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邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)

私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」だが、2011年に始まったこの企画も遂に10回目を迎えてしまった(過去回は「洋書紹介特集」というタグから辿れます)。

昨年、「おそらくは来年10回目はなく、今回で最後になるのではないか」と書いたが、結局それからの一年も本ブログにおいて結構な数の洋書を紹介したので、またできてしまうこととなった。

しかし、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションも実質終わっているので、つまりは本ブログの更新もめったにはなくなり、よってこの企画も今回で終わりである。ちょうど10回、キリが良い。

今回は34冊というかなりのボリュームになった。洋書を紹介しても誰も買わないので、アフィリエイト収入にはまったくつながらないのだが、誰かの何かしらの参考になればと思う。

実は既に邦訳が出ている本を紹介していたり、邦訳の来るべき刊行情報をご存知の方はコメントなりで教えてください。

ステファニー・ケルトン『The Deficit Myth: Modern Monetary Theory and the Birth of the People's Economy』

MMT の主唱者であるステファニー・ケルトンの名前は日本のメディアでも一時期多く目にしたが、今年6月に満を持して刊行されるこの本が、彼女にとって初めての著書ということになるのかな。ご本尊の本なのだから、間違いなく邦訳が出るだろう。

パティ・スミス『Year of the Monkey』

恥ずかしながら見落としていたのだが、『ジャスト・キッズ』のあと『M Train』(asin:1408867702)という続編が出ており、本作は三作目にある。

タイトルの意味はズバリ「申年」のことで、『ジャスト・キッズ』のような昔の回想録ではなく、申年だった2016年の思考をまとめたものらしい。

Casey Rae『The Priest They Called Him: William S. Burroughs & The Cult of Rock 'n' Roll』

こういう本って、ウィリアム・バロウズサブカルチャーとしてのブランド価値が高かった頃なら間違いなく山形浩生に話が行き、邦訳出ていたと思うのだけど、今は難しいのだろうな。

アラン・クルーガー『Rockonomics: A Backstage Tour of What the Music Industry Can Teach Us About Economics and Life』

著者はアメリカを代表する経済学者だったが、著書の邦訳は『テロの経済学』(asin:4492313915)くらいしか出ていない。遺作となった、しかも内容も堅苦しくなく、かつて『デジタル音楽の行方』を翻訳したことのあるワタシ的にも縁の深い「音楽の経済」というテーマを扱った本なので、邦訳を期待したい。

スーザン・ファウラー(Susan Fowler)とマイク・アイザックによる Uber 暴露本

Uber については「『羅生門』としてのUber、そしてシェアエコノミー、ギグエコノミー、オンデマンドエコノミー、1099エコノミー(どれやねん)」で辛辣に書いているが、それを『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録するにあたり、その後のニュースを追記していったところ、いつまで経っても不祥事のニュースが終わらないのに呆れたものである。

スーザン・ファウラーの本は Uber の話だけでない拡がりのある本らしいが、マイク・アイザックのほうは Uber 側もかなり神経をとがらせた様子がうかがえる。自業自得だけど。

ただ日本では幸か不幸か配車サービスとしての Uber は参入できていないので、これらの本のインパクトが実感をともなわないのかもしれない。

ブレット・イーストン・エリス『White』

本当にブレット・イーストン・エリスがこんな面白いことになっているとは知らなかったし、青木耕平というとても面白い書き手に出会えたこともありがたく思う。しかし、あんまり邦訳が出なくなりつつある作家なので邦訳は難しいかなぁ。

Gretchen McCulloch『Because Internet: Understanding the New Rules of Language』

インターネット言語学というか、「インターネットと言葉の関係」というのはありそうでなかった本なのは間違いない。ニコラス・カー式のネガティブな視座ではなく、それをポジティブにとらえているのも貴重なので邦訳を期待してしまうが、こういう本ってネットスラングめいた表現も頻出するので、翻訳は厳しいのかも。

Lorraine Plourde『Tokyo Listening: Sound and Sense in a Contemporary City』

著者は日本における音研究の他にもベビーメタルについての論文も書いたりしている。こういう本は邦訳が出なきゃいかんでしょ! と思うのだが、難しいのだろうか。

Brian Raftery『Best. Movie. Year. Ever.: How 1999 Blew Up the Big Screen』

確かに1999年に作られた映画には、すごい作品が多い。だいたい20年前、スマートフォンは存在せず、インターネットもまだ誰もが使うところまではいってなかったのもポイントかもしれない。そういえば、アレクサンダー・ペイン『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』は未だ観れてないんだよな。

2020年、世界は新型コロナウイルスに蹂躙されて映画館は軒並み閉館し、映画の撮影さえできない有様である。そうした意味で、今や世界的な有名人である俳優や監督が若かりし日に傑作を撮った「映画史上最高の年」が違った意味で輝きを持ってしまった現在なのかもしれない。

