映画史上最高の作品を挙げるなら未だトップにくる作品である。本作でも名前が出る『闇の奥』の翻案である『地獄の黙示録』や、『ドン・キホーテを殺した男』改め『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』など、「オーソン・ウェルズですら作れなかった」映画を手がけることで、その映画史上最高の作品を作ったオーソン・ウェルズに一矢報いようとした人はいる。

しかし、フィンチャーは本作において、『市民ケーン』自体に手をかけている。本作はその脚本を書いたハーマン・J・マンキーウィッツを主人公とするが、本作の脚本自体フィンチャーの父親が遺したものであり、当然のように本作の構成も「時間軸が飛躍する」など『市民ケーン』に寄せたもので、そのあたり分析の対象となるだろう。チェンジマークの忠実な再現など、ルックのこだわりは基本中の基本だ。

まず、本作は誰にでも勧められる映画ではまったくない。何より『市民ケーン』を観てないとどうしようもないし、ウェルズ、ウィリアム・ランドルフ・ハースト、マリオン・デイヴィスといった主要人物は当然として、当時の映画界の大立者の相関も分かってないと厳しい。本作に名前が何度も出てくる「シンクレア」は小説家のアプトン・シンクレアだが、映画会社の人間の軽口で、同時代の作家のシンクレア・ルイスの『エルマー・ガントリー』が引き合いに出されたりする。そのあたりまで大枠掴めることが前提になっている。

それでもワタシは本作を傑作だと推したい。フィンチャーの最高傑作ではないが、これぞ映画である。

本作のクライマックスとなるのが、主人公のマンクが長広舌を振るってハーストと対峙する場面、そしてマンクとウェルズの対決のカットバックなのがすごい。前者でゲイリー・オールドマンがここぞとばかりに本領を発揮しているが、このあたり好き嫌いはあるかもしれませんね。あとマンクの妻の描き方にも批判があるかも。

『ソーシャル・ネットワーク』、『ゴーン・ガール』に続いて本作もトレント・レズナーアッティカス・ロスが音楽を手がけているが、今回も秀逸。レズナーが1930~1940年代にピッタリなサウンドトラックを作れるなんて想像もできなかったが、昨年の『ウォッチメン』で当時の音楽を聴きこんだことが功を奏したらしい。『ウォッチメン』も攻めていて良いドラマだったが、改めて感謝したくなる。

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その37

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、前回の更新Amazon 版に低い星のカスタマ評価がついたことを触れたら、それに同情してくださってか、5つ星のカスタマレビューが2個追加されていた。

そのうち一件はなかむらかずやさんによるもので既出だが、ともあれ高い評価はありがたいことである。以下、新たなレビューから引用させてもらう。

Kindleってこういう使い方が出来るんだなぁ、と関心するようなユーザビリティの良さだった。リンク先の内容も含めると、短い本文から多くの情報(新書だと10~25冊分くらいの内容)をこの一冊から読み取ることが出来る。

良いインターネットのあり方について膨大な原典へのリンクと共に多くの議論が紹介されている。

新書10~25冊分くらいの内容! 皆さん、これを買わない手はないですよ!

この本で取りあげられているディストピアへの懸念が現実化した2020年にこの本を読むことが出来たことは幸運であり、著者のようにもうちょっと視座を上げて生きないといけない、と考えさせられた。

良いインターネットのあり方について膨大な原典へのリンクと共に多くの議論が紹介されている。

ワタシの文章の論調が暗いのは、もちろんワタシの性格が暗いからというのもあるのだけど、特にこの本で書いたことの苦さを再確認することが多々あった2020年だったとは言えるだろう。

このように反応が続く限りは、その宣伝目的であるこのブログも続くことになります。

ますます「暗い森」になりつつあるインターネットの中で個人ブログを書くことの意味

yamdas.hatenablog.com

昨年6月に公開した文章だが、先日「パブリッシングの主軸をはてなからnoteに移した/移しつつある人たちをまとめてみた」で紹介したところ、初めて読んだ人が多かったようで、はてなブックマークが増えていた。

この「暗い森」になりつつあるインターネットというトレンドは、これを書いたおよそ一年半前より(Twitter の荒れ度合い、可燃性の高まりと呼応して)はっきりしてきたように思う。

