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WirelessWire Newsブログ更新(メディアとしてのメタバースのメッセージを(ニコラス・カーが底意地悪く)読み解く)

WirelessWire Newsブログに「メディアとしてのメタバースのメッセージを(ニコラス・カーが底意地悪く)読み解く」を公開。

前回ほどではないが、今回も随分と長くなってしまった。

メタバースといっても Meta だけがプレイヤーではないのは承知しているし、「メタバースの地政学」「メタバース時代の人間の価値」など掘ってみたい論点はいくつもあるが、とてもではないが網羅はできない。

メタバースについて書いてるのにこの話がないのはおかしい!」とお思いの方は、ぜひご自身で書いてください。

今回はニコラス・カーの文章を取り上げたが、彼の新刊の話を聞かない。『ネット・バカ』、『オートメーション・バカ』『ウェブに夢見るバカ』、に続いて『メタバース・バカ』、あるいは『AIバカ』といった本を期待してしまうが、もしかするともうリタイアモードなのかもしれない。

ランドール・マンローが『ホワット・イフ?』続編の新刊をギークらしい方法で宣伝する

news.slashdot.org

ランドール・マンロー、あるいは xkcd のほうが通りがよいかもしれないが、ともかく彼の『ホワット・イフ?』の続編 What if? 2 が今月刊行されている。

新刊が出ると、著者はその宣伝のためのツアーを行うものだが、ランドール・マンローはそれ以外にもポッドキャストに出たり、アニメ動画を作ったり、新刊にまつわるもろもろをネタにしたマンガを描いたり、新たに寄せられた科学に関する質問に答えたり……って、うーん、それくらい普通のプロモーション活動に思えるんだけどなぁ。

ともかくランドール・マンローの科学本なんだから面白いに違いないし、この新刊も前作同様早川書房から邦訳が素早く出るんだろうな。そうそう、彼の『ハウ・トゥー』も今年文庫化されていたんだった。

2022年は「イーロン・マスク本」の年だった

タイトルで勝手に2022年を総括してしまったが、実は今年はたくさんの「イーロン・マスク本」が出ているのだ。その中にイーロン・マスク自身が書いたものは一つもなく、他の人がイーロン・マスクにかこつけて書いた(あるいは編集した)本ばかりなのである。

電子書籍オンリーのものを除いても、2022年には以下の5冊の「イーロン・マスク本」が出た(出る)。

まずは IBC パブリッシングの英語学習上達用のラダーシリーズの一冊だが、つまりはもはや彼はこうしたシリーズに入る「現代の偉人」の一人ということなのだろう。

続いて『イーロン・マスクの面接試験』だが、これは別に Tesla の入社試験の話がメインではないのにちょっとひどいのではないだろうか。著者の旧作『ビル・ゲイツの面接試験』(asin:4791760468)にひっかけた邦題だが、『GAFAの面接試験』だとパンチが弱いものだから人名をあてたかったのだろう。そして、その人名が今はイーロン・マスクなんでしょう。

思えば、かつてはスティーブ・ジョブズの名前を書名に冠したビジネス本が多く出ていた。そのジョブズが亡くなって今年で10年になるわけで、『イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズを超えたのか』という本が出るということは、そうしたビジネス書の王座(?)が、ジョブスからイーロン・マスクに受け継がれたということなのかもしれない。

今や世界でもっともリッチな人になったイーロン・マスクが、我々のような下々の人間とは別の経済、別のルールを生きていることは少し考えれば分かりそうなものだが、『イーロン・マスク流「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』のような「イーロン・マスクの仕事術に学べ!」な本はビジネス書として需要があるんでしょうな。

これは来月刊行予定の本だが、おいおい、これの著者って、上であげた『イーロン・マスク流「鋼のメンタル」と「すぐやる力」が身につく仕事術』の著者と同じ人じゃない。二月連続で同じ人を題材とする本を刊行ってすげぇな!