トマ・ピケティCapital and Ideology

これも放っておいても邦訳が出る本なのは間違いない。今年後半に山形浩生が訳してくれるでしょう。映画『21世紀の資本』はトマ・ピケティ本人が出演する気合いの入った映画みたいだが、やはりコロナ禍にやられたのは気の毒である。というか、ワタシも観れなかったし。

ルー・リード『I'll Be Your Mirror: The Collected Lyrics』

何度も書いているが『ニューヨーク・ストーリー: ルー・リード詩集』(asin:4309206395)があるので本書の邦訳は期待薄であるが、上で紹介したウィリアム・バロウズとロックアイコンたちの関わりの本とか、こういうのが出ないのって長年の洋楽ファンとしては悲しい限りである。

Jenny Odell『How to Do Nothing: Resisting the Attention Economy

アテンション・エコノミーへの反逆自体は目新しいものではないが、この本の場合、ミレニアム世代による SNS 時代のスローダウン、無為の喜びを説いていて、そうした意味で図らずもコロナ時代により必要なものになっていると思うのである。

Andrew Marantz『Antisocial: Online Extremists, Techno-Utopians, and the Hijacking of the American Conversation』

テクノユートピアニズムを信奉する巨大テック企業らによるソーシャルメディアが民主主義を破壊したと糾弾する本の決定版と言えるものだが、既に翻訳の版権がとられているならいいのだが、そうでないなら八田真行あたりに翻訳を依頼する出版社はないものか。

そうそう、彼の TED2019 講演「荒らしや虚偽宣伝活動家が潜むインターネットの奇妙な世界」は日本語字幕が完成しているのでどうぞ。

デイヴィッド・ケイ『Speech Police: The Global Struggle to Govern the Internet』

著者の日本語版のウィキペディアページは英語版よりも遥かに詳しくて、なんでかと思ったら、国連特別報告者として2016年に行った日本に対する提言、並びにそれに対する反応が注目されたためだった。それはともかくとして、少し前に中国が(IETF でなく)ITU に現在より統制しやすいインターネット規格をしかけてきたが、コロナ時代に言論への統制の欲望が噴出する兆しは多くあり、そうした意味で今どきな本なのかもと思う。

Kate Crawford『The Atlas of AI』

当初のリリース予定なら既に発売されているはずなのだが、今見ると今年の9月末に刊行が伸びている。それは残念だが、彼女の本は求められているものだと思うし、邦訳についても同様である。

アンドリュー・キーン(Andrew Keen)『Tomorrows Versus Yesterdays: Conversations in Defense of the Future』

本当にこの人もコンスタントに新作を出しており、しぶといよなぁ。新刊は元々3月刊行の予定だったが、8月に変更になっている……と思ったら、Kindle 版は既に発売を開始してる? キーンのウェブサイトにおける本書のサポートページも現状中身は空に近い。どうなっているのだろう?

マーカス・デュ・ソートイ『The Creativity Code: How Ai is Learning to Write, Paint and Think』

AI はアートを創作をできるのか? つまり、創造性を持てるのか? 将棋の世界で将棋ソフトが新手をいくつも生み出しているのを知る人間としては、それはできるでしょうと素直に思ってしまうのだけど、本当に AI はオリジナルの音楽や絵画を創造できるのか、というのは多くの人が知りたい話だろう。

著者の本では『素数の音楽』(asin:410218421X)、『シンメトリーの地図帳』(asin:4102184228)、『数字の国のミステリー』(asin:4102184236)といった邦訳があり、本書についてもじきに出るんじゃないのかな。

Christopher Wylie『Mindf*ck: Cambridge Analytica and the Plot to Break America』

ブリタニー・カイザーの本も邦訳が出たんだから、こちらも出てほしいところ。今回の洋書紹介でも、テクノロジー大企業による民主主義の侵害を取り上げた本がいくつもあるのだけど、本書の場合はその極めつけの実例についての本と言える。

著者のクリストファー・ワイリーの提言は(シリコンバレー人種の反発を買うのが容易に想像できるだけに)重い。

  1. ソフトウェアエンジニアとデータサイエンティストへの倫理綱領が必要。エンジニアはプロダクトを作ることと、作ったプロダクトが世の中でどんな使われ方をするかに大きな乖離があり、プロダクトが出たあとではエンジニアに個人的な関与がないことが問題だ。医者や弁護士、建築家のような専門職のように決定機関により裏付けされた倫理綱領を作り、それを破ったものには社会的な結果が伴うものとなる必要がある
  2. インターネットユーティリティの規制は別のものとして考えるべきだ。デファクトスタンダード(事実上の標準)になった圧倒的独占地位を持つインターネット企業は「インターネットユーティリティカンパニー」という位置付けで、より高い水準の説明責任と決定機関により管理される義務づけ、罰金などが課せられるべき
  3. 「デジタル規制当局」の設立。インターネットユーティリティカンパニーが消費者に及ぼす精神的、社会的影響などを検討し、積極的に技術的な監査を行う捜査当局が必要
誰が「個人情報の警察」になるのか。アメリカで進むプライバシー規制と提言 | Business Insider Japan