ここで「暗い森」の代表として挙げられていたのはニュースレターやポッドキャストである。

アメリカにおけるニュースレターの盛り上がりについては、以下の市川裕康さんの文章が参考になるだろう。

しかし、ワタシはどうもニュースレターに乗り切れないところがある。そのあたり少しモヤモヤしていたところ、ポッドキャスト Rebuild でそのあたりを突く発言があったので少し文字起こししてみる。

rebuild.fm

だいたい1時間47分あたりから。「ロストテクノロジーとしての RSS」の話からの流れである。

miyagawa:最近、でもないですけど、ここ2、3年、ニュースレターがめちゃくちゃ流行ってるんですよね。アメリカでは特にそうなんですけど。日本でいうと、メルマガって言われているのかな。

higepon:ああ、個人がやるやつですか?

miyagawa:そうです、そうです。アメリカは特にそうなんですけど、ここ2、3年……もっとかな、なんかみんなウェブサイトでブログやるのを止めて、ニュースレターになってるんですよ、情報発信が。で、有料のものとかもあって、Substack ていうサイトとかすごい盛り上がってて、要は簡単に有料のニュースレターを始められるサービスみたいな

higepon:うん

miyagawa:いいんですけど、僕としては、ニュースレターじゃなくて RSS にしてくれとか思ってしまうので。なんていうかね、ロストテクノロジーの中でも、Eメールはちょっと復興の兆しがある中、RSS はなんかもうみんな使わないというのがありますね。やっぱ、ニュースレターはEメールアドレスが集められて、みんなEメールはなんだかんだ見るから。そこの一等地に情報を届けたいっていう要望があるっぽくて。例えば、The Verge のチーフだったエディターの人も Verge 辞めて、自分でニュースレター立ち上げて、とかやってますからね。なんか最近すごい盛り上がりを感じますね

higepon:確かに僕もニュースレターは、サブスクライブしているのがあって、例えば、知り合いのデザイナーの人がバイウィークリーで出してるやつとか、あとは Weekly Kaggle News っていう、最近 Kaggle でホットなトピックを流してくれるのを見てるとかありますけど、やっぱりちょっと気になるのが、マインドセットの違いですかね。メールを開いてるときにニュースデータを見たい気持ちかというとそういうわけでもなくて

miyagawa:そうなんですよ

higepon:ニュースレターとか見たいときは、クリエイティブになりたいときとか、あとちょっとまとまった時間があるときにそういうものを見たいんだけど、それが例えば、「楽天市場セール中」に混ざってると、なんか、ん? これはマインドセットが違うぞ、と思っちゃうとかありますね

miyagawa:そうなんですよ。Inbox にそれを残しておきたくないんですよね。かといって消すと、読まないんで絶対に。で、一応ね、解決策があってですね、kill-the-newsletter.com というサイトがあるんですよ。ちょっと名前が物騒なんですけど。要はEメールアドレスを勝手に生成して、そのアドレスでニュースレターにサブスクライブすると RSS フィードを吐いてくれるっていう、まさに僕が求めていたような(笑)サービスで、無料なんですけど、これがなかなかよくできてますね。それを使っています

まさにこれである。ニュースレターを見たいときと、メール処理をやるときのマインドセットが合わないんですな。

[2020年12月17日追記]Substack がニュースレターの購読をまとめるべく RSS リーダーを立ち上げるという報道があった。RSSロストテクノロジーではなかった!(笑)

さて、次はポッドキャストだが、こちらの分野は Spotifyビデオポッドキャストを含め主導権を握るべく攻勢をかけており、「ポッドキャストのYouTube」を目指しているのは間違いなさそう。

www.nejimakiblog.com

そんな Spotifyポッドキャスト関連の話題はイケイケな話ばかりという印象があったのだが、ワタシもたまに聞いている日本オリジナルの人気番組でも打ち切りの心配をしなければならないのかと意外に思ったりした。

これはポッドキャストに限らないが、平和博さんが「編集長たちは次々と去り、残ったメディアは合併する」で書いている「コンテンツバブル」の崩壊やメディア合併の話も関係するのだろうなと思ったりする。

style.nikkei.com

とはいえ、大枠で見れば音声コンテンツには新規参入が続いており、活気があるのは確か。

最近ではオーディオムービーとか題した本格的な音声コンテンツも出ており、ワタシもニッポン放送「ビジネスウォーズ/BUSINESS WARS ニンテンドー対ソニー」や TBS ラジオの「つけびの村」とか聞いていて、前者は特に面白かったですね。