これだけ見ると、かつての「ビル・ゲイツ」「スティーブ・ジョブズ」にあたる存在が2022年現在「イーロン・マスク」ということになるのだが、彼の快進撃は果たしていつまで続くのだろうか。

[2022年10月06日追記]:さすがに5冊で打ち止めと思って本エントリを書いたのだが、11月にもう一冊出るのを知った。

同じ出版社からスティーブ・ジョブズジェフ・ベゾスマーク・ザッカーバーグの本も出るようで、イーロン・マスクもこの並びに入る存在ということなのだろう。

[2022年11月02日追記]:大変申し訳ありません。2022年中にまだイーロン・マスク本が出るのに気づいてしまいましたので、再度追記させていただきます。これで全7冊になります。

ミシェル・ザウナー(ジャパニーズ・ブレックファスト)の『Hマートで泣きながら』が来月出る

yamdas.hatenablog.com

ジャパニーズ・ブレックファストのことは、昨年の『Jubilee』で初めてまともに認知し、一気に好きになった。その彼女が本を出していて、アメリカでベストセラーリストに載った話も紹介済だが、そこでワタシは以下のように書いている。

映画ができた頃には、日本での彼女のプレゼンスもずっと上がり、邦訳も期待できるんじゃないかな。

(ニューカマーのみから)2021年ベストアルバムを10枚選んでみた - YAMDAS現更新履歴

彼女の本に映画化の話があることに触れているが、逆に言うと、その映画版が公開されるくらいの話題にならないと邦訳は出ないんじゃないかと考えていたわけですね。

しかし、来月に集英社クリエイティブから『Hマートで泣きながら』が出るのを知る。

近年は海外ミュージシャンが書いた本もなかなか邦訳されないのを考えると貴重に思えるのだが、これが現在のジャパニーズ・ブレックファストの勢いなのだろう。素晴らしい。

せっかくなんで、最近の彼女の動画をいくつか紹介しておく。

ジミー・ファロンのレイトショーに出演しているが、彼女が5年前に "Jimmy Fallon Big!" という曲を出していることにまず触れるわな(笑)。その後、本の映画化の話もあるが、彼女が脚本書いてるみたいね。第一の目標はグラミー賞をとること、とキッパリ言ってるのは潔いよね。

Vorge でファッション紹介をやっていて、そんな需要もあるのかと少し驚く。

7月に開催された Pitchfork Music Festival 2022 におけるライブ映像だが、ウィルコのジェフ・トゥイーディーとデュエットしている。ジェフ・トゥイーディーが可愛く見える(笑)。

百花

以下、ストーリーの核心部分に触れますので、未見の方は気を付けてください。

川村元気プロデュースの映画はいくつも観ていて、その中には好きなものも確かにあるが、はなから観る気になれないものが大半である。その彼が初めて監督をすると聞いても食指は動かないのだけど、宇野維正のMOVIE DRIVERを聞いて、これは観ておこうと気が変わった。当然ながら、原作は未読である。

確かにこれはよくできている。最初から原田美枝子演じる主人公の母親、そして菅田将暉演じる主人公それぞれの登場に長回しが適度に使われており、画面に引き込まれる。

題材的にどうしても昨年の『ファーザー』を連想してしまうが、やはり認知症を扱うことで生じるホラー要素は、本作では映像の反復で表現されており、一方で『ファーザー』にはない謎解きの要素もある。

本作はなにより原田美枝子さんが素晴らしい。特に彼女の中年期の場面が良い……と思っていたら、完全に油断していて、ワタシも遭遇したあるイベントの場面には、かなりショックを受けてしまった。

本作は100分少しの上映時間で、間延びしたところがないのも好感が持てる。しかし、本作の謎解きの要素である「半分の花火」が明らかになるあたりがあまりに安易というかテキパキやりすぎていて、どうしようもなくダメだと思った。

母親に「半分の花火が見たい」と言われた帰りの車中で、主人公の妻があっさり「これだよ」と見つけるのもなんだが、その次の場面はいきなりその花火大会に、主人公と母親の二人が出かけている。主人公の母親はばっちり和服姿だが、認知症で施設にいる人を外に連れ出すのって、息子でもそれなりの手続きを要するのではないか? 夜中まで連れ出して、あの僻地にありそうな施設にはいつ戻れるのか? 老親の介護をしたことがある人間なら、いくつも疑問が浮かぶし、そういう面倒をクリアする描写は、謎解きの「溜め」としても必要なものでもないか。それがないので、「半分の花火」の真相が分かるラストにしても、ぼけっとしてたら見えました、という少し間抜けな感じになっており残念だった。