ティーブン・レヴィ(Steven Levy)『Facebook: The Inside Story』

レヴィの本なら、来年には邦訳が出るだろうし、それが新たな Facebook についての定番本になるのだと思う。しかし、彼も来年は70歳なんだな……って関係ないけど、日本では渋谷陽一が彼と同い年だね。

Richard F. Thomas『Why Bob Dylan Matters』

トランネットの翻訳者オーディションにかかった本なので、今年中に邦訳が出るのは間違いない。本来であれば、今年の春はライブハウスで行う来日公演という珍しい企画が実現し、そしてディランは日本の桜を花見して楽しめたはずが(ワタシの勝手な想像)、こんなことになってしまったわけである。果たしてディランがまた日本の地を踏む日は来るのだろうか……。

アダム・クチャルスキー『The Rules of Contagion: Why Things Spread--And Why They Stop』

著者の本では『ギャンブルで勝ち続ける科学者たち: 完全無欠の賭け』(asin:4794224273)という面白そうな本の邦訳が既に出ているが、本作は感染症の専門家としての本領を発揮した本、しかもタイミング的にこれ以上ないほど当たりまくった本なので、既に翻訳作業が進んでいるのではないか。

Kevin Roose『Futureproof: 9 Rules for Humans in the Age of Automation』

ありゃ、著者によるサポートページを見ると、当初今月発売予定だったのが、2021年1月に延期になっているね。

実際、今回紹介した本についても、本を出したはいいが、宣伝のために著者が全米各地で行うブックツアーが軒並み中止に追い込まれていて、映画よりは影響を受けにくいと思われる本についても、刊行延期は珍しくない。

もしかすると本書の場合、今回の新型コロナウイルスの影響を本に盛り込むための延期かもしれないね。

さて、ここまでがワタシのブログで紹介済みの本である。以下は、今後刊行される本の中から注目なものを取り上げておく。

スコット・バークン(Scott Berkun)『How Design Makes The World』

この10年では『パブリックスピーカーの告白』(asin:487311473X)や『マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた』(asin:4105068318)の邦訳がある著者だが、新作はデザインの重要性についての本である。本についての情報は、著者によるサポートページをあたってくだされ。

そういえば、少し前にマーク・アンドリーセンが IT'S TIME TO BUILD という決起の呼びかけというか半ば檄文を公開して話題になったが、それを受けてスコット・バークンは It’s Time To Learn と書いていて、この落ち着きと引き具合が彼らしいと思ったりした。

ドン・タプスコット(Don Tapscott)編『Supply Chain Revolution: How Blockchain Technology Is Transforming the Global Flow of Assets』

『ウィキノミクス』『マクロウィキノミクス』は今や昔、前作は『ブロックチェーン・レボリューション』とぶちあげていたが、新作は今度は「サプライチェーン革命」をぶちあげている。ただ副題を見れば、今も彼にとっての最重要トピックはブロックチェーンらしい。

ドン・タプスコットのブログにおける本書の紹介エントリを見て、あれっ? となった。Amazon の書影では、"Edited with a preface by Don Tapscott" となっているのが、こちらでは "Edited with a preface by Alex Tapscott" となっていて、前作の共著者である息子さんの名前に置き換わっている。

おそらくはこちらの情報が正しいのだろう。そうなると、本書をドン・タプスコットの新刊とは言えないのかもしれない。

ジョージ・ダイソンGeorge Dyson)『Analogia: The Entangled Destinies of Nature, Human Beings and Machines』

ジョージ・ダイソンというと『チューリングの大聖堂』の邦訳があるが、正直なところ現時点ではタイトルしか情報がない新作も、人間と機械(コンピュータ)の関係を突き詰める本質的な本なのではないか。

そういえば、彼の父親にして高名な物理学者だったフリーマン・ダイソンが今年亡くなっており、新作は父親に捧げられるのだろうか。

Ethan Zuckerman『Mistrust: Why Losing Faith in Institutions Provides the Tools to Transform Them』

イーサン・ザッカーマンの本は2013年に「「閉じこもるインターネット」に対するセレンディピティの有効性」という文章で取り上げているが、それ以来久しぶりの新刊となる。

ザッカーマンの名前は昨年、ジェフリー・エプスタイン問題に関して、MIT メディアラボにおいて真っ先に伊藤穣一に問題を直言し、辞職した人物として報道で名前が挙がった。「不信:制度への信念を失うとそれを変える道具が与えられる理由」という書名をみると、これは伊藤穣一に対する当てつけじゃないかと一瞬思ってしまうが、さすがにそれはなくて、民主主義全般のことを言ってるのだと思います。

なお、先日、彼がマサチューセッツ大学アマースト校へのジョインが発表されている。

ロバート・スコーブル(Robert Scoble)、Irene Cronin『The Infinite Retina: Spatial Computing, Augmented Reality, and how a collision of new technologies are bringing about the next tech revolution』

ロバート・スコーブルの新作だが、『ブログスフィア』『コンテキストの時代』などで組んできたシェル・イスラエルでなく、今回共著者は別の人ですね。そして、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2017年版)で紹介した前作と同じく電子書籍オンリーの刊行である。