この手の番組で聞いて面白かったもの、お勧めのポッドキャストなどありましたら教えてください!

wirelesswire.jp

今から6年以上前にワタシは個人ブログ回帰について書いたが、当時も正直これはキビシイんじゃないかと思っていた。実際、宮川達彦さんも話されているように「みんなウェブサイトでブログやるのを止めて」る流れがあるわけだ。

情報の受信手段としてはともかく、情報の発信者としては、ワタシはニュースレターにもポッドキャストにも乗り切れない人間である。

それは単にワタシは頭の回転が鈍くて口下手なのでポッドキャストへの参入を難しいと思うのもあるし、(メルマガ、サロンを含む)有料ニュースレターをやると考えただけで心理的負担で胸が苦しくなるくらい。

上で面白いポッドキャストを教えてくれと書いたが、2020年末の今、面白いブログって何があるだろう? 特に個人がやっているもので。もはや個人ブログは「固定電話化」しているのかもしれないが。

yamdas.hatenablog.com

このエントリで紹介した Robert Rhinehart の Mostly Harmless など、ワタシが最近知った実例だが、テック系に限らず誰か知ってる面白い個人ブログを教えてくれないだろうか?

genron-alpha.com

東浩紀さんのゲンロンや「シラス」の試みも、「暗い森」になりつつあるインターネットに対応するものだと思うし、コンテンツが無料でもビジネスになるのは一種の「逆説」であって、正義視するのはおかしいというのはその通りなのだろう。

「すべてを共有するのでもない、すべてを一元管理するのでもない、かといってすべてを市場に任せるのでもない、第4の交換」を模索し、動画配信プラットフォームを自ら立ち上げてリスクを負う東浩紀さんには敬意を払っている。

しかし、ワタシは上に書いたように、有料コンテンツを一切やらないというわけではないが、今でも公開の場で無料で読めるブログにこだわりたいという気持ちがあるのだ。それが完全に時代遅れであることは分かっているけれども。

OpenStreetMapは企業からの編集参加が増えており伸びしろがありそう

joemorrison.medium.com

誰でも自由に利用できる世界地図を作るプロジェクトである OpenStreetMap についてはこのブログでも何度も取り上げている。例えば、昨年 OpenStreetMap が2018年のフリーソフトウェア財団の FSF Awards を受賞したことを取り上げたが、派手なニュースが続くわけでもなし、正直プロジェクトは停滞してないかと思うところがあった。

こうやってプロジェクトの現状を紹介する文章はありがたい。プロジェクトの登録ユーザ数はずっと着実に伸びているし、企業による利用も進んでいる。名前が挙がるのは FacebookAppleAmazon、そしてマイクロソフト――要はいわゆる GAFAM マイナス Google というわけだが、これらの企業は財政的な援助だけでなく、地理データ編集者としての協力も大きなものになっている。

これは Linux が企業内で利用されるにつれて、業務でその開発を行う開発者が増えていった話との類似を感じる。

Jennings Anderson の講演 Curious Cases of Corporations in OpenStreetMap によると、Apple による編集の伸びがすごい(続いて KaartAmazon か)。

そのように企業による編集が増えると OpenStreetMap コミュニティにおいて文化衝突も起こっているようだが、そのあたりもオープンソースにおける企業開発者の過去の事例での知見が活かせるのではないか。この文章では、結論として OpenStreetMap で起こっていることはコモンズの悲劇の反対で、参加者がそれぞれの私利を追求しても、資源を消耗することなくウィンウィンの関係になっているとまとめているが、そうあってほしいですね。

www.vice.com

こちらは Google Maps がいかにお行儀が悪く、ユーザのプライバシーを尊重しないキモいアプリかという話で、具体的にはユーザの検索履歴を要求する、それを拒むユーザには機能を制限するなど、不必要にユーザの情報を握ろうとする点が指摘されている。

オンライン地図分野で主導権を握る Google の横暴を止めるには、OpenStreetMap がそれなりに現実的な代替の選択肢でないといけない。

そう簡単に Google Maps の牙城を崩せるものではないが、少なくとも OpenStreetMap プロジェクトがある程度の財政的、人的リソースの余裕があると分かったのは良かった。