ワタシがNetflixで観たドラマをまとめておく(2021年秋~2022年夏編)

yamdas.hatenablog.com

およそ一年前に2年分のまとめを書いたが、今回から(Netflix の契約が続けばだが)だいたい一年ごとにやっていこうかと思う。

基本的に新しく見始めたものだけ取り上げ、シーズン継続のたびに書かないが、今回も例外がある。

ザ・チェア ~私は学科長~(Netflix

えーっと、大嫌い。

主役のサンドラ・オーはともかく、それ以外の登場人物の多くがそれぞれ不愉快。特にビル・ドブソン役のジェイ・デュプラス、妻を亡くしたショックから立ち直れない自堕落キャラなのはいいが、そう言いながらずっと主人公に言い寄ってるの、お前なんなの? 彼のマスクの甘さなどで、なぜか好感の持てる人物と描きたいようなのが意味分からん。

このドラマに出てくる年寄りの教授連はいずれも向上心に欠けるだけでなく、(ときに違法なやり方で)若い人間の足を引っ張ることが多いのに、最終的にこの人が主人公の後釜になるのって、その人の性別以外何があるんでしょうか?

キャンセルカルチャーや新世代の教育方法を肯定したいのかどうなのか、実に腰が据わってない。ゴミですね。


真夜中のミサ(Netflix

いやぁ、これはすごかった。

マイク・フラナガンNetflix ドラマはずっと追ってきたが、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』とは違った意味で衝撃を受けた。

これは彼のとてもパーソナルな作品であり、信仰の理不尽さを掘り下げている。本作では悪役に分類される登場人物の「奇跡をえり好みはできないのです!」という言葉の禍々しさたるや。

マイク・フラナガンの次作はポーの『アッシャー家の崩壊』が原作みたいだが、そりゃ見ますよ。

イカゲーム(NetflixWikipedia

あまりに話題になったドラマなのでワタシも観たが、確かにこれは面白かったし、よくできていると思った。ただ、後半になって海外からの「ゲスト」が登場したあたりでたるんだ感じはあった。オ・イルナムの脱落に涙したが、最後にあんな展開が待っていたとは……

先日もエミー賞ドラマ・シリーズ部門の主演男優賞と監督賞を受賞していたが、本作はとにかく話題になったので、それについて書かれた文章をいろいろ読んだ。その中では、辰巳JUNKさんの「『イカゲーム』考察:韓国経済とキリスト教」が特に参考になった。


地獄が呼んでいる(NetflixWikipedia

イカゲーム』に続いて話題の韓国ドラマを観たわけだが、これはかなーりイヤなところをえぐってくるドラマである。個人的にはあまり好きな作品ではないのだけど、本作の重要な要素にネット社会の風刺があり、それに成功しているのは間違いない。

ドラマの前半と後半で主人公が変わるのが新鮮だった。


平家物語公式サイトNetflixWikipedia

考えてみれば、Netflix でアニメもいくつか観ているのに、このシリーズでちゃんと取り上げていないものがあったかもしれない。

たまたま今年の大河ドラマと題材的に重なるため、例えばこのアニメを見ながらその前の週に見た大河ドラマを思い出し、「おいおい、平家はあんな奴らに滅ぼされるのか」と思ったりと妙な具合だった。

評判通りの出来だったが、ワタシ自身がアニメをあまり観ないというのもあってか、そこまではのめりこまなかった。本作の主人公は徳子なんですね。

地球外少年少女(公式サイトNetflixWikipedia

本作は前後編で劇場公開もされているので、この枠に入れてよいものか分からないが、ワタシは全6回のドラマシリーズとして観たので。

これはかなり面白かったし、かなり没入して観ることができた。

近未来の宇宙を舞台にしたアニメとしてとてもよくできている。しかし、そこに登場する企業イメージがすべて現在のそれの意匠の翻案であり、「未知」を見せる姿勢を放棄しているという意味で退嬰的で、それはクライマックスで発せられる「日本製だから過剰品質」というセリフにもあらわれており、ワタシもこれには鼻白んだ

今、私たちの学校は...(NetflixWikipedia

学園もの×ゾンビ……これが面白くないわけないだろ! と思ったら、本当に面白かった。ゾンビの動きを特徴的に見せる演出の妙もあった。

学園ものだから当然恋愛要素を含むのだけど、正直、今どきそんな古臭い描写するんだ、とちょっと呆れたところもあった。例えば、イ・ナヨンがギョンスを死に追いやる直前、二人を見守る男子陣のセリフとか。