副題を見る限り、スコーブルの関心は AR にあるようだ。その前に掲げられている Spatial Computing については、「ARの真の価値は『空間に力を与えること』 |Spatial Computingが変える人とデジタルの関係性」が参考になる。

スコーブルと言えば、数年前にセクシャルハラスメントを告発され謝罪している。新作が新規まき直しになるだろうか。

ティーヴン・ジョンソン(Steven Johnson)『Enemy of All Mankind: A True Story of Piracy, Power, and History's First Global Manhunt

ポピュラーサイエンスの書き手として著名なスティーヴン・ジョンソン(スティーブン・ジョンソンとなってる書籍も多く、Amazon で検索時面倒……)だが、新作は海賊とその追跡をテーマとする、ちょっとケッタイな本である。でも、彼の本だから面白いんだろうな。詳しくは著者による告知エントリを読んでくだされ。

彼の本では昨年『世界が動いた決断の物語』(asin:4023317691)が出ているが、本書にしても来年後半か再来年あたり邦訳出るのだろう。

今年は大変なゴールデンウィークになってしまったが、お互い生き残りましょう。それでは、さようなら。

[追記]

以下、ここで取り上げた本の邦訳が出たのを紹介するエントリをはりつけておく。

yamdas.hatenablog.com

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はてなブログでasin記法が正しく機能していないところがある(解決済み)

少し前もはてなブログからのはてなダイアリーへのリンクの飛び先がおかしい現象を指摘して修正してもらったが、またおかしな挙動を見つけてしまった。

なお、以下説明する現象については、4月16日21:55:22の時点で問い合わせ済なので、本エントリが公開時点で既に直っている可能性があることにご注意いただきたい。

昨年8月に書いたこのエントリを例にさせてもらうが、このエントリには多くの asin 記法が使われており、リンクになっているが、その飛び先が想定される Amazon.co.jp のページでなく、はてなブログのトップページ( https://hatenablog.com/ )になっている。

具体的には、上記エントリにおいて、「asin:B00005HXXS」という記述があり、このリンク先は HTML ソース上は、

http://d.hatena.ne.jp/asin/B00005HXXS/yamdasproject-22

になっている。以前ははてなダイアリーにこれに対応するページがあったが、少し前までこの場合、

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HXXS/yamdasproject-22/

がリダイレクト先になっていたはずである。しかし、いつからか上記の通りはてなブログのトップページにリダイレクトされるように変わっている。

注意:このエントリにおける「asin:B00005HXXS」のリンク先は正しい。どうもある時点以前の古いエントリでこの現象が出ているようだ。上記エントリの asin 記法で書かれたエントリをクリックしてみてほしい。

せこい話に思われるかもしれないが、asin 記法が正しく機能しないと、はてなブログの有料ユーザの権利であるアフィリエイト収入を著しく毀損する。貧乏人のワタシには看過できない話である。

というか、アメリカだったらこれ集団訴訟にならないか?

さて、以上とは関係ないが、はてなの創業者のことをボロクソに書いた文章を含む電子書籍『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も絶賛発売中ですのでよろしくお願いします。

[2020年04月21日追記]はてなサポート窓口品質向上チームより連絡があり、本件が修正されたことを教えられた。

ダグラス・ラシュコフ『ネット社会を生きる10ヵ条』が来月電子書籍として発売される

いや、驚いた。ダグラス・ラシュコフというと、90年代に『サイベリア』(asin:4756104983)、『ブレイク・ウイルスが来た!!』(asin:4883094480)の邦訳が出ており、サイバーパンク関係者というかインターネットが一般化する前のサイバースペースに詳しい書き手というイメージがあり、著作が邦訳されなくなっても Wired 方面や Boing Boing などワタシが読むブログで名前は定期的に見ていたが、彼の久しぶりの邦訳が出るとな。

元々は2010年、つまりは十年間に出た本の邦訳ということで、正直内容が古かったらどうしようという心配もあったが、ネットで無料公開されている冒頭部分を読む限り、その心配はなかった。それだけ本の内容が本質的で、そう簡単に古くならないということだろう。

しかも翻訳が堺屋七左衛門さん。これは安心である。堺屋さん、またいつの日か、できればできるだけ早く、神戸で飲みましょう!