日本で OpenStreetMap に興味を持った人は、例えば、先月開催された State of the Map Japan 2020 のサイトで公開されている動画を見てみてはいかがだろうか。

ワタシの知った人では三浦広志さんが OSM Wiki の紹介をしているが、マッピングだけでなく翻訳でもプロジェクトに貢献できるわけだ。

ネタ元は Slashdot

キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち』刊行&早くも出る彼女の新刊『Do It Like a Woman』(追記あり)

キャロライン・クリアド=ペレス(Caroline Criado Perez)の『Invisible Women』のことは「Five Booksで2019年最高の本をジャンル別に探す(もしくはカタパルトスープレックス賛)」で取り上げているが、『存在しない女たち: 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』として邦訳が出たのを知った。

ブレイディみかこさんが推薦文を寄せているが、男女格差のファクトに迫るこの本は、2020年の日本にも確実に求められているものでしょう。原著者のサイト情報によると、日本語版は15言語目の翻訳になるのかな。

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)」で取り上げた本では、これが4冊目の邦訳刊行になりますか。

さて、邦訳が出たばかりだけど、彼女の新刊 Do It Like a Woman: ... and Change the World はもうすぐ、2021年のはじめに出る。

Do It Like a Woman: ... and Change the World

Do It Like a Woman: ... and Change the World

このタイトルは Do It like a Dude のもじりかしら。力強く道を切り開く女性たちを取り上げる本で、「どこにでもいる女性たちのための、輝かしく、必然的なマニフェスト」とのこと。

[2020年12月3日追記]:これは恥ずかしい。『存在しない女たち』訳者あとがきを読んで気づいたのだが、『Do It Like a Woman』は新刊ではなく、2015年に発表された著者の最初の本だった。申し訳ありませんでした。

Mental Flossが選ぶコメディ映画の最高傑作30本

www.mentalfloss.com

このようなオールタイムベスト映画選出記事は珍しくないが、Mental Floss がやってるのがポイントなんでしょうな。

以下その30本を紹介するが、年代順に並んでおり、数字は作品のランキングではないのに注意。

  1. クライド・ブラックマンバスター・キートンキートン将軍』(asin:B007I9LK0A
  2. レオ・マッケリー我輩はカモである』(asin:B006QJSOXO
  3. フランク・キャプラ或る夜の出来事』(asin:B00XP96MI2
  4. チャールズ・チャップリンモダン・タイムス』(asin:B01LB9D2WQ
  5. ハワード・ホークス赤ちゃん教育』(asin:B07X5FNVQC
  6. ビリー・ワイルダーアパートの鍵貸します』(asin:B075LC4JGK
  7. スタンリー・キューブリック博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(asin:B003CNVPBK
  8. ロバート・アルトマンM★A★S★H マッシュ』(asin:B07146GHR8
  9. メル・ブルックスブレージングサドル』(asin:B003GQSZ3O
  10. メル・ブルックスヤング・フランケンシュタイン』(asin:B07LGH8JRX
  11. テリー・ギリアムテリー・ジョーンズモンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(asin:B00UTGTR90
  12. カール・ライナー『天国から落ちた男』(asin:B00F5WYDSI
  13. ジム・エイブラハムズデヴィッド・ザッカージェリー・ザッカーフライングハイ』(asin:B08CZWNPRM
  14. コリン・ヒギンズ『9時から5時まで』(asin:B001EI5MKK
  15. シドニー・ポラックトッツィー』(asin:B00BFZGL0M
  16. アイヴァン・ライトマンゴーストバスターズ』(asin:B016LTQPKC
  17. アルバート・ブルックス『ゴー!★ゴー!アメリカ/我ら放浪族』
  18. ロブ・ライナープリンセス・ブライド・ストーリー』(asin:B004WZ95F0
  19. ジョン・ヒューズ大災難P.T.A.』(asin:B001CSMGUQ
  20. ジョン・ランディス星の王子 ニューヨークへ行く』(asin:B07NVJ7HWK
  21. ペネロープ・スフィーリス『ウェインズ・ワールド』(asin:B07V5V3FW1
  22. ハロルド・レイミス恋はデジャ・ブ』(asin:B00NNEJJ2A
  23. F・ゲイリー・グレイ『Friday』
  24. エイミー・ヘッカーリングクルーレス』(asin:B000BUN0HY
  25. クリストファー・ゲストドッグ・ショウ!』(asin:B00005MINX
  26. アダム・マッケイ『俺たちニュースキャスター』(asin:B00DACLDBA
  27. エドガー・ライトショーン・オブ・ザ・デッド』(asin:B07NRFD3XP
  28. ニコラス・ストーラー寝取られ男のラブ♂バカンス』(asin:B001LDC8I2
  29. ポール・フェイグブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(asin:B00BTSHPUA
  30. アキヴァ・シェイファー 、ヨーマ・タコンヌ『俺たちポップスター』(asin:B07FK1ZLY7