また本作では、そのイ・ナヨンの描写には強いミソジニーを感じた。

おっと、ちょっと待っていただきたい。だからワタシは本作をダメだと言いたいのではない。誤解を恐れずに言えば、その逆だ。ミソジニーといえば、『イカゲーム』のハン・ミニョの描き方についても女性蔑視という批判があったのを思い出す。

こういうことを書くと刺されるだろうが、『イカゲーム』にしろ本作にしろ、女性の登場人物の描写にあるミソジニーは、確実にドラマの面白さに貢献している。これについては、ベンジャミン・クリッツァーさんが村上春樹について書いていた文章を思い出した。

 そもそも、村上作品のミソジニー性は欠点ではなく、作品の価値を成り立たせるプラス点だ。結局のところ、(1)世の男性は多かれ少なかれミソジニー的な認識を抱えて生きているのであり、(2)男性が女性に対して抱くミソジニー的なステロタイプはある面での「事実」を多かれ少なかれ反映している。(2)がある限りはいくらジェンダー論が力を得たところで(1)がなくなることはないだろうし、そして優れたフィクションであれば(1)と(2)の両方の「リアルさ」を描くことができるものだ。村上作品はその点でのリアルをきちんと描けているのであり、だからこそこれほどにも多くの男女からの支持をいまだに得られているのだろう

『ドライブ・マイ・カー』(+『マディソン郡の橋』) - THE★映画日記

イカゲーム』にしろ本作にしろ、この点で「リアルをきちんと描けている」「優れたフィクション」とワタシは評価するわけです。

逆に言えば、ミサンドリーが物語を推進する原動力になり、面白さに確実に貢献している作品があるのも(認めたくない人は多いだろうが)厳然たる事実だろう。それに感情的な好き嫌いが喚起されるのは避けられないにしろ、ワタシはミソジニーミサンドリーが感じられるというだけで作品自体を否定はしたくない。

本作については、続編も可能な終わり方になっていたが、個人的にはそれはイヤだな。


国民の僕(Netflix

ウクライナのゼレンスキー大統領が出演している、というかこのドラマのおかげで彼は大統領になれたといえるドラマなわけだが、Netflix で配信されると聞けば見てみようとなったが、正直すごく詰まんなかった。

初回を見ただけで、字幕に漢字の誤記がいくつも気づき、Netflix の字幕の質がヤバいという話をしみじみ実感してしまったが、このドラマに関しては、字幕の誤記だけでなく訳もおかしいのが散見されるという話も小耳に挟んだ。ただ、そこまで確認するところまで行く前に、最初の3話を見たところで、現実のゼレンスキー大統領にはっきり肩入れしているワタシですらもういいやと離脱した。

リンカーン弁護士NetflixWikipedia

マシュー・マコノヒー主演の映画版を未見。そもそもこのタイトルだけ見て、「エイブラハム・リンカーンが弁護士だった時代の活躍を描く歴史ドラマ」と思い込んでたくらいだが、評判に押されてみてみた。

これは切れ味がよくて面白かったです。やはり、法廷ドラマはアメリカ的よね。

サンドマンNetflixWikipedia

恥ずかしながら、ニール・ゲイマンの原作は未読だったりするので、そちらとの比較はできないのだが、これはよくできている。でも、物語が主人公の活躍からではなく、主人公が人間に囚われるところから始まったのには、これでいいのかしらと思っちゃった。

原作を読んでいないので、果たしてシーズン1で原作をどこまで網羅できたか、何シーズンくらい可能なのか分からないが、これはしっかり映像化として完結してほしいですね。


ベター・コール・ソウル(公式サイトNetflixWikipedia

一度取り上げたドラマについては取り上げない方針だが、これは書かざるをえない。

『ブレイキング・バッド』はワタシにとっても特別なドラマだったので、そのスピンオフってどうよという懐疑的な気持ちがあったのだが、これはこれで『ブレイキング・バッド』とはまた違った意味で自分の中で大きな作品になっている。

というか、あの史上最高のドラマと言われた『ブレイキング・バッド』よりもこちらのほうが好きかもしれないくらい。

あとはどれくらいしっかりした完結を見せてくれるかでしょうね。

ワタシがこれまでNetflixで観てきたドラマをまとめておく - YAMDAS現更新履歴

あれから3年、遂にこのドラマは完結した。「しっかりした完結」どころではない、『ブレイキング・バッド』とはまた違った、見事なフィナーレだった。

ブレイキング・バッド』も始まりから想像もつかない地点までたどり着いての終焉だったが、本作も(『ブレイキング・バッド』の前日譚という準拠枠にも関わらず)とんでもないところまでたどり着き、まさか『ブレイキング・バッド』の先まで描いて終わるとは思わなかったな。