例の事情で今出版業界が大変なときだが、本書の場合、電子書籍だけなので、少なくとも入手の問題はない。

ケヴィン・ルース(ケヴィン・ローズじゃないよ)の意図せず時宜を得てしまった(?)新刊『Futureproof』

ケヴィン・ルース(Kevin Roose)の仕事は、5年前に「「ロボット」という言葉はもはや無意味なのか?」を書いたときに取り上げているが、さすがに Digg 創業者のケヴィン・ローズ(Kevin Rose)と間違われなくなっている。

彼は現在 New York Times のテクノロジー分野のコラムニストだが、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2016年版)」でも紹介した第一作に続く新作 Futureproof: 9 Rules for Humans in the Age of Automation が来月出る。

Futureproof: 9 Rules for Humans in the Age of Automation

Futureproof: 9 Rules for Humans in the Age of Automation

  • 作者:Roose, Kevin
  • 発売日: 2021/01/12
  • メディア: ハードカバー

人工知能が遍在し、仕事は自動化され、アルゴリズムが人間の人生を動かす。今こそあなた自身を futureproof させるときだ――という宣伝文句だが、futureproof(future-proof)とは「時代遅れにならないようにする」という意味で……と知ったように書いたが、恥ずかしながら知らなかった。

なんというか『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』みたいな本じゃないかとそれらを読んでもないのに思ったりするが、今回の新型コロナウイルスがもたらす災厄で、こうした本の主張は前提からして崩れちゃったんじゃないかと思ったりしている。

そのあたり、この本が「コロナ後」でもどれくらい通用するかでこれが邦訳されるか変わるでしょうな。

ただ、ケヴィン・ルースが書く「自動化の時代」というのは、パンデミックはロボットによる自動化を加速するという話もあり、未だ時宜を得たテーマであることは変わらない。

個人的には、この本に推薦の言葉を寄せている人に、今年のアメリカ大統領選挙民主党候補者を選ぶ予備選において、唯一のアジア系、しかもテクノロジーをもっとも理解しているという評判だったアンドリュー・ヤンが入っているのがワタシの興味を惹いた。

思えば、彼が提唱した政策にユニバーサルベーシックインカムがある。ワタシは以前からずっと「ベーシックインカム」には感覚的な反対派だったのだが、だんだんとありかなぁと考えを変えつつあったところで、今回のコロナ禍があり、長らく机上の空論扱いされてきたこれが実現する可能性が出てきたというのも難儀な話である。

ともかくアンドリュー・ヤンは、渡辺由佳里さんの文章を読んで以来好感を持っているし、その彼が薦める本なら良いものかもね。

ゼイナップ・トゥフェックチーがAtlanticに寄稿する新型コロナウイルス関係の文章

例によって非公式日本語訳もあるでよ。

文章リンクをはりまくって自身の文章のエビデンスとしているところがネット時代の書き手らしいが、「WHOは大国のおもちゃであってはならない」と、資金停止策で脅すアメリカのトランプ大統領の批判だけでなく、中国の初期対応の犯罪的なまずさ、そして WHO の失態とその原因についてきちんと書いている。最後については遠藤誉氏が書く問題点を補助線とするのもよいだろう。

余談ながら、ワタシが子供の頃から当たり前のように持っていた WHO という組織に対する信頼感は完全に失われた。テドロス・アダノムは即刻辞任すべきだし、WHO は台湾の正式加入を認めるべきだ。

ゼイナップ・トゥフェックチーというとなんといっても『ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ』なのだけど、今年2月から Atlantic に新型コロナウイルス関連の文章をいくつも寄稿しており、どれも一面的でなく複層的なところが彼女らしい。

そうそう、最近の Atlantic については市川裕康氏の「コロナ禍をきっかけに生まれる新しいニュース消費習慣〜米老舗メディア『アトランティック』」が参考になるだろう。その方針とゼイナップ・トゥフェックチーの問題意識がマッチしたということなのかな。

マーヴィン・ミンスキー『創造する心』刊行にあたり、キャンセルカルチャーに与しなかったオライリー・ジャパンに敬意を払いたい

「AIの父」とも言われるマーヴィン・ミンスキー『創造する心』オライリー・ジャパンよりもうすぐ刊行される。

創造する心 ―これからの教育に必要なこと

創造する心 ―これからの教育に必要なこと

  • 作者:Marvin Minsky
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

原書は MIT Press より2019年に刊行された Inventive Minds であり、要はミンスキーの死後に編まれた本である。

マーヴィン・ミンスキーの名前は昨年ジェフリー・エプスタイン問題で非常に残念な形で取りざたされ、彼の擁護の論陣を張ったリチャード・ストールマンも炎上の火に焼かれた。

今、ネットのキャンセルカルチャーは強力であり、それに警鐘鳴らしたオバマ前大統領も罵声を浴びたくらいである。人の仕事とその作者の人間性ははっきり分けて考えるべき主義の強硬な支持者であるワタシ自身は、この趨勢をまったく好意的には見ていない。

そうした意味で、今マーヴィン・ミンスキーの邦訳を出すオライリー・ジャパンには敬意を払いたい。

新型コロナウイルスが猛威を振るう世界で落ち着いて見るべきTED講演5選

緊急事態宣言も出たし、同様の企画を公開している人はいるに違いないが、そういうのは調べずにワタシもやる。もういつまでワタシもブログを更新できるか分かったものじゃないし。

まずは、5年前に既に現在の状況を予測していたのかと怖くなるビル・ゲイツ「もし次の疫病大流行(アウトブレイク)が来たら?私たちの準備はまだ出来ていない」をまだ見てない人がもしいたら、まずはここから始めよう。