昨今のキャンセルカルチャーの影響かウディ・アレンの映画が入ってないのは許しがたい、ジョン・ランディスなら『ブルース・ブラザーズ』だろ、ロブ・ライナー(とクリストファー・ゲスト)なら『スパイナル・タップ』じゃないのか、といったこの手のリストにありがちな物言いはいくつもあるかもしれないが、ほぼすべて有名作である。

……と知ったようなことを書いたが、こういうリストを見て痛感するのは、自分がいかに映画初心者かということ。このリストでちゃんと観た作品となると、4、6、7、8、11、13、15、20、21、27と3分の1じゃないか!(『ゴーストバスターズ』と『恋はデジャ・ブ』はテレビで観たはずが、ちゃんと通して最後まで見てないので外した)

このブログに感想を書いているのは『ショーン・オブ・ザ・デッド』だけですな。

そうした意味で、新型コロナウィルスのせいであまり好き勝手できなさそうな年末年始に、ストレス解消のために観る映画のガイドにこのリストは参考になるのかもしれない。さて、このリストで Netflix に入っている映画って何本あるんだろう。

ネタ元は Boing Boing

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』への反応 その36

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』だが、久しぶりに Amazon 版のページを見たら、星がついている。おっ、誰かレビューを書いてくれたのか! と勇んで見たのだが……

対応するレビューがない。Amazon のカスタマ評価ってカスタマレビューを書かなくてもできるのか。知らなかったぞ。

レビューの点数が5点満点で2点というのは残念だが、こればかりはそういう評価があったと受け入れるしかない。まぁ、これを不憫に思う人がいたら、ぜひ高い評価をつけてくれると嬉しい。カスタマレビューなしにもできるらしいし(もちろんレビューありのほうがなおありがたいが)。

さて、話は変わるが、10月18日から開催されているセキュリティ・キャンプ全国大会2020における高橋征義さん(id:takahashim)の特別講演「「まだないもの」の育て方」のスライドを遅ればせながら見ていたら、最初のほうで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』が出てきて声をあげてしまった。

speakerdeck.com

高橋さん、ご紹介いただきありがとうございます。これを見たセキュリティ・キャンプ参加者が一人くらい達人出版会で買ってくれないものか。

そうそう、以前、「Kindle版や紙版を購入された方で、ボーナスのエッセイ「グッドバイ・ルック」を読みたい方は、購入されたものの写真かキャプチャ画像をメールでワタシに送ってくれたらファイルを送付します」と書いたところ、今までで計3名からリクエストがあり、ファイルを送らせてもらった。これは引き続き受け付けています。

XPRIZE財団の創設者が考える2020年代を方向付ける20のメタトレンド

peterhdiamandis.medium.com

Four short links で知った文章だが、これを書いているピーター・ディアマンディスって誰だっけと調べたら、XPRIZE 財団の創設者で、スティーブン・コトラーとの共著もある人だった。

レイ・カーツワイルSingularity University を立ち上げたということからも分かる通り、人類の未来について楽観的な予測をしている人というのは、彼の TED 講演を見てもお分かりになるだろう。