最終シーズンにおける、もはやテレビドラマ/映画の二分法を超えた手法で描かれる、ゆったりとした展開ながらソウルたちを締め上げていく前半、そして恐ろしいカタルシスがもたらされる後半、いずれも完璧だった。そして、最終回において何度も登場するタイムマシンの話から浮かび上がる「後悔」のコンセプトが重かったし、正直この終わり方でよかったと(このドラマにはヘンな表現になるが)心が暖まるものがあった。

ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』を最初からゆっくり観直せる日が来るといいな。

ウィキペディアに「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」がまとめられている

boingboing.net

Wikipedia 英語版の「2022年に不審な死を遂げたロシア人実業家の一覧」をまとめたページを取り上げている。しかし、よくこんな項目作ったものだ。日本語版に対応するページは、さすがにまだない。

そういえば昨日、「ロシア実業家、遺体で発見 今年9人目の不審死や自殺」という記事を見たばかりだが、このウィキペディアのページには本文執筆時点で13人の名前が挙がっている……って、件の記事が伝えるイバン・ペチョーリン氏の後にも Vladimir Nikolayevich Sungorkin 氏が亡くなっているのな!

記事にもあるように、ロシア国営エネルギー大手のガスプロムや、ロシアの民間石油・ガス最大手のルクオイル関係者が多いのは、果たして何を意味するのだろうか。

それにしても不審な死を遂げすぎだろう……公式発表の死因が本当のケースもあるのだろうが、もしそうでない場合、この人の死因は実はこうだった、といった真相は何年後くらいに明らかになるものなんでしょうな。

a16zが提唱するNFT向け「Can’t Be Evil」ライセンスとクリエイティブ・コモンズのNFTに対する見解

a16zcrypto.com

旧聞に属するが、Andreessen Horowitz がクリエイティブ・コモンズに影響を受けた NFT 向けのライセンスを提唱している。

それが “Can’t Be Evil”ライセンスとのことで、これは Google の非公式社是「Don't be evil」のもじりであり、Web 3 周りで見かけるフレーズという印象がある。

やはりこれは NFT の利用促進が第一の目的には違いないが、ネーミングにしても NFT 周りに高まる反感を和らげたいという意識もあるのかなと思う。

今回“Can’t Be Evil”ライセンスとして策定されたのは6種類のライセンスだが(そのうちの一つが CC0)、クリエイティブ・コモンズのライセンスと同様に、それで何が自由にできて、商用利用や修正改変など何を(許諾なしに)やっちゃダメか明確にする表も掲載している。知財専門の弁護士と協力して作られたもののようで、それなりにしっかりしたもののようだ。

creativecommons.org

今回の a16z の動きを受けてというわけではないだろうが、Creative CommonsCC と NFT に関する FAQ を修正したよとアナウンスしている。NFT に関係して CC ライセンスを適用しようと考える人は、まずはこれを読んでみるとよいということだろう。

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」で取り上げた本の邦訳が2冊出ていた!(アゲインスト・デモクラシー、因果推論の科学)

「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」で取り上げた本の邦訳が最近2冊出ていたのを知って驚いたので、紹介しておく。

まず、一冊目。ジェイソン・ブレナン『アゲインスト・デモクラシー』の邦訳が勁草書房より先月出た。以前に Twitter で告知されていたので分かってはいたが、めでたい。上巻下巻併せて相当な値段となるが、それでも出す価値のある本だろう。

この本は、日本における危険思想研究の第一人者、人間的な好き嫌いはまったく別としてその仕事に常に敬意を払っている八田真行さんが紹介していて知った。

英国におけるブレグジット、米国におけるトランプ大統領の誕生といったあたりで醸成された、「民主主義ってもう機能してないんじゃね?」という疑問にクリアヒットする本だったわけだが、個人的にはこの状況だけ見て安易に権威主義を推す人をまったく信用しない。それはそれとして、時代はもうネオ封建主義、テクノ封建主義なんじゃね? というところまできており、2022年の今もアクチュアリティがある本なのではないでしょうか。

さて、もう一冊はジューディア・パールとダナ・マッケンジー『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』である。こちらは出たばかり。