最初の1分以内に声をあげそうになるし、この時点で無症状のウィルスによる都市への蔓延の危機を正しく見通している。さすが、おれたちのゲイツ。少し心の余裕が出たら、Netflix「天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する」もおススメよ。

さて、新型コロナウイルスに話を戻すと、これが問題視されるようになった時期に急遽収録された、デヴィッド・ヘイマンアダム・クチャルスキーアラナ・シェイクの講演(インタビュー)動画を次にどうぞ。

もう分かり切った話に感じる人もいるだろうが、現在のように刻一刻と状況が変わるのだから仕方がない。それにしても TED の対応力というかフットワークの軽さはさすがである。

そして最後は、3月後半に収録されたビル・ゲイツクリス・アンダーソンの対談 How we must respond to the coronavirus pandemic である。残念ながら、本文執筆時点でこの動画には日本語字幕がついていない。

ここでもクリス・アンダーソンが最初に話題にするのは、上でリンクしたビル・ゲイツの5年前の講演であり、「あのときの警告を人々は真剣に聞きましたか?」という問いに、ゲイツが「基本的にはノーですね」と答えている結果が今の世界の有様である。

英語字幕を入れればだいたい話は分かるが、そうでない人もいるだろうから、有志による日本語字幕の公開を期待したい……が、50分超だからさすがにすぐには無理か。そういう人たちは、「ビルゲイツへの新型コロナウィルスに関する31の質問とその答え」を読んでおくのがよいですかね。

さて、ゲイツ夫妻の財団は新型コロナ対策に期待の7ワクチン工場建設に資金を出しており、数十億ドルが無駄になることを想定しながらとにかくワクチンの開発を急ぐのは、さすが世界的大富豪というべきお金の使い方である。100万円だかチンケな額をちらつかせて貧乏人をひれ伏せさせ、自己顕示欲を満たすカッペとは格が違う。

このワクチン開発が運よく功を奏したら、おそらく彼はノーベル平和賞を受賞するだろう。ワタシとしては、とにかくその幸運を祈りたい。

上で講演を取り上げた人の中で、アダム・クチャルスキーは『ギャンブルで勝ち続ける科学者たち: 完全無欠の賭け』(asin:4794224273)の邦訳が出ているが、「コンテイジョン(Contagion)」という単語が書名に入る新刊が今秋出る(Kindle 版は既に出ている)。もちろん伝染病よりも情報の拡散が主なテーマなのだろうが、これも注目である。

The Rules of Contagion: Why Things Spread--And Why They Stop

The Rules of Contagion: Why Things Spread--And Why They Stop

  • 作者:Kucharski, Adam
  • 発売日: 2020/09/15
  • メディア: ハードカバー

『100日後に死ぬワニ』はもうどうでもいいが、ヘンリー・ジェンキンス『Convergence Culture』邦訳がようやく出る!

この記事が公開時点で『100日後に死ぬワニ』自体もはやどうでもよくなっていたので斜め読みだったのだが、ヘンリー・ジェンキンスの議論が特に参照されているところがワタシの気を引いた。

で、この記事の最後の記述にのけぞることになる。

※ヘンリー・ジェンキンスの議論は本年度中に晶文社より刊行予定の著者邦訳『コンヴァージェンス・カルチャー(仮)』(阿部康人、北村紗衣、渡部宏樹訳)をご覧ください。

(4ページ目)『100日後に死ぬワニ』へのモヤモヤを研究者が分析「ファンは『人工芝なのでは』と怒った」 | 文春オンライン

マジかよ、ヘンリー・ジェンキンスの『Convergence Culture』の邦訳が出るのか!

しかし……「本年度中に晶文社より刊行予定」とあるが、この記事は2020年3月26日公開で、それなら既に刊行されてないといけないのでは(笑)。

まぁ、2020年度中にはということなのだろうが、ともかくヘンリー・ジェンキンスの邦訳が出るのはめでたい話である。

しかし……いくらなんでも原書刊行から時間がかかりすぎだよな。

ワタシが最初にヘンリー・ジェンキンスの『Convergence Culture』を取り上げたのは、原書が刊行された2006年8月、実に14年近く前である。

ヘンリー・ジェンキンスは、当時ブログがクリエイティブ・コモンズ・ライセンス指定だったので注目したのだと思う(今はその指定はない)。

その後、彼の議論を参照した例としてワタシが知るのでは、塚本牧生さんの「Collective Intelligence vs. The Wisdom of Crowds」邦訳、そしてそれを踏まえた「群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション」プレゼン資料だろうか。

しかしまぁ、なんで原書刊行から14年も経って邦訳が刊行されるのか。共訳者に北村紗衣さんの名前があるのにピンときた。

しかし、これにしても7年以上前のブログエントリであり、それからよく邦訳出版を現実にできたものである。楽しみにその刊行を待ちたい。

Convergence Culture: Where Old and New Media Collide

Convergence Culture: Where Old and New Media Collide

  • 作者:Jenkins, Henry
  • 発売日: 2006/12/24
  • メディア: ペーパーバック

『HARD THINGS』が大絶賛されたベン・ホロウィッツの邦訳第二弾『Who You Are』が出る

調べものをしていて、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2019年版)で取り上げた、ベン・ホロウィッツの『What You Do Is Who You Are』の邦訳が『Who You Are(フーユーアー)君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』の邦題で今月出ることを知る。