www.ted.com

www.ted.com

さて、その彼が考えるこれからの10年、つまり2020年代を方向付けるメタトレンドは以下の20個とな。

  1. 世界的な豊かさの継続的な増加:貧困層の数の減少、AIを活用する教育やヘルスケア、日常的な商品やサービスのデジタル化
  2. 世界的なギガビット接続により、誰でもすべてがどこでも超低コストでつながる:5Gネットワーク、衛星ネットワーク
  3. 人間の平均的な寿命が10年以上伸びる:機械学習の成熟により、AI は無数の新薬候補を解き放つ
  4. 資本が豊富な時代があらゆるところで資本へのアクセスを増やす:豊富な資本がイノベーションを加速させる
  5. 拡張現実(AR)と空間ウェブ(Spatial Web)がユビキタス展開を実現:AR と5Gネットワークの組み合わせが、我々の日常生活を一変させる
  6. あらゆるものがスマートになり、知能が組み込まれる:機械学習チップの急速な価格低下、低コストの微細センサーの爆発的な普及と高帯域幅ネットワークの展開
  7. 人工知能が人間レベルの知能を達成:2030年までにレイ・カーツワイルの予測が実現
  8. AI と人間のコラボレーションがあらゆる職で急増:サービスとしての AI(AIaaS)プラットフォームの台頭により、AI は日々の業務に定着
  9. 大部分の個人が「ソフトウェアシェル」を取り入れて生活の質を向上させる:Alexa や Google HomeApple Homepod が、『アイアンマン』に出てくる JARVIS みたいなソフトウェアシェルに進化
  10. 世界的に豊富で安価な再生可能エネルギー:太陽光、風力、地熱、水力に加えて著者は「原子力」も挙げている
  11. 保険業界は「リスクの後の回復」から「リスクの防止」にシフト:機械学習ユビキタスセンサー、ロボット工学の融合によって、リスクを検知して災害を防ぎ、コストが発生する前に安全性を保証するようになる
  12. (じきにずっと速く、安価になる)自律走行車と空飛ぶ車は人間の移動を再定義する:完全自律走行車も空飛ぶ車も10年以内にほとんどの大都市で実現し、移動のコストを大幅に下げ、不動産や保険や都市計画を一変させる
  13. オンデマンド生産とオンデマンド配送により「モノのインスタント経済」が誕生:ドローンやロボットによるラストマイル配送サービスや3Dプリンティングのよるオンデマンドデジタル製造業により、いつでもどこでも数時間以内に製品が手に入る
  14. なんでも、いつでも、どこでも感知し、知る能力:この未来では「何を知っているか」ではなく「質問の質」が最重要
  15. 広告の崩壊:購入の意思決定は AI に頼るようになる
  16. 細胞農業(cellular agriculture)が研究段階から実用化され、より安価で健康的な高品質のタンパク質を提供:最も倫理的で栄養価が高く、環境的にも持続可能なタンパク質生産システムの誕生
  17. 高解像度のブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)がオンラインで公開され一般に利用される:人間の大脳新皮質クラウドに接続されるというレイ・カーツワイルの予測の実現
  18. 高解像度の VR が小売と不動産売買をいずれも変革する:VR ヘッドセットをつけて、自宅のリビングルームであらゆるもの買い物をできるようになる
  19. 持続可能性と環境への関心の高まり:地球環境意識の高まりと地球温暖化への懸念から、企業は持続可能性への投資を行うようになる
  20. CRISPR(ゲノム編集技術)と遺伝子治療で病気を最小限に抑える:遺伝子編集技術の進歩により、何百もの遺伝性疾患を家庭で治療できるようになる

以上は抜粋なので、詳しくは原文をお読みくだされ。

いやー、とにかく機械学習(AI)、5G ネットワーク、ロボット工学、バイオテクノロジー、材料科学の進歩を楽観視するレイ・カーツワイル直系の超イケイケな予測である。自分たちがコロナ禍にいるのを忘れてしまいそうになるくらい。

そんなに資本が豊富なら、なんでワタシは貧乏なの? とイヤミの一つも言いたくなるが、そんなひがみっぽいことばかり言うのではなく、イノベーションで生活を豊かにできるんだ! という意気込みはないといかんのだろう、というのは今の中国を見ても分かることだ。

ロボット・AI時代にその危険性と人間の専門技能の擁護を説くフランク・パスクアーレ『New Laws of Robotics』

Frank Pasquale(彼の苗字はパスクアーレ、パスクァール、あるいはパスカルのいずれで表記したものか)のことは、4年以上前に「我々は信頼に足るアルゴリズムを見極められるのか?」で引き合いに出しているが、彼の前作『The Black Box Society』はちゃんと取り上げられなかった悔いがある。