人工知能分野を含む計算機科学における大物の本なので、すぐに出るだろうと思っていたら2022年にようやくである。『マスターアルゴリズム』ほどではないが、随分待たされたことになるが、逆に言うとこれはそう簡単には古びない本なので、ちゃんと邦訳が出てよかった。

マイケル・ペイリンが北朝鮮に続いてイラクの旅行記を本にした(し、テレビ番組にもなる)

www.themichaelpalin.com

英国本国ではもはや「モンティ・パイソン」というより「旅行番組のプレゼンター」として著名なマイケル・ペイリンだが、「発見!北朝鮮の歩き方」北朝鮮に旅したのが数年前、もう80歳近くで旅行番組も引退なのかなと思っていたら、今年3月にイラクに行っていた。

旅行から戻ってすぐに書籍執筆を強いられたって老人虐待じゃないかとも言いたくなるが、その本 Into Iraq がちょうど今日刊行される。

Into Iraq

Into Iraq

Amazon

北朝鮮に続いて物騒な国を選んだものだと思ったが、イラクは人間文明の発祥の地あたりでもあるんだよな。いずれにしてもお達者でなによりである。

これまでの旅行と同様に、本を書くだけではなくテレビ番組になるわけが、北朝鮮のときと同じく Channel 5 で9月20日から3回に分けて放送されるとのこと。

NOPE/ノープ

本作は何をどう書いてもネタバレの要素があるので、未見の人はご注意ください。警告しましたよ。

『ゲット・アウト』『アス』を楽しんだ人間として、ジョーダン・ピール監督の新作とあれば、これは観に行くしかないのだけど、今回は IMAX カメラも撮影に使われたという話を小耳に挟んだので、公開初日に IMAX で観てきた。

例によって事前情報はあまり入れずに観たのだが、やはり小耳に挟んだ話で「も、もしかして……シャマラン?」とも思ったりして(いや、シャマランはシャマランで好きですよ!)、正直『サイン』みたいな映画なんかなと思ってたら、さすがにそれとは違うのだけど、ある程度は当たっていた。

しかし……これは意図的にかなりバカだよな(笑)。シャマランかと思ったらエヴァだったという。予想外のところから矢玉が飛んでくる感じ。

そんなバカ映画だが、映像スペクタクルだけでなく凝った音声演出を施しているので、できれば IMAX で観ていただきたい。

本作において主人公の妹が強調する「世界最初の映画(動画)」の話を引き合いに出すまでもなく、本作はエンターテイメント業界におけるアフリカ系の置かれた状況を反映したものになっている。

また本作はスティーヴン・ユァンが重要な役柄で出てくるが、彼演じる「ジュープ」が、子役時代に出演したシットコムの撮影現場での凄惨極まりない事件で彼一人が危害を加えられなかったのは、その「犯人」が彼と最後にやろうとしたポーズから想像できるが、やはり彼がマイノリティだからであり、本作はエンターテイメント業界におけるアジア系の状況も反映されている……けど、主人公たちとの連帯は感じられないんだよね。あと、あそこで靴が「立っている」意味が分からなかった。

前作に続き、本作も旧約聖書が最初に引用されるが、手元の新共同訳の聖書から該当部分(「ナホム書」第3章6節)を引用しておく。

わたしは、お前に憎むべきものを投げつけお前を辱め、見せ物にする。

これでワタシが連想したのは、安部公房の「見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある」である。上記の撮影現場の場面もそうだが、本作の怪物も「見られる」ことに牙をむくわけですね。こっちからすれば、かなり理不尽に。

それにしても、本作における「怪物」のたたずまいからして荒唐無稽なのだけど、主人公たちが求める「オプラ映像」という言葉、TMZ 記者の登場に象徴されるなんともいえない浅さ、しかし、「オプラ映像」を求める以外、何ら有機的な選択肢を考えもつかない感じがむしろリアルだったりする。

しかし、正直本作の映画についての言及性はあまり有効に機能していないし、主人公が(やはりダニエル・カルーヤ演じる『ゲット・アウト』同様に)基本的に受け身というのはいいのだけど、彼について何ら深堀りできていないので、最後で馬に乗って登場する姿に気持ちが昂るものが正直なかった。

DEF CONから永久的に締め出されたソーシャルエンジニアリングのスター

www.theverge.com

セキュリティ業界に関わる人で知らない人はいない世界的に有名なハッカーの祭典 DEF CON だが、ソーシャルエンジニアリングの分野でもっとも有名な Chris Hadnagy が、行動規範に違反したとして出禁になったそうな。