原題からはしょった邦題になっているが、こういうのも苦心の末の決定なんだろうな。

ちょうど5年前に刊行された『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(asin:4822250857)も大絶賛されたが、新刊は企業文化がテーマとのこと。これは売れるでしょうな。

ロバート・スキデルスキーの近刊『経済学のどこがおかしいのか?』が注目だし、デヴィッド・グレーバーの邦訳が出ると思ったら……

トマ・ピケティの新刊『資本とイデオロギー』の書評である。非公式日本語訳もあるでよ。

さて、ピケティの新刊の評価はともかくとして、ワタシが注目したのは、主流経済学の権威が落ちていることについて、その大衆のムードを掴んでいるとして引き合いに出される、経済史家ロバート・スキデルスキーの近刊 What’s Wrong with Economics? である。

What’s Wrong with Economics?: A Primer for the Perplexed

What’s Wrong with Economics?: A Primer for the Perplexed

書名を直訳すれば「経済学のどこがおかしいのか?」になるが、以前取り上げたデヴィッド・グレーバーの「反経済学」を思い出した。そのムードは確かにある。

そうそう、横道にそれるが、デヴィッド・グレーバーの邦訳が出るというので、いよいよ『Bullshit Jobs』の邦訳かと思ったら、別の本だった。

ロバート・スキデルスキーというと近著では息子さんとの共著の邦訳が出ているが、時宜を得たテーマならこれも邦訳が出るでしょうな。

はてなブログからのはてなダイアリーへのリンクの飛び先がおかしい現象(解決済み)

はてなブログに以前にはなかったおかしな挙動が見られる。

これだけだと分かってもらえないかもしれないので、例を示す。

まず、ワタシのブログ屈指の人気コンテンツである↑を閲覧いただきたい。

さて、このブログエントリは10年以上前、まだはてなブログがサービスを開始する前に書かれたものであり、このエントリの元々の公開先は、はてなブログの前身であるはてなダイアリーだった。

そして、このエントリ内のリンクの URL も当時のままなので、このエントリにおける自分のブログのリンク先は、当然ながらやはりはてなダイアリーになる。

はてなダイアリーはてなブログに移行する際に、はてなダイアリーへのリンクは、自動的に移行先であるはてなブログの該当エントリにリダイレクトされるはずである。

しかし、最近だと思うが、そのリダイレクトがおかしいように思う。

上記エントリを読み進みいただたくと、映画『LIVE FOREVER』について自分が書いた感想エントリのリンクがある。このリンクの URL は↓になる。

http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20080709/liveforever

このリンクをクリックした場合、このエントリの移行先であるはてなブログの該当エントリである↓にリダイレクトされるはずである。

https://yamdas.hatenablog.com/entry/20080709/liveforever

しかしながら、実際には、飛び先であるエントリが含まれる日付のエントリの一覧ページである↓に飛んでしまう。

https://yamdas.hatenablog.com/entries/2008/07/09

これはいったいどうしたことか。この現象は、パソコンでアクセスした場合でも(Firefox でも Edge でも再現)モバイルでアクセスした場合でも再現する。

おそらくはワタシのはてなダイアリーの設定がブログモードではなく「日記モード・見出し別ページ」だったことが影響していることが察せられるのだが、いずれにしても今頃になってバグを仕込むっていったい何やってんのよと呆れてしまう。

ところで関係ないが、はてなの創業者のことをボロクソに書いた文章を含む電子書籍『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』も絶賛発売中ですのでよろしくお願いします。

[2020年04月02日追記]:問い合わせフォームに質問を投げておいたところ、「先日より、はてなダイアリーのリダイレクトの仕組みを変更しておりましたが、いったん元の仕組みに戻すことで対応させていただきました」という回答がはてなサポートからあり、ロールバックにより問題は解決した模様である。

何度目かの「アジャイルソフトウェア開発は死んだ」で思い出すIT業界恒例「○○は死んだ」宣言の歴史

二月くらい前のエントリだが、ワタシは3月に入って O'Reilly Radar 経由で知った。

アジャイルソフトウェア開発は死んだ。それに対応したまえ」とのことだが、O'Reilly Radar でマイク・ルキダスが書いているように、「アジャイルは死んだと主張するのを見たのはこれが最初ではないし、これが最後というわけでもなかろう」というのが正しい。

これは2017年に書かれたエントリだが、これに列挙されているように、2017年時点までで既に何度も「アジャイルは死んだ」と宣言されているんですね。

マイク・ルキダスが紹介している、『Cassandra』の邦訳(asin:4873115299)が日本でも出ている Eben Hewitt の「どんなムーブメントも、それ自体パロディになるまで成功したとは言えないんだよ」という言葉の通りなんだろう。