その彼の新刊 New Laws of Robotics が出ているのを知った。

New Laws of Robotics: Defending Human Expertise in the Age of AI

New Laws of Robotics: Defending Human Expertise in the Age of AI

  • 作者:Pasquale, Frank
  • 発売日: 2020/11/06
  • メディア: ハードカバー

AI は我々の仕事や生活を破壊しようとしており、我々は技術の虜になるのではなく、しかるべき規制をかけて技術を利用しなければならないという論陣を張っており、つまりはロボットや AI の危険性を説き、人間の専門技能による職を守らなければならないという、それだけ見ると少し古めの論に思われるかもしれない。

www.theguardian.com

そこで読んでいただきたいのは、Guardian への寄稿、というか新刊からの抜粋なのだけど、軍事用 AI はますます現代の戦争で利用が広がっており、その倫理的な問題や危険性は大変なものであり、生物兵器化学兵器同様に規制が必要だと論じるものだ。もはや「虐殺ロボット」は、SF 小説や映画の中の話ではないのである。

そういういろんな分野におけるヤバいところを論じた上で、しかるべき規制をかけた上で人間の労働の価値を高めるようロボットシステム(AI)を利用する方向性を推しているわけだ。

この新刊の推薦者を見ると、『監視資本主義の時代』のショシャナ・ズボフ『Algorithms of Oppression』の Safiya Noble『邪悪に堕ちたGAFA』のラナ・フォルーハー『Atlas of AI』のケイト・クロフォードなど、このブログでもおなじみな人たちの名前が挙がる。特にケイト・クロフォードの仕事は、この新刊と親和性がある。

これは邦訳が出てほしい本ですな。

アメリカの映画/ドラマで使われる小道具のお札の作り方

アメリカの映画やドラマで大量の紙幣が登場する場面があるが、本物のお金を常に使うわけはなく、撮影用の小道具のお札を使う。その小道具のお札にフォーカスした動画が面白い。

ラッシュアワー2』、『オザークへようこそ』、『ブレイキング・バッド』『ダークナイト』、『ハスラーズ』、『ノーカントリー』『キル・ビル Vol.2』といった映画やドラマの映像が例として挙げられている。

ISS Props という会社の人がインタビューを受けているが、『ラッシュアワー2』の撮影時、小道具のお札が精巧すぎて、それをネコババして普通のお店で使おうとしたエキストラが出たらしい。

現在ではそうしたことが起こらないよう工夫が凝らされており、表にはっきり「撮影用途のみ」の文言を入れるなど容易に区別できるようにしたり、クローズアップで撮影されるために精巧さが必要な場合、片面しか刷らないとかいろいろやり方がある。で、本物の札束を調達する場合もあるとか。

ネタ元は Boing Boing

ラッシュアワー2 [Blu-ray]

ラッシュアワー2 [Blu-ray]

  • 発売日: 2015/10/14
  • メディア: Blu-ray

パブリッシングの主軸をはてなからnoteに移した/移しつつある人たちをまとめてみた

旧聞に属するが、こういうツイートをしている。


おそらく加野瀬未友さんの元々のツイートからはズレた指摘かもしれないが、ともかくこの傾向は前から思っていたので、これを機に少しまとめておきたい。飽くまでワタシの狭い観測範囲内の話なので、著名な人に偏っており、これですべてと言うつもりはない。

以下、50音順、敬称略。

平民金子さんも入れようか迷ったが、平民さんの現在の主軸はメルカリなので外した。まだ両方を更新している方も入っているが、主軸は note 側と判断した人を選んだつもりである。そうそう、pha さん、初の小説の刊行おめでとうございます。

夜のこと

夜のこと

  • 作者:pha
  • 発売日: 2020/11/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

課金がやりやすいなど note のほうがパブリッシングの場として魅力的である、あるいははてなという場がかくもイケてない/ネットコミュニティ的に不快な場になってしまった、もしくはその両方といった要因が考えられるが、2013年の時点ではてなには書き手の後押しをするヴィジョンも見識もないと書いたワタシからすると、この流れを何ら不思議に思わないし、ユーザの流出はこれからも続くと予測する。

ただ note が安泰かというとそういうこともなく、コンテンツ配信サイト cakes で最近たて続けに起こった炎上案件による見世物小屋化note にも悪影響を及ぼさないとも限らない。課金のしやすさをはじめとして「暗い森」の広がりというトレンドへの適応がうまくいったパブリッシングプラットフォームが一気にもっていく可能性がある。

ワタシ自身は、コンテンツをエクスポートする方法がないというリスク、あと IP アドレス漏洩問題時の対応が納得いかなかったこともあり、主軸を note に移すことは今のところまったく考えられない。

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