それ自体は今年2月の話だが、今月になって彼がそれに対する訴訟を起こしたことでニュースになっている。

yamdas.hatenablog.com

今から10年近く前になるが、彼の本が邦訳されたのをワタシも書いていた。やはりブログは書いておくものだ。

原書の第2版が出るときもブログで取り上げているが、さすがに邦訳はそれにまでは追随しなかった。

しかし、ハッカーカンファレンスでやることって時に法のグレーゾーンに触れるので、こういうのは難しいものがあるよな。

このケースの場合、Chris Hadnagy が「ハラスメント禁止」にフォーカスした DEF CON の行動規範に具体的にどのように違反したのか不透明である点で訴訟の余地があるのだろう。そして、彼は単なる DEF CON のいち発表者ではなく、そのインサイダーと見られていたので、コミュニティにショックを与えたようだ。

ネタ元は Slashdot

ベストセラー教科書の無料化・オープンソース化のニュースに「オープン教育リソース」の歴史を思う

forbesjapan.com

このニュースは日本ではそんなに話題になっていないようだが、記事にもあるようにこれは「大事件」と言ってよいだろう。

なぜならオープン教育リソース(OER)は無料だからだ。しかも無料なだけでなくオープンソースであるため、ライセンスや許可なしに定期的に更新や改訂することができる。OER書籍やその他の教材は新しいものではない。教育資源を無償化するという考えは以前から存在している。実際、OpenStax自身には、すでに57冊の無料の教科書があり、年間600万人以上の学生に利用されている。

ベストセラー教科書の無料化・オープンソース化が教育出版を変える | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

OER という言葉は以前からあり、ワタシも今から10年以上前に「オープンエデュケーションとその持続可能性」という文章を書き、オープンコースウェアなどの OER や、DRM フリーで無料のデジタル教科書の提供を謳うスタートアップを紹介している。

しかし、そのスタートアップの試みは挫折している

そうした意味で、アメリカにおいて高騰化がいわれる教科書を無料でオープンなライセンス(調べてみたら CC BY-NC-SA みたい)で提供するというチャレンジを引き継いだ OpenStax という企業には、すごいねぇと思ってしまう。

「オープンエデュケーションとその持続可能性」でも書いたように、こうした試みを一種の「狂気」抜きに持続していくのは大変なことであり、日本でも少し前に京都大学OCW閉鎖、運営組織廃止のニュースを見ても明らかなわけで。

コリイ・ドクトロウの新刊はビッグテックや巨大メディアの権力へのクリエイターの対抗を呼びかける「チョークポイント資本主義」

Pluralistic で、このブログでもおなじみコリイ・ドクトロウが新刊のオーディオブックのためのクラウドファンディングを立ち上げている。

オーディオブックって、単に Amazon で売ればいいだけじゃない? と思われるかもしれないが、ドクトロウは Amazon のオーディオブックプラットフォームに以前から反旗を翻しているんですね。

その彼の新刊(Rebecca Giblin との共著)は Chokepoint Capitalism なのだけど、基本的に SF 作家として知られる彼が「資本主義」を題名に冠する本を書くことになったのは、やはり昨今のビッグテックや巨大メディアの独占の弊害、このままではクリエイターは彼らに支配されてしまう、力を取り戻さないと、という危機感があったからだろう。

この話題で連想するのはやはり「監視資本主義」だが、実は彼はこれにかなり批判的で、「チョークポイント資本主義」が彼なりの回答なのかと想像する。

これはやはり、新自由主義によりネオ封建主義時代に入ってしまったという危機感もあるのだろうな。

推薦者を見ると、ジミー・ウェールズローレンス・レッシグクレイグ・ニューマークアニール・ダッシュイーライ・パリサーダグラス・ラシュコフといったあたりは想定範囲内だが、マーケティング分野のベストセラー作家セス・ゴーディンや『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドが名前を連ねているのは予想外だった。

クエンティン・タランティーノがおすすめする映画40選(最新版)

www.indiewire.com

この IndieWire の記事は元々は2019年が初出みたいだが、その後の情報も踏まえたアップデート版ということで、クエンティン・タランティーノが観るのを勧める映画を40本まとめている。