思えば、IT 業界では「○○は死んだ」というのはアジャイルに限らず、これまでもいろんなトピックについて言われており、ワタシもブログでそうした主張を紹介したり、本サイトで翻訳などしている。

折角の機会だと以下にまとめてみたが、まぁ、いろいろ死んだものである。この中で本当に死んだと言えるのは Web 2.0 くらいだろうか。

元記事を書いた Jason BloombergIntellyx の創業者にして社長であり、ズバリ『The Agile Architecture Revolution』(asin:1118409779)という本の著者なのであまり無下に扱うのはよくないだろうが、主張の内容の評価はアジャイル開発の当事者の方々にお任せしたい。

アジャイルサムライ−達人開発者への道−

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  • 発売日: 2011/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

新型コロナウィルスに立ち向かうオープンハードウェアプロジェクト7選

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は本当に大変なことになったままであるが、少しは明るい面を見たい。

高須正和さんが「新型コロナで広がるオープンソース運動は日本人の働き方を変えるか」という文章を書いているが、新型コロナウィルスに立ち向かう上で、オープンソースのありがたさが再認識されているように思う。

少し前に3Dプリント技術が新型コロナウィルス患者の命を救った話があったが、そうした意味で、オープンハードウェア(オープンソースハードウェア)分野でもこれに関係したプロジェクトが立ち上がっているはずだ。

というわけでこの文章を見つけた。ここでも前述の Isinnova の事例が取り上げられているが、主に紹介されているのは、以下の7つのオープンハードウェアプロジェクトである。

プロジェクト名 プロジェクト内容 ライセンス
Opentrons オープンソースのラボオートメーションプラットフォーム Apache 2.0
Chai Open qPCR 個人用ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査装置 Apache 2.0
OpenPCR DIYPCR検査装置 GPLv3
PocketPCR USBで給電するコンパクトなPCR検査装置 GPLv3
Open Lung Low Resource Ventilator 低コストなバッグバルブマスク(BVM)作成 GPLv3
The Pandemic Ventilator DIYな人工呼吸器のプロトタイプ CC BY-NC-SA
Folding@home タンパク質動力シミュレーションの分散計算プロジェクト GPLプロプライエタリ

やはり PCR 関連が多いですな。

Folding@home(こないだ話題になった)はサイト上ではオープンソースを謳いながら実際はプロプライエタリらしいのが気になるが、それでもこういう動きがすかさず出てくるのはすごいことだと素直に思う。

……とここまでエントリを書いたところで、Make 日本版ブログで同趣旨のより網羅的な記事が出ているのを知る。ただし、取り上げているプロジェクトの重複はほぼないはず。

Wikiは先週ひっそりと25歳の誕生日を迎えていた

調べものをしていて、自分のブログの10年以上前のエントリに行き当たったのだが、なんだ今年の3月25日は Wiki の25歳の誕生日だったのかと驚いた。

これは Wired の10年前の記事である。やはりそのように認定している。

しかし、Wiki の誕生日、しかも25年前という区切りが良いにも関わらず、まったく話題になっていない。ワタシが調べた範囲では MAG THE WEEKLY で取り上げられているくらい。

それも不思議ではない。コラボレーションツールとしての Wiki は開発環境やコミュニケーション環境に取り込まれ、もはやその一機能として、Wiki 自体にスポットライトが当たることは少ない。『Wiki Way コラボレーションツールWiki』が初めての訳書であるワタシ的には寂しさも感じるが、それは個人の感傷に過ぎない。

ところで、「Wikipediaをwikiって略すな」と言われたのも今や昔? 一般に「Wiki」といったら Wikipedia であることを認めざるをえないのだが、そのウィキペディアは来年の1月15日に20歳の誕生日を迎える。

Wikipedia は非営利では今や世界最大のウェブサイトであり、20年はキリが良いので、来年のはじめにはなんらかのイベントがあるんだろうな。

ブリストルにある世界最古のVHSテープレンタル店についてのドキュメンタリー

kottke.org で、20th Century Flicks というイギリスはブリストルにある、世界最古のVHS(&DVD)レンタル店についてのショートドキュメンタリー The Last Video Store を知る。

ストレンジャー・シングス」を模したタイトルにいきなりニヤリとしてしまう。約8分だし、英語字幕をつければだいたい理解できるでしょう。

この店には2万ものタイトルが揃っており、「Netflix の5倍はある」と店主は誇らしげだ。この店は1982年に開店しているが、日本にはこれより古いレンタル店はあるのかもしれないが、VHS テープも現役でレンタルしてるとなるとさすがにないのかな。

こういうお店の話を聞くと、『僕らのミライへ逆回転』なんかを思い出してしまうね。

そういえば、インターネット・アーカイブも VHS のテープからキャプチャしたもろもろを無料公開する The VHS Vault という、おい、お前それ合法か? なサービスをやっているのを Boing Boing で最近知ったが、こういうのも文化遺産なんだろうね。

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