せっかくなので、だいたい公開年順に並べてみた。

  1. ハワード・ホークスヒズ・ガール・フライデー』(1940年)(asin:B004OUEAV2
  2. プレストン・スタージェス『殺人幻想曲』(1948年)(asin:B0B1CPWC87
  3. チャールズ・バートン『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948年)
  4. ハワード・ホークスリオ・ブラボー』(1959年)(asin:B005EMZA18
  5. ジョン・スタージェス大脱走』(1963年)(asin:B00BHALMEU
  6. マリオ・バーヴァ『ブラック・サバス 恐怖!三つの顔』(1963年)(asin:B09X1MLSWQ
  7. セルジオ・レオーネ『続・夕陽のガンマン』(1966年)(asin:B074PWB5X5
  8. デニス・ホッパーイージー・ライダー』(1969年)(asin:B018S2FX1M
  9. スティーヴン・スピルバーグジョーズ』(1975年)(asin:B00C9XM6IU
  10. ダリオ・アルジェント『サスペリアPART2』(1975年)(asin:B00A74H03O
  11. マーティン・スコセッシタクシードライバー』(1976年)(asin:B009D9UJN2
  12. マイケル・リッチー『がんばれ!ベアーズ』(1976年)(asin:B000P5FFFK
  13. ブライアン・デ・パルマ『キャリー』(1976年)(asin:B09FXX27V1
  14. ウィリアム・フリードキン『恐怖の報酬』(1977年)(asin:B093HN2J4Z
  15. フランシス・フォード・コッポラ地獄の黙示録』(1979年)(asin:B07NRLKDFT
  16. ブライアン・デ・パルマ『ミッドナイトクロス』(1981年)(asin:B07DPSP1Q7
  17. スタンリー・トン『ポリス・ストーリー3』(1992年)(asin:B00TCDETQ2
  18. リチャード・リンクレイター『バッド・チューニング』(1993年)(asin:B01M6WRRGU
  19. ヤン・デ・ボン『スピード』(1994年)(asin:B008CDAZ1G
  20. ポール・トーマス・アンダーソン『ブギーナイツ』(1997年)(asin:B004PLO5OW
  21. デヴィッド・フィンチャーファイト・クラブ』(1999年)(asin:B00HD05KAA
  22. ウォシャウスキー姉妹『マトリックス』(1999年)(asin:B003GQSXWC
  23. 三池崇史『オーディション』(1999年)(asin:B074WCMKN4
  24. M・ナイト・シャマランアンブレイカブル』(2000年)(asin:B00472MEO2
  25. 深作欣二バトル・ロワイアル』(2000年)(asin:B005FCX820
  26. ポン・ジュノ殺人の追憶』(2003年)(asin:B00JL26L7O
  27. エドガー・ライト『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)(asin:B07NRFD3XP
  28. ラース・フォン・トリアードッグヴィル』(2004年)(asin:B0002B5A5M
  29. トレイ・パーカー『チーム★アメリカ/ワールドポリス』(2004年)(asin:B00C97XYOQ
  30. ポン・ジュノグエムル-漢江の怪物-』(2006年)(asin:B08628FJDP
  31. ポール・トーマス・アンダーソン『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)(asin:B08Z7VRSB4
  32. デヴィッド・フィンチャー『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)(asin:B018S2FDKI
  33. リー・アンクリッチ『トイ・ストーリー3』(2010年)(asin:B08H5K1NS2
  34. ギャスパー・ノエエンター・ザ・ボイド』(2010年)(asin:B0048LPRD2
  35. ペドロ・アルモドバル『私が、生きる肌』(2011年)(asin:B00J9SJ9C4
  36. ノア・バームバック『フランシス・ハ』(2013年)(asin:B00SFJ2KFG
  37. ジョージ・ミラー『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)(asin:B01BMFKU60
  38. クリストファー・ノーラン『ダンケルク』(2017年)(asin:B07BFF24YN
  39. スティーヴン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年)(asin:B09VL8N3CQ
  40. ジョセフ・コシンスキートップガン マーヴェリック』(2022年)

うーん、ワタシが観たことあるのは、40本中半分くらいやね。結局、『トップガン マーヴェリック』観に行けなかったなぁ。

こうして並べてみると、1980年代の作品がほぼないですな。また10月に出る彼の本で論じられている1970年代の作品は、むしろこのリストにはあまり入っていないのかもしれない。

具体的に彼がどのように上記の映画を讃えているかは、原文をあたってくだされ。

ネタ元は Boing Boing